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そして僕らは…  作者: マジコ
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そして僕らは… その29

村長の部屋に入ると村長はベッドに横になっていました。私は村長の近くに行き話しました。私の説明に頷きながら聞いていた村長は私が話終えると行ってくるようにと言われました。その瞬間私は今回のゴブリン退治の責任者になったのだと思いました。私のすることはエルサ様たちがゴブリンを退治するのを見届け、事の顛末をみんなや後で到着する王国の者に説明することであると。

村長の了解を得た私は一旦家に帰りました。家内にエルサ様たちに同行すると伝えると不安そうにしていましたが、生きて帰ってきてくれと言われました。荷造りを家内とし、その荷物を背負って私はエルサ様たちと出発しました。

私はエルサ様に何故私を同行者にしたのですかと聞きました。すると、


「いやぁ私はあんたを気に入ったのさ。話しているとあんたの道義というものが面白くてね。あんたは正しいと思えばその通りにする。その真っ直ぐさがいいよね。普通、村人は私たちのことを恐れておもねるけど、あんたは私に言われるとその通りだとして普通に接してくれるようになった。そこがいい。」


と言っておりました。ちょっと気恥ずかしかったです。

さて、エルサ様らは森の奥へと進みました。男たちはそれぞれ大きな斧や剣を持っていました。パッと見ゴブリンよりも凶悪そうに見えました。しかし、実際には優しい方々で私に疲れてないかなど気を使ってくれました。話を聞くと男たちは元々傭兵だったりしてエルサ様に認められてこの冒険者パーティーに入ったそうです。この冒険者パーティーはエルサ様が立ち上げたパーティーだそうです。だから、私はエルサ様に前は何をしていたのですかと聞くと苦笑いして人に言うような過去ではないというようなことをおっしゃいました。そこで私はああこれ以上は追及しない方が良いと判断し、それ以上は何も聞きませんでした。アルフィーちゃんは気になるかもしれませんが、やはり人には立ち入って聞いて良いことと悪いことがあり、良いことでも関係性で聞いても良いか悪いかは変わります。その当時の私とエルサ様の関係では込み入った話しはしない方が良かったのです。やはり所詮は請け負った者と依頼した者の関係なのです。

暑い森の中を進んでいると遂にゴブリンの集落近くまで来ました。我々は一人を偵察に出し、しばしの休息をしました。しかし、獲物は目の前にいます。男たちは殺気立ち始めました。でも、エルサ様は余裕のある雰囲気でいました。その時はなんと場馴れをしている人だろうと思いましたが、今、思えば殺気立つ男どもに落ち着くように示そうとしたのではないかと思います。実際そのエルサ様の様子を見て幾分平静に戻ったように見受けられました。

しばらくすると偵察に行っていた男が戻ってきました。そして、作戦会議を開きました。しかし、すぐに作戦会議は閉会となりました。なぜならエルサ様は開口一番強襲すると言ったからです。屈強な男どもはエルサ様に心から服従しているようで誰も反対を言いませんでした。私も不思議とエルサ様の言うことには反対をしようとは思いませんでした。まぁ、私は素人ですから口を挟むべきではありませんでしたが、村人代表でもあります。村のために確実に成功する策でなくてはいけません。でも、私は数日エルサ様と過ごすうちに彼女が言うのならと思うようになったのです。そういう魅力がエルサ様にはあったのです。

ゴブリンというのは夜活動するので大半のゴブリンは寝ていました。襲撃するなら今だと判断したエルサ様は男たちを散らし、待機させました。合図と共に総攻撃を仕掛けることになりました。私はエルサ様の指示のもとエルサ様の待機場所で攻撃中にはそこに隠れている手筈となりました。そして、太陽がその日で最も高い位置になる時間。エルサ様は爆弾を一個投げました。爆音を合図に散らばっていた男たちは一斉にゴブリンの集落を強襲しました。その後はもう圧倒的でした。逃げ回るゴブリンたちを次から次へと倒していきました。特にエルサ様は抵抗するゴブリンも敵ではありませんでした。私は鬼神という言葉がぴったりな働きぶりでした。戦いが始まって1時間ほどで終結しました。結果はゴブリンを一匹残らず討伐できました。逃げ出したゴブリンはその後も確認されてませんのでその時に全て狩り尽くしたと思います。

一旦村に戻り村人の何人かに現場の確認をしてもらうことになりました。エルサ様曰くその方がトラブルにならなくていいということでした。いざ村の幹部を連れていこうというときになってエルサ様は疲れたから私の家で寝かしてもらうと言って私の家に行ってしまいました。家には家内がいるので大丈夫だろうと思い私は村の幹部とエルサ様の部下の男たちとゴブリンの集落だった所に行きました。そして、確認を終えて村に戻り夜になると村を上げた大宴会が開かれました。私は疲れていたので宴会には参加せず、家で休みました。

しばらく休むと目が冴え元気も取り戻した私は宴会に顔を出そうと思いエルサ様を誘いに行きました。リビングに家内がいました。


「おい、エルサさんはまだ休んでるか?」

「あなたが寝ている間に起きてきてみんなどうしているかと聞かれたので宴会をしているって伝えたら飛び出して行きましたよ。」

「そうか。」


元気なお人だと思いましたよ。そして、納得しました。やっぱり祭り好きな人なんだとね。


「じゃあ俺も宴会に行って来るよ。お前はどうする?」

「私はいいですよ。騒がしいのは苦手なので。」

「そういえばそうだったな。結婚式をやるのも渋ってたしな。」

「そんな昔のこと。」

「ははは、そうだな行って来る。」


こうして私は宴会に参加しに行きました。宴会は村の集会所で開かれてました。そこは普段は重要な村の問題を話し合ったりするところでした。集会所に着くと賑やかな声が聞こえて来ました。そのなかには勿論あの女性の明るい声が響いて来ました。私はその声に一種の興奮を覚えました。早く宴会に加わりたいと高揚感がありました。集会所に入ると男どもが大騒ぎしていました。ある人は踊り、ある人は歌い、ある人は飲みまくりとそれぞれこの宴会を楽しんでいました。私は取り合えずエルサ様を探しました。まぁ、すぐに見つかりました。村の中でも酒豪と知られる男と飲んでいましたから。エルサ様は豪快に笑いながら飲んでいました。顔はもう真赤ですが、まだまだ飲むという様子でした。私はエルサ様に近づき声をかけました。


「エルサさん。機嫌が良さそうですね。」


その時のエルサ様は本当に機嫌が良く楽しげに酒を飲んでいました。酒の瓶を私に突きだして言いました。


「この酒うめえな。」


その酒はマルスク村で村人用に少量製産している酒でした。こういう宴会で出す酒でした。あの酒は旨いですよ。アルフィーちゃんも飲めたら飲ましてあげたい。


「うちの村自慢の酒ですからね。」

「今まで飲んだ中でも特に旨い。なあ、まだあるか?」


エルサ様は酒を運んでいる誰かの奥さんに聞いていた。その奥さんはまだあると言っていた。


「じゃあ追加で。もうまだまだ飲みたいからじゃんじゃん持ってきて!」


大声でそう言われると誰かの奥さんははいはいと言って酒を取りに行きました。エルサ様はその酒が来るまでの間他の酒をぐびぐび飲み始めました。その酒を飲む豪快さには私はただ屈強な男どもを率いる冒険者パーティーのリーダーを見ました。王国の外れにあるこの村からは生まれることのないそんな人です。私は憧れにも似た感情を抱いておりました。当時林業を営む私はこの地域から出たことがありません。世界を知らないのです。それに比べてエルサ様は色々な地域に冒険をしに行っているのでしょう。私の見たことのない世界を知っていることでしょう。それが私には当時羨ましくも憧れていたのです。後で世界の話を聞きたいと思いつつエルサ様の酒を飲む近くに腰を下ろし、私も酒を飲み始めました。

宴会は夜通し続きました。私も酒を飲むのに夢中になりましてエルサ様のことはすっかり忘れていました。何時間経ったでしょうか。宴会は盛り上がりが一段落し、何人かが帰り始めたので私も帰ろうと思いました。そこでエルサ様ののことを思い出し、エルサ様の方を見ました。酒豪の村人もエルサ様も酔いが回ったのかぶっ倒れて寝ていました。エルサ様の寝姿は遊び疲れた子供のようでした。そこに彼女の人間性を垣間見たような気もしました。なんというか物事に対して無邪気というか子供っぽいというような印象です。すやすやと寝息を気持ち良さそうに立てるのはもう幼さを感じさせます。

私はそろそろ帰ろうと思っていた私はエルサ様を起こそうとしました。


「エルサさん、起きてください。帰りましょう。」


しかし、エルサ様は起きません。揺さぶってもみましたが、まったく起きる気配がしません。むしろさらに深い眠りについているのではないかと思いました。放って置くわけにもいかないので私はエルサ様を背中に乗せふらつきながら集会所を出ました。出入り口には奥様方が井戸端会議をしていました。


「あら、グンゾウさんお帰りで。」


奥様方の一人が私に気付き声をかけてきました。


「ええ、そろそろおいとまさせてもらいます。エルサさんも連れさせてもらいます。」

「そうですか。まぁ、何人か帰っているみたいですしお家でゆっくり休むと良いですよ。」

「そうさせてもらいます。」


私はエルサ様を背中に乗せ集会所を後にしました。外はもう朝の香りを醸し出し始めていました。結局、朝方近くまで飲んでいたようです。家内はもう寝てるだろうとぼんやり考えながら歩いていきました。背中に乗っているエルサ様は気持ちよさげに寝息をたてています。鬼も寝れば赤子ということでしょうか。寝ているエルサ様は可愛いらしかったです。

私はいつまでエルサ様はこの村に滞在するのだろうかと考えていました。別れるのが惜しく感じられました。東から太陽が上がり始めるのを見ながら。

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