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そして僕らは…  作者: マジコ
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そして僕らは… その26

窓を開けると眩しい朝日が部屋に射し込んでいる。ドニーは体を伸ばし、体を起こした。時計を見ると朝食の時間までまだある。ガウディの世話をしようと思い服を着替えて一階に降りた。一階の食堂の中を見ると朝食の準備中のようだった。宿屋から出てガウディのもとへと行くと既に朝の世話は一通り終わっていた。宿屋の人がやってくれていたのだろう。小鳥がガウディの背中に留まっていた。ドニーはガウディの頭を撫でてやった。ガウディは嬉しそうに目を細めてリラックスしていた。どうやらこの環境に順応してくれていたようだ。今日も長距離を飛ぶとはいえ無理はさせたくないが、今日でかなりの距離を稼がなくてはいけない。頼むぞという気持ちを込めてガウディを撫でた。

食堂に行くとアルフィーが朝食を食べていた。その顔は眠たそうであった。ドニーはたぶん深夜に抜け出していたなと察した。そして、アルフィーの前に座った。


「アークはまだ降りてこないのか。」

「ふあ、うん寝てるんじゃない。」

「大学生はのんびりしてるなあ。」

「気楽よね。」

「まったくだ。」


噂をするとなんとやらアークが降りてきた。寝癖をつけていた。なんというか無防備な様子である。アルフィーとドニーは顔を見会わせて笑った。


「おはようアーク。」


ドニーが声をかけるとアークは眠たげに応えた。


「おはようドニー、アルフィー。」


そう言うとアークはドニーの隣に座った。朝食がそこに置いてあったからである。朝食は目玉焼きにサラダとウィンナーとパンだった。

ドニーは朝食を食べているとふとアルフィーを見た。昨夜の居酒屋では気にならなかったが、今日、アルフィーの食べ方を見るととても優雅だった。流石は王族だと感心した。一方、アークを見るとゆっくりとがさつに食べていた。学生らしい元気のある食べ方である。所属している場所でこうも食べるときの振る舞いが変わるのかと思った。特にアルフィーは宮廷に入ってから叩き込まれたのだろう。子供の頃とは比べられないほど上品な食事捌きである。朝の食事は大変のんびりしたものとなった。食事が終わると三人は出発の準備をしてチェックアウトした。


「さあ、旅も二日目。今日はどこの町に行くのかしら。」


宿屋の前で明るくアルフィーはドニーとアークを見た。腰に手を当てやる気充分である。それにドニーが答える。


「今日は町じゃなく森を通過する。たぶん野宿だ。」

「何て言う森なの?」

「ハルビスクの森だ。」

「あっそれ知ってる。王国最大の森林地帯じゃない。」

「ああそうだ。」


ドニーは頷く。

ハルビスクの森とはアルフィーの言うようにこの王国最大の森林地帯である。どこまでも大木の群れが広がりこの森の歴史の古さを感じさせる。その分モンスターの数も多く、一度森の中で迷えばモンスターの餌さとなる。広大なこの森を空からつっきっちゃおというのが今回の旅である。


「どんなモンスターがいるか楽しみだわ。」

「空から行くから森に覆われている地表は見えないぞ。」

「えー。」


アルフィーは駄々をこねる子供のようにふてくされた。それにアークはなだめるように


「まぁ、飛んでるモンスターは見れるだろう。」


と言った。


「何が見れるかな。」


アークの適当な慰めにアルフィーは興奮していた。それにドニーが水を指す。


「モンスター見たら逃げるからな。」

「なんでえ!」

「危ないからだよ。ガウディは戦闘用に訓練してねえんだよ。」

「ガウディなら大丈夫だよ。」

「お前はガウディの何を知っている。」

「ふっ。」

「それ以上は言わなくていい突っ込みを入れるのが面倒だ。」


懐かしさのある掛け合いをする二人にアークが言った。


「そろそろ行かねえか。」

「「うん。」」


こうして三人はドラゴンのガウディに跨がりロックから旅立った。まだ、朝だがロック周辺の集落から人々が町に向かったり、農作業を既に始めていたりしている。その光景を見ていたアルフィーは何かこの町を祝福したい気持ちになった。何か小さな幸せがあるようにと祈った。ルフルドやルーシーたちにはもう会うことはないだろう。だからこそ、幸あれと願わずにはいられなかった。

東の果ての太陽が登り、その眩しさに何か高揚感を感じ、今日の旅が始まった。

昼休憩を挟み旅を続ける三人にはこれといったイベントもなく平和な時間が過ぎた。それはとても喜ばしいことのはずだが、この王国のお姫様であるアルフィーは不満げであった。


「退屈だー!」

「退屈でいいんだよ。トラブルなんてまっぴらごめんだ。」


風に短い髪を靡かせながらドニーは言った。軍人らしく不用意なトラブルは嫌がる。予定通りでないと気がすまない。それに対してアルフィーは何か面白い事はないかとあっちこっち見ている。それがまるで子供のように思えた。


「私たちは冒険しているのよ。何か愉快なことが起きないと。たとえばモンスターに襲われるとか。」

「あっ、てめフラグを建てるようなことを。」


ドニーの突っ込みによってこのフラグは確定した。

それは後方から静かに高速で近寄ってきた。ドラゴンの一番後ろに座るアークは何か気配を感じた。しかも非常にやばいという気配だった。


「なあ、後ろから何かに追われてないか?」

「後ろ?」


アルフィーが後方に目を向けると紛れもなくモンスターが高速で追いかけてくる。大型の鳥のようだった。


「ドニー、後ろからモンスターが追いかけてくるけど何のモンスターかわかる?」


そう言われたドニーは振り向くと青ざめた。


「げっ!オオハヤブサじゃねえか。」

「何かかっこいい名前ね。」

「悠長なことを言ってる場合じゃねえ。喰われるぞ。」


オオハヤブサは王国最大の空の捕食者である。人間も襲う。年に何件か子供が拐われるという事態が起こる。そのため人里近くに現れると速やかに討伐される。討伐には凄腕の騎士が派遣される。巨体の割りにすばしっこくベテランの竜騎士でも手子摺る。それが今アルフィーたちを追いかけているのだ。オオハヤブサは本来ドラゴンには怯えるが、どうやらこのオオハヤブサはガウディがあまり戦闘向きのドラゴンではないことに気づいているようだった。空を切るように高速でアルフィーたちを執拗に追いかけてきた。これは不味いと思ったドニーはガウディを操り森の中へと逃げ込んだ。ハルビスクの森は木々が鬱蒼と繁っているので、木の枝に引っ掛かりながら地上に降りた。一旦、アルフィーたちはガウディから降りた。アルフィーは服に着いた葉っぱを払った。体全体の葉っぱを払うのにしばらく時間がかかった。


「もう、最悪よ。」

「咄嗟で考えずにやった。すまん。」

「ドニーが謝ることはないだろう。これは冒険だ。あれぐらいの危険はつきものさ。」

「そりゃそうだけど。」


アルフィーはぶつぶつ文句を言っていた。アークとドニーはそれを無視してこれからについて考えた。


「どうするよドニー。」

「うーん。取り合えずオオハヤブサの様子をちょっと見てくる。」


そう言うとドニーはまた一人ドラゴンに乗り、森に隠れながらオオハヤブサの様子を確認した。木々の間から顔を出すとオオハヤブサは周辺を周回していた。見つかる前に素早く地上に降りたドニーはアークとアルフィーに報告した。


「あのオオハヤブサは諦める気はないようだ。」

「ということは歩くということよね。」

「そうだ。少なくともこの場から離れるまではな。」


三人と一頭は歩き始めた。


「それにしても森の中とはいえ、暗いわね。」


アルフィーがぼやいた。それに後ろを歩いていたアークが反応する。


「木の枝が空を覆っているからな。」


アークが言うとアルフィーは空を見上げた。空というよりは木々の小さな隙間から顔を覗かせる光を見ていた。神秘性を感じさせる光景であった。森の中は涼しかった。直射日光というのがなく、地面が温められることもなかった。時折、虫が飛んでくること以外は静かな森だった。頭上からはオオハヤブサの鳴き声聴こえた。たぶん、アルフィーたちが飛び出してくるのを待っているのだ。

地上を歩いているとこの森の深淵さが感じられる。迷ったらもう出られないだろう。アルフィーはそこが心配になってきた。


「ねえねえ、方向はこっちで本当にあってるのドニー?」

「ああ、あっているはずさ。不安になったのか?」

「うん、上空からなら遠くも見えてああ、こっちかってなるけどこうも行けども行けども木々しかないと遭難しないか心配になるよ。」

「この森を抜ければもう最果ての塔は近いからまぁ、頑張ろう。」


そう言ってドニーは微笑んだ。アルフィーはそうねとぼやくように言って歩いた。

しばらく三人と一頭が歩いているとふと先頭を歩くドニーは立ち止まった。顔をこわばらせていた。


「どうしたドニー。」


アークが何かを察してドニーに声をかけていた。ドニーの顔は戦いの時の軍人と思われた。その顔はこれから死のやり取りをしようという覚悟を持ってるかのようであった。戦争になれば真っ先に出陣するのが、ドニーの所属している竜騎士隊である。死線をくぐっって来たであろう雰囲気が出ていた。

アルフィーも何かを察したのだろう。不安げな表情をしていた。


「どうやら囲まれたみたいだ。」


非常に険しいといった言い方だった。


「モンスターにか?」


アークはドニーに聞いた。それにドニーは頷いて肯定した。これは危険が差し迫っているのだとアークもアルフィーも理解した。森の中のモンスター。ドニーは囲まれたと言っているのでおそらく集団で狩りをする肉食系のモンスターだろう。モンスターたちはこの森に先祖代々住み着いている。この森については熟知しているだろう。下手に逃げても遭難するか体力をなくし、食べられるかだろう。とすればここは抵抗するしかない。


「アルフィー、魔法使えるか?」


ドニーがアルフィーに聞く。その聞き方は他に手立てがないという感じであった。一応、ドニーは剣を腰に帯びているが、ドニーが推し量るモンスターの数を考えると一、二頭倒して食われるだろう。アルフィーの魔法に頼るしかないのだ。


「やってみる。」


そう言ってアルフィーが構えた時だった。

モンスターたちが一斉に飛びかかってきた。




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