そして僕らは… その23
アルフィーらはある居酒屋を見つけた。アルフィーが雰囲気がなんかまさしく居酒屋って感じでいいと言った。アークとドニーは歩き疲れてきていたのでまぁ、いいかと了承した。
店内に入るとまず思ったのは満席に近く客が多いなということだった。明かりで照らされまるで昼間のようであった。ここの居酒屋は2階建てのようで店の中央が吹き抜けになっていて男たちの饗宴という感じで迫力というのがあった。
アークは王都の居酒屋よりも賑やかなロックの居酒屋に圧倒された。ドニーとアルフィーは慣れてないようでそわそわしている。そこに店員の女がやって来た。まだ、幼さが残り少女なのだろうとアルフィーらは思った。きっと、この居酒屋の娘ではないだろうかと思われた。
「いらっしゃいませ。三名様でよろしいですか?」
「はい、三名で。」
アークが代表して言った。この三人の中で最も経験があるからである。ドニーはその堅物から飲みに行くことがなく、アルフィーは王族が町の居酒屋に行く訳がなかった。三人が案内された席は一階の隅っこであった。これは好都合とアルフィーらは喜んでその席に座った。目立たないからである。まぁ、こんなところに王位継承の儀式中のお姫様がいるとは誰も思わないだろうけど。
次々と注文をとり料理や酒が運ばれている。飲み食いする客も忙しなくあっちこっち注文された料理、酒を運ぶ店員はとても楽しそうであった。
アルフィーらもビールなどの酒を頼み、旨そうな料理を注文をした。
「私、こういう店初めて。」
「そうか。俺は教授とか他の研究員とかとたまに行ってたな。ドニーはどうだ?」
「俺は行ったことはあるが、あまりはめを外すのは好きじゃないからそんなに行かないな。」
「中々寂しい青春送ってるんだな。」
「腹立つな。」
「腹立つわ。」
ドニーとアルフィーが妬ましげに言うとアークは苦笑していた。この中で一番若者らしいことしてるのは俺だけかよと思っていた。しかし、すぐに淋しさを覚えた。二人ともやることがはっきりしているというか既に自分の道へと進んでいる。それに比べてアークは自分はまだ迷って学生という枠内でうろうろしている。研究はしているが、それに人生を捧げるのか踏ん切りが出来ないでいるのである。夢はと問われることがある。とりあえず研究とは言うが、そして、実際に日々研究しているが、心を騙しているような気持ちが心の隅にある。その気持ちは大きくなったり小さくなったりを繰り返している。やろうと思う時もあれば別の道を模索したくなることもある。はっきりしないのだ。さらに最近はその浮き沈みが顕著になってきている。理由はわかる。アルフィーとドニーとまた行動を共にしているからである。間近に将来やりたいことやらなければやらないことがはっきりしている人がいると自分はどうだろうかと対比してしまうのだ。道を決めなくてはと思えば思うほど悩みは深くなる。どう答えを出したら良いかわからなくなるのだ。そういう風に思ったらしばし沈黙していた。
それにアルフィーが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?そんなに腹立つと言われるの気になったの?」
「いや違う。少し考え事をな。」
「なんだ、悩みか?俺とアルフィーに話してみろよ。」
「大丈夫。あまり人前で話すことじゃないから。」
「じゃあ、今日眠る前に打ち明け話大会だな。」
「それならあたしも参加するう!』
「アルフィーは駄目だ。」
「何でよう。」
「夜中に女が男部屋に来るのは印象がのこっちまう。ばれるとは思わないが、用心しないと。」
「うう。」
アルフィーはあからさまにいじけた。指先と指先で突っつき合っている。それがいじらしく可愛いげがあったりする。
「まぁ、安心しろアルフィー。俺はドニーとそんな話しはしない。」
「あってめ。」
「ははは。」
アルフィーは二人の掛け合いを聞いて腹抱えて笑った。三人とも昔のような口調でべらべらしゃべった。料理と酒が来るとそれをほうばりながら思い出話の花を咲かせた。
食事を済ましたアルフィーらは微酔い加減で居酒屋を後にした。町はまだまだ賑やかな世界が広がっていた。
「明日もあるから部屋に戻るか。」
「もう少し遊ぼうよ。」
アークの提案にアルフィーがワガママを言う。そこにドニーがアークの提案に賛同した。
「俺たちの目的は遊ぶことじゃないだろ。」
「う、うん。」
ドニーに諭されアルフィーは今日はもう宿で休むことにした。三人は人混みをかき分けながらロックの町から出て宿をとっている村へと戻った。
「じゃあ、今日はこれにて解散。」
アークがそう言うとアルフィーはそそくさと部屋に入った。それを見てドニーが、
「絶対に抜け出すな。」
と言った。
「ああたぶんな。」
「どうする?」
「止めたって無駄だしな。自由にさせるしかないな。」
「だな。」
「じゃあお休み。」
アルフィーの扱いを理解した上での判断した二人であった。アークは自分の部屋へと入った。ドニーも欠伸しつつ自室に入った。
深夜。
こっそりアルフィーはベッドから出た。外行きの服に着替えた。隣はアークの部屋なので音で気づかれないように静かに出た。ドアを静かに開けて廊下に出た。最初、アルフィーは窓から忍び出ようと考えたが。窓自体が小さく断念。なので、忍び足で外との出入り口から出ることにした。廊下は電球の明かりで真っ暗ではなかった。でも、薄暗い。アークとドニーの部屋の前を慎重に物音を立てないように静かに通過した。宿屋は静まりかえっていた。宿屋の従業員も宿直以外は寝たか帰っていっただろう。階段を降りて二階から一階に行きロビーを抜けてドアを静かに開けてアルフィーは外に出ることに成功した。今、この時はアルフィーは自由の身になった。王室に入って以来であった。
夜遅くまで大騒ぎする祭りもこの時間には静かになっていた。出店も閉まり、観光客は各々の宿屋へと戻った。きっと、祭りで経験した話をお土産にしてゆっくりと明日のために眠りについていることだろう。
そんな風に町が静まりかえっている中でアルフィーは一人儀式をやっている場所を探した。大体の見当はついていた。それは町の中央部にある大聖堂である。まずはそこに行ってみることにした。大通りを歩いているとゴミが目につく。観光客が捨てていった物だろう。王都の祭りでも終わった後は大変なゴミの量である。その掃除には結構な予算がかかったりする。人気のない大通りを進み町の中央部にある大聖堂に着いた。空は曇っていた。
とりあえず大聖堂の門を開けてみようとした。しかし、開かない。窓を見ても明かりが点いてない。人がいる感じでもなく、どうやら空振りのようであった。きょろきょろと周囲を見たが、何かやっている空気はなかった。大聖堂の周囲は商店が立ち並んでいる。昼間は参拝客で盛況である。その商店が大聖堂の周りをぐるりと囲うように軒を連ねている。夜中の今は閉まっており看板だけが出ていた。そこから何の店か大体わかる。兎に角お土産か軽食の店が多い。それはそれは儲かるだろうとアルフィーは思っていた。
「どこでやってるのかしら。」
大聖堂でなければ一体どこでやっているのだろうか。外側でやっているのだろうか。そこに人が来る気配がした。もしかしたらこれからやるのかなと仄かな期待を抱きつつ商店の片されてない看板の裏に隠れた。そこに二人組の女性が来た。一人は身長が低く子供ではないかと思われた。大聖堂の門の前で二人は立ち止まりなにやら話始めた。辺りは静謐という言葉のような状態なので耳を済ませば会話が聞こえてきた。
「協力に感謝するありがとう。」
何だか凛凛しいしゃべり方だなとアルフィーは思った。騎士の話し方に似ている。騎士なのだろうか。
「これくらい。でも、いいんですか?バレたらロックの町には二度と入れませんよ。」
もう一人の声は幼いやはり子供だろう。
今の会話で察するにこっそり見に行くようだ。ということはこの人たちについていけば儀式が見れる。あの人たちについていこうとアルフィーは決めた。
二人は北に向かって歩き始めた。大聖堂の横を通り、大聖堂から北に伸びる大きな通りを歩き始めた。アルフィーは見つからないように付けていった。歩いている二人はこれといって会話をしていなかった。無言で歩いていた。アルフィーは掟破りをやるから緊張しているのだろうと解釈していた。明かりといえば月明かりと謙虚に光る星くらいの闇の中、この人たちは儀式を見るために誰もいない道を歩き続けた。
ふと、凛凛しいしゃべり方をする方がしゃべりだした。
「何で私を連れていってくれるんだ?さっき、バレたらロックの町には二度と入れないと言ったが、君こそバレたらこの町に住めなくなるんじゃないか?」
その口調は本気で心配しているような口振りであった。その会話を耳にしたアルフィーはくそ真面目な人なのだろうと思った。そういえば以前に護衛役の騎士が真面目過ぎてアルフィーに振り回されること一ヶ月でやめたことがあったのを思い出した。あの騎士は今頃どうしているだろうか。そんなことを考えていると子供の方がその問いかけに答えた。
「まぁ、私バレても良いと思ってるんです。」
「町から出たいとか?」
子供は頷いた。
「この町じゃないところを見たい住みたい。だから、これはその願望を叶えるなら失敗してもいいかなくらいの気持ちなんです。」
「だから了承したと。」
「それにそういう気持ちがあるからこそあなたの気持ちが分かるんです。」
そう言うと子供はニコッと微笑んだ。それを見て凛凛しいしゃべり方をする方も微笑んだ。
「ルフルドさんの研究が上手く行くといいですね。」
子供が言うとルフルドという凛凛しいしゃべり方をする方は真剣な顔で頷いた。
「さて、北門に到着しました。」
「ここを出てすぐの山に登れば儀式をしている教会があるんだな。」
「では、行きますか。こっちから抜け出れます。」
「よし、行こう。」
「はい。」
「でも、その前に。」
ルフルドは後ろを向いた。




