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そして僕らは…  作者: マジコ
15/33

そして僕らは… その15

「して、どのような考えですかな?」


ガリクソンは穏やかな口調で言った。余裕が出てきたようだ。


「はい、普通に歩いて行くには遠すぎます。なので馬車を借りていくのはどうでしょう。」

「ふむ、馬車で行くとしたらどのくらいかかりそうですかな。」


アークは少し眉間に皺を寄せて考えた。ここから最果ての塔までは山脈と森を抜けていかなくてはならない。山脈は道が整備されてはいるが、山を越えなくてはいけないので時間がかかる。さらに森はハルビンスクと呼ばれ魔物が多く棲息している。凶悪で狡猾な魔物が多いので地元の人以外は入らない危険な森だ。警戒しながら行くとこれもまた抜けるのに時間がかかる。とすれば。アークが思案した結果は一週間かかるということであった。


「徒歩では不可能であるかな。それと馬車ですが一週間も城を開けとくのは難しいですな。」

「うーん。でも、他には…。うーん。うん!そうだ!ドラゴンだ!」


この世界には魔物が棲息しているようにドラゴンも棲息している。ドラゴンたちは各々の棲息している環境に合わせて独自の進化をしている。サイズは人の手に乗るドラゴンから小さな町ぐらいの巨大なドラゴンまでと様々である。ドラゴンたちは人に良くなつき移動手段としても使われている。軍隊にも採用されており、ドラゴン乗りのドラゴンライダーは軍隊の中では花形の一つである。


「確かにドラゴンなら速いものならば数日で最果ての塔まで行けるかもしれませんな。」

「そうですよ。空なら地上を進むより比較的安全ですし。」

「姫様の安全も考慮するなら尚更ドラゴンの方が良いですな。」

「それでドラゴンを操れる協力者は。」

「いないですね。」


ドラゴンを使おうとガリクソンとアークは盛り上がったが、肝心のドラゴンライダーをどうするかで勢いは止まった。素人が手を出せるような生き物ではないのである。長い訓練と相棒のドラゴンとの生活があって初めて扱えるのである。勿論アークもガリクソンもフレイもアルフィーもドラゴンなど触れたこともなかった。子供たちから妙に人気のあるドラゴンだが、その絶対数は少ない。自然界の頂点でもあるドラゴンだが、故に希少なのである。

ここに来て万事休すである。移動手段がないということはどうしようもない。時間があれば行けない事はないが、そんな長期間誤魔化す事などガリクソンらには出来ない。ここに来て詰んでしまった。

結局その日は何の作戦も考えつかぬまま時が経ち解散となった。

王宮に戻ったガリクソンはアルフィーの部屋へとやって来た。今日のことを報告するためである。ガリクソンは困り果てていた。歩きは勿論馬車でも行くのに時間がかかりすぎて不可能なのでドラゴンで行くしかない。しかし、肝心のドラゴンとその乗り手をどう確保するのかまったく見通しが立たない。バレないことが担保される時間は王位継承の儀式を行う一週間である。とてもじゃないが歩きや馬車では行けない。ドラゴンをどうにか手に入れるしかないのだ。しかし、当てがない。竜騎士の誰かを味方に引き込むしかないかと歩きながらガリクソンは思案していた。

ガリクソンは豪華な装飾が施された扉の前に着いた。アルフィーの部屋である。アルフィーが王宮に戻って来た時よりさらに豪勢になっている気がしていた。


「姫様。ガリクソンただいま戻りました。」

「入れ。」


アルフィーの許可が降りたのでガリクソンは部屋に入った。部屋に入るとベッド横に大量のぬいぐるみがあるのがたまたま目に入った。前よりも増えている気がする。


「最果ての塔への行き方は決まった?」


ベッドでラフな恰好でくつろいでいたアルフィーは身を乗り出して聞いてきた。その期待に満ちた顔になんだか話しづらくなってきた。しかし、話さないことには話が進まないので今日アークと相談したことを話した。


「うーんドラゴンかぁ。」

「恥ずかしながら私の知り合いでドラゴンを操れて協力してくれそうな者はおりません。」

「フレイの知り合いにもいない?」

「フレイは侍女なので軍人とかに知り合いはいないそうです。」

「ふむう。」


アルフィーは今までにないくらい頭をフル回転させた。勉学でもここまで使うことはないくらい何とか打開策はないか悩んだ。ガリクソンは諦めムードを匂わせているが、アルフィーはまだ諦めていなかった。そして、ある案を思い付いた。


「そうだ。一人いるわ。」

「ほう、流石は姫様。人脈をお持ちで。」


ガリクソンはアルフィーに非常に感動を覚えた。顔が広いというのはそれもまた立派な王の素質の一つであると思っていたからである。使えるカードの幅が広ければそれだけ戦略の幅も広がるものである。


「それはね。私が地方都市に居た頃の友人でね。」


その話の切り口の言葉からガリクソンはまた骨の折れる事になりそうだと直感した。


竜騎士隊の宿舎は王都の外にあった。王都の周辺は草原が広がり、その中に竜騎士隊の宿舎や訓練場がある。何故、ここに竜騎士隊の施設を設置したかと言うと竜騎士隊結成時には王都は建物が密集し、ドラゴンが飛び回るのは危険だと指摘されたからである。当時王政府は軍事力の強化を目指しての竜騎士隊の結成であった。しかし、この頃の商会などの経済界は税制に不満があり、かなり王政府に対して楯突いていた。そのため竜騎士隊の結成の時も宿舎や訓練場の場所について難癖つけてきたのである。結局、王都の外に建てるということで決着したが、王政府はこの頃から経済界への締め付けを厳しくし始めることになる。そういう経緯があって竜騎士隊の宿舎は今の場所に置かれている。

施設は大きく分けて5つに分かれている。一つは隊員の宿舎である。隊員たちは基本的にここで寝起きし、自由時間を過ごす。部屋は二人一組だが、部屋自体あまり広くなくベッドと机を置くとほとんどスペースはない。まぁ、自室ですることといえば寝るか自習をするかぐらいなので大して広くなくても問題はない。

隊員の宿舎の西側の隣には訓練場がある。もっぱら野外での隊員の基礎訓練とドラゴンに乗っての模擬戦などが行われる。模擬戦は隊員の間で人気のある訓練である。そもそもドラゴンに乗りたくて入隊してくるので当然と言えば当然である。自分の相棒に乗って縦横無尽に闘うのは気持ちが良いのだろう。見ている隊員もひとつひとつどう動くのが良いのか身のこなしを知る貴重な機会であるのも人気の理由の一つであろう。逆に基礎訓練は大変不評である。特に地獄の持久走は悪夢とまで言われている。ひたすら運動場を走り続けるのは竜騎士隊の訓練の中で最もつらいと言われている。ちなみに訓練場の整備は新入隊員によって行われる。新入隊員は座学と基礎訓練中心に行われ技術的なことはあまりやらない。そうした新入隊員がどんな備品があるかと管理はどうするのかなど座学だけでは不十分ではないかと思われることの補足的意味合いのある勉学として新入隊員が訓練場の整備を行うのである。

訓練場の北東、隊員の宿舎の北には講義棟がある。もっぱら座学をする場所である。ここでは机の上での戦術、生き残るために必要な知識、軍法、様々な免許の勉強をする。ちなみにドラゴンに乗るのにも免許がいる。ドラゴン操縦士と呼ばれる免許には一般と軍隊の二種類ある。一般は小型のドラゴンを仕事などで使役するために必要な免許である。あくまで荷物運びを手伝わせるための免許であり、搭乗を前提にはしていない。軍隊は戦争に出て十分戦えるとの認定を受ける免許である。新入隊員は入隊するとまずこのドラゴン操縦士の免許取得の勉強をする。これが難しく入隊時点で一般の免許を持っている隊員でも取得に苦労したりする。

そして、四つ目の施設は竜騎士隊本部である。ここには隊長クラス以上の隊員が生活し、竜騎士隊のあらゆることを統括する。この本部は宿舎などから少し離れた場所に立地している。王都の内側にも竜騎士隊の施設があるが、そこは対王政府向けの工作を担当している。実戦における作戦などはこちらで立案される。彼ら竜騎士隊は独立部隊的要素が強く、竜騎士隊のトップは司令官クラスの権限を持つ。

その中の宿舎にドニーはいた。起きたばかりの彼は急いで訓練の支度をしていた。今日は野外訓練の日であった。遅刻すると大目玉をくらう。ペナルティを課せられるのは嫌なのでドニーはてきぱきと動いていた。部屋は二人部屋でドニーの机周りには勉強道具くらいしかなく無駄がない。これは彼の性分から来ていた。隊員は机周りには割りと好きなものを置く。その点は上からも自由にして良いとされていた。戦争になればいつ死んでも可笑しくない。そして、規律の厳しい寮生活を送るなかで、机周りくらいは自由にさせてやろうということであった。しかし、ドニーはそうした上からの配慮があるにも関わらず、質素にしか物を置かなかった。

ドニーは非常に真面目な人間である。模範生的なところがあり、ルール違反は自分は勿論同僚にも厳しい態度を取る。そのため同僚からは面倒な奴という烙印を押されている。しかし、同時にすごい奴という印象も持たれている。なぜなら前線で八面六臂の活躍を見せるからである。そのドラゴンの操り様は手足を自分

の手足を動かすようだと言われている。

急いで支度をしているドニーの傍らでのんびりしている男がいた。ブルーノーである。彼はドニーとは対照的な人間である。とにかく不真面目であった。一応、ドラゴン操縦士の軍隊の免許を持っているが、取得したのは次落ちたら追い出すと上官に脅されて慌てて取っただけでずっとサボっていた。そんなブルーノーのことをドニーは軽蔑していた。軍人たるもの厳しい規律の中で高潔さを持ち人々のお手本の一つでなければならないとドニーは考えていた。その潔癖さからドニーはブルーノーのことを不快に感じていた。それに対してブルーノーもドニーのことをめんどくさい奴と考え疎ましく感じていた。この二人相性が非常に悪いのであった。

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