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逆さ虹の森

作者: うさぎバチ

 童話風に書きました。でも、しつこい内容かも知れません。

 ここは、【逆さ虹の森】。この森には、色んな動物達が住んでいます。


 その森にある、【ドングリ池】。水の中にドングリを投げ込んで、お願い事をすると、願いが叶うと言われています。


 そこに一頭のクマが、やって来ました。クマは、池の水にドングリを投げ込んで、お願い事をします。


 ――僕は、怖がりなんだ。だから、怖がらなくなりたい。


 大きな体のクマは、その体と違って、とても臆病で何にでも、怖がっていました。


 クマが、お願い事をしていると、近くの草むらから、ガサガサと音を立てて、草むらが揺れました。


 ――ひゃあああ!!?


 その音に驚いたクマは、音のした方から、ドスドスと地面を揺らして逃げてしまいます。


 木の根もとまで逃げたクマは頭を抱えて、大きな体を小さく丸めて、縮こまってしまいました。


 そして、ガサガサと音を立てて草むらから、音の主が姿を出しました。


 ――そんなに、驚かなくてもいいじゃないか?


 草むらから出てきたのは、小さな【リス】でした。リスはドングリを、ドングリ池に投げ込んでお願い事をしました。


 それから、リスはクマに近寄っていきます。クマは抱えた頭を上げて、まぶたを開きます。


 ――なんだ、君だったのか。


 大きなクマは、小さなリスを見て、ホッと息を吐きます。


 ――ねぇねぇ、怖がりを直したいんだって?だったら、オイラに良い考えがあるよ。




 ところ変わって、ここは【根っこ広場】。


 この逆さ虹の森の中でも大きな広場で、動物達は広場に集まって賑やかに過ごしていました。


 そこに、一匹のヘビがやって来ました。


 ――今日は、まだ誰も居ないなぁ。


 朝早くにヘビは、やって来たので広場には誰も居ませんでした。

 

 ヘビは広場を、散歩し始めます。その時、グゥとヘビのお腹が、鳴りました。


 ――お腹が、空いたなぁ。朝ごはんは食べてきたのになぁ。


 ヘビは、食いしん坊でした。すると、どこからか良い匂いが漂ってきました。


 その匂いを、ヘビのお腹を刺激します。また、ヘビのお腹が鳴りました。


 ヘビは、匂いを辿ります。広場の根っこの隙間から、体を通します。


 するとそこには、根っこの影に隠れて、ドングリや果物が置いてありました。


 そして、大きな葉っぱに包まれて、チーズが葉っぱの隙間から、ひょっこりと覗かせていました。


 ――わぁ、美味しそうなチーズ。


 ヘビはチーズが、大好物でした。ヘビのお腹が、また鳴ります。


 一つぐらい、食べても判らないよね。そう考えて、ヘビが大きな口を、あんぐりと開けます。


 するとそこに、木の上の方から綺麗な歌声が聞こえてきます。


 ――食いしん坊の ヘビさん。チーズを食べて また太っちゃう。


 ヘビを小馬鹿にする歌声に、ヘビは、声のする木の枝の方を見ます。


 そこには、一羽のコマドリが木の枝に留まって、歌を歌っています。


 ――なんだよぅ、オラはそんなに太ってないぞ。


 コマドリの皮肉混じりの歌に、ヘビは怒ります。すると、更にコマドリは歌を歌い続けます。


 ――でもでも 大きなお口で チーズをペロリ。そしたら また太っちゃう。


 その歌にヘビは、ドキリとします。ヘビは誤魔化す為に、嘘をつきます。


 ――ち、違うよぉ。オラは、ただ見ていただけだよぅ。


 ヘビは、そう言うと通ってきた根っこの隙間に戻ろうとしました。

 

 ――あ、あれぇ?


 しかし、ヘビのお腹が引っ掛かって、通れませんでした。


 ――ほらほら やっぱり。嘘を言ったから 捕まっちゃた。根っこの広場に 捕まっちゃた。


 コマドリは直ぐに、その様子を歌にして、歌い始めます。


 この【根っこ広場】で、嘘をつくと根っこに捕まってしまうと、言われています。


 ――お腹が……、きゃあ!怖いわ!


 突然、コマドリが歌を歌うのを止めて、飛び去っていってしまいました。


 どうしたのだろうと、ヘビは捕まったままの体を伸ばして辺りを見ます。


 するとそこには、大きな体を葉っぱで覆った、四つの眼を光らせた、葉っぱのお化けが居ました。


 葉っぱのお化けが、ゆっくりとヘビに近寄ってきます。そして、お化けは、唸り声を上げました。


 ――シャアァァァ!!


 ――わあぁぁぁぁ!!?お化けぇぇ!!?


 驚いたヘビは、体を一気に伸ばしました。すると、体が根っこの隙間から外れました。


 しかしヘビは、その事に気づかないまま広場から、逃げていきます。


 ――きゃははは!やった、やった。大成功!


 葉っぱのお化けが、笑いながら言いました。すると笑い声の下から、別の声が喋りだします。


 ――こ、これで良いのかなぁ……?


 葉っぱのお化けは、リスとクマでした。リスとクマは、体に葉っぱを付けて、リスがクマの頭に乗っていたのでした。


 いたずら好きのリスは、みんなを驚かそうと考えたのでした。


 ――何いってるんだよ。ほら、怖くなかっただろ?


 ――う、うん……。


 クマは少し、戸惑いながらも頷きました。


 ――あっ、誰か来たみたいだ。


 リスは、広場に近づいてくる動物の姿が見えたので、クマと一緒に木の影に隠れます。


 その動物が、リスとクマが隠れている木の横を通りすぎます。


 ――いまだよ!


 それを狙ってリスは、クマに小声で合図します。すると、クマは立ち上がり、リスが叫びます。


 ――シャアァァァ!!


 しかし、その動物は驚かずに、リスとクマの方を振り返ります。


 その動物は、【アライグマ】でした。


 ――うわわ、大変だ!


 リスとクマは、困りました。なぜならアライグマは、この森で【暴れん坊】と呼ばれて、恐れられていました。


 ――グアァァァァ!!


 今度は、アライグマが叫びます。それにクマが驚いてしまいます。


 ――うわあああああ!!


 驚いたクマは、リスを頭に乗せたまま、ドスドスと走って、逃げてしまいました。


 ――わあ、落ちちゃうよぉ!?


 突然、走り出したクマにリスは、落とされないように、必死で捕まります。


 その様子を見ていたアライグマは、フンッと鼻を鳴らします。


 それから、アライグマは広場の中央を、陣取るように座ります。


 広場には、他の動物もやって来ましたが、アライグマの姿を見ると、一目散に逃げていきました。


 いつもなら、沢山の動物達が集まり、賑わっているはずの広場。しかし、今日はアライグマだけです。


 暴れん坊のアライグマは、皆から避けられていました。そして、アライグマは昼寝を始めます。


 ――やぁ、良い天気だね。


 寝ているアライグマを、起こすように一匹の動物が、話しかけます。


 アライグマは、不機嫌そうに目を覚まし、その動物を見ます。


 その動物は、【キツネ】でした。キツネは、いつもニコニコ笑っていました。


 ――何か、用かよ。


 アライグマは、ムスッとしながら立ち上がり、大きく口を開けて、あくびをします。


 ――君が居るのが見えたから、只の挨拶だよ。


 キツネの言葉に、アライグマは、手を振り上げました。


 ――そんな事で、起こすんじゃねぇ!


 アライグマは振り上げた手で、キツネを叩こうとしました。でも、ふと考えて手を止めます。


 ――……いや、ちょっと手伝え。


 叩かれると思って、両手で頭を守っていたキツネは、予想外のアライグマの言葉に驚きました。


 ――えっ、どうかしたのかい?悪いものでも、食べたのかい?


 キツネは思わず、冗談を言ってしまいます。


 ――うるせぇ!いいから来い!


 ――痛い!


 結局、キツネはアライグマに、叩かれてしまいました。


 

 一方その頃、リスとクマの化けた姿に、驚いて逃げ出したヘビは、ドングリ池の前まで逃げてきていました。


 ――あぁ、もうビックリした。


 ヘビは後ろを振り返り、追いかけて来ていないのが判ると、ホッと一息つきました。


 そして、ドングリ池の側に居ることが判ると、落ちているドングリを探し始めます。


 ――あっ、あったぁ。


 ヘビは木の根元で、ドングリを見つけました。それを口に咥えて、ドングリ池に投げ込みました。


 ――どうか、楽しくて美味しい食事が出来ますように。


 ヘビは目を瞑り、願い事をします。食いしん坊のヘビは、やっぱり食べる事ばかり考えていました。


 するとヘビのお腹が、グゥと鳴りました。ヘビは祈りを止めて、森の中に進んでいきます。


 ――お腹が空いたなぁ。何か無いかなぁ?


 そんな事を考えながら、ヘビは行ってしまいました。


 そして、ドングリ池に今度はコマドリが、飛んできました。それから、ヘビと同じように、ドングリを探します。


 コマドリは、見つけたドングリを、ドングリ池に投げ込んでお願い事をします。


 ――皮肉の無い、誰もが好きになる、歌が歌えますように。


 コマドリは皮肉を言うつもりで、歌を歌っているわけでは、ありませんでした。


 思った事を、つい歌にのせて歌ってしまう。それがコマドリの悩みでした。


 それにしても怖がりのクマは、どこまで逃げてしまったのでしょう。




 ――うわぁぁぁぁぁ!!


 クマは叫びながら、まだ逃げていました。そして、ボロボロの橋を駆け抜けていきます。


 ――止まって!止まってよぉ!!


 走るクマの頭に、必死でしがみついていたリスが叫びます。それに気づいたクマが、やっと止まりました。


 ――ね、ねぇ?追ってきてないよね?


 クマは止まったものの、怖くて後ろを振り返れません。リスはクマの代わりに後ろを見ます。


 ――うん、来ていないよ。でもね……。


 リスは誰も追ってきていない事を、クマに伝えます。でも、クマに後ろを見るように促しました。


 ――えぇ!?僕は、ここを通ってきたの?


 クマは、自分のした事に驚きました。リスとクマが通ってきたのは【オンボロ橋】。


 森を、二つに分ける崖。それを繋げていたのがオンボロ橋でした。


 しかし、その橋はボロボロで、いつもならクマは怖くて渡れません。


 でも、クマは恐怖のあまり、それに気がつかず、渡ってしまいました。


 ――どうしよう、戻れなくなっちゃった……。


 クマは困り果てます。そんなクマにリスが、元気付けます。


 ――今、通れたんだから、戻れるよ!


 そんなリスの言葉を裏切るように、オンボロ橋の板がバラバラと、崖に落ちてしまいました。


 ――あぁー、渡れなくなっちゃった。


 ――その……ごめん。


 仕方なく別の橋を探しに、リスとクマは崖の側を歩いていきます。でも、どの橋も、ボロボロのオンボロ橋でした。


 リスとクマは、途方に暮れます。そこでリスは、考えました。


 ――そうだ、オイラが渡って代わりの板を持ってくるよ。


 オンボロ橋は、まだロープが繋がっていました。そこに、リスが飛び乗り、渡り始めます。


 ――ぼ、僕は?


 ――待っててよ。直ぐに戻ってくるから。


 リスは、そう言うとクマを置いて、渡って行ってしまいました。


 ――そ、そんなぁ。


 クマは、ガックリと落ち込みました。


 


 所変わって今度は、アライグマとキツネはどうしているのでしょう。


 アライグマとキツネは、オンボロ橋の前に居ました。しかし、リスとクマの姿は在りません。


 ここの橋は、別のオンボロ橋。そして、アライグマとキツネの足元には、木の板が置いてあります。


 ――ふぅ、ふぅ。あぁ、重かった。


 ――何だ、もう疲れたのか。


 キツネは、息を切らしています。木の板は、アライグマとキツネが運んできたのでした。


 ――それじゃ、始めるぞ。


 ――えぇ!少し、休まないのかい。


 木の板を運んで、疲れたキツネは冷や汗を掻きました。


 ――いいから、始めるぞ!


 キツネの話を聞かずに、アライグマは橋を直し始めます。キツネとアライグマは、作業をしながら、話をします。


 ――それにしても、君が橋を直そうとするなんてね。


 ――うるせぇ、儂は渡れなくなるのが嫌なだけだ!


 アライグマは、キツネに乱暴な言葉使いで返します。ても、キツネは続けて言いました。


 ――みんなが、知ったら驚くだろうな。


 ――誰にも言うなよ!いいな!


 キツネの言葉に、アライグマは声を荒くして、制止します。しかし、キツネは知っていました。


 アライグマが、みんなと仲良くなりたくて、ドングリ池に願い事をしていた事を、知っていました。


 お人好しのキツネは、その為にアライグマと仲良くなろうとして、話しかけたのでした。


 キツネが木の板を運ぶのに、大変だった筈です。リスは、どうやって代わりの板を、持ってくるのでしょう。


 


 そのリスは今、根っこ広場に向かっていました。


 ――クマには、あんな事をいったけど……。実は、見ちゃったんだよね。


 リスは、広場の近くまで来ると、草むらの影に隠れながら、広場を覗きます。


 ――誰もいないね……?


 広場には、誰も居ません。みんな、まだアライグマが居ると思って、誰もやって来ては居ませんでした。


 リスは、それを確かめると一気に走り出しました。向かったのは、クマと一緒に、ヘビを驚かせた場所です。


 ――あの近くに食べ物が沢山、置いてあったのが見えたんだ。


 なんとリスは、クマを助けるより先に、食べ物を一人じめしようと考えていました。


 その時でした。根っこの上を走っていたリスは、足を滑らせてしまいました。


 ――うわぁ!!


 リスは根っこの下に、真っ逆さまに落ちてしまいます。


 そして、リスはスポンと、根っこと根っこの間に、逆さまのまま挟まってしまいました。


 ――うーん、うーん。……だめだぁ、抜けないよぉ。


 リスは必死に、根っこの間から抜け出そうとします。でも、どうやっても抜けませんでした。

 

 それでもリスが、もがいていると辺りが段々と暗くなっていきます。


 リスが空を見ると、空に雲が集まっていきます。集まった雲は、どんどんと黒くなってきました。


 するとリスの鼻の上に、ポツンと、水滴が落ちてきました。


 ――あっ、雨だ!


 雨は、ドンドンと強くなって、ザーザーと降りだします。


 ――やった!これで、抜け出せるかも……。


 リスは雨に濡れる事で、根っこの隙間から滑って抜け出せる、と考えました。


 しかし、リスの頭の上……ではなく、リスの挟まっている根っこの下から、バシャバシャと、雨粒の跳ねる音が聞こえてきます。


 リスが、その音の方を見ました。そこには、根っこと根っこが絡まり合って、器の様になっていました。


 ――水が、溜まってる!?


 雨粒が集まって、水溜まりになりました。それはリスの挟まっている所まで、溜まるようでした。


 ――このままじゃ、溺れちゃうよ!?


 リスは早く、そこから抜け出そうとしました。しかし、濡れたリスの毛は、更に根っこに絡まりって動けません。


 ――だっダメだぁ……。誰かぁ、助けてよぉ!!


 リスは大きな声を上げて、助けを呼びました。その声を聞き付けて、飛んできた動物が居ました。


 ――どこどこ? 助けを呼ぶ声 雨の中。


 それは、コマドリでした。コマドリは、木の枝に止まると声の主を探します。


 ――ここだよぉ!


 もう一度リスは、大きな声で叫びます。それに気づいたコマドリは、リスのいる場所まで飛びました。


 ――まぁ、大変!このままじゃ、溺れちゃう!


 根っこに挟まっているリスの姿を。それを見たコマドリは、驚きました。

 

 いつもなら歌にしながら、話をするコマドリでしたが、この時ばかりは、歌えませんでした。


 コマドリは、リスの足を掴み、引っ張ります。


 しかし、体の小さいコマドリは、リスを持ち上げる事が出来ませんでした。


 ――だめね……持ち上がらないわ。


 ――そんなぁ。


 コマドリとリスは、途方に暮れました。コマドリは、少し考えて、飛び上がりました。


 ――待ってて、誰か助けを探してくるから!


 コマドリは、翼を広げて飛んでいきます。リスは、焦り叫びました。


 ――待ってよ!置いていかないでよぉ!


 しかし、リスの声を聞かずに、コマドリは行ってしまいます。


 ――あぁ、行っちゃった……。


 コマドリの言葉にリスは、クマの事を思い出します。リスもクマに、待っててと言って置いてきぼりにしました。


 ――これはきっと、直ぐに戻るって嘘ついた罰、なんだろうなぁ……。


 リスは、クマを助けるために木の板を探さなかったのを、後悔しました。


 


 一方、飛び立ったコマドリは、リスを助ける為に飛びながら、大声で助けを呼び掛けました。


 ――誰か、大変なの、助けに来て!


 森の動物達は、コマドリの声に耳を傾けますが、助けが必要なのが、いたずら好きのリスと判ると、帰ってしまいます。


 ――どうして、誰も聞いてくれないの!?


 コマドリは、愕然としました。飛び付かれたコマドリは、一度休むために木の枝に止まりました。


 ――とうしよう……、このままじゃ……。


 すると、コマドリの止まっている枝の下の草むらが、ガサガサと音を立てて近づいてきます。


 ――なにか、あったのかなぁ?それとも、また皮肉の歌かなぁ?


 やって来たのは、食いしん坊のヘビでした。ヘビは、またコマドリが皮肉を歌っていると思い、近づいてきたのでした。


 ――あぁ、良かった。聞いてくれるのね。


 コマドリは、ホッと一安心します。でも、問題はこれからです。コマドリはリスの事を、ヘビに話しました。


 ――うーん、なるほどぉ……。でも、オラもいたずらされた事が、あるだよなぁ。


 ヘビもまた、リスのいたずらに困っていました。ヘビがリスを助けに行ってくれるかは、まだ判りません。


 ――歌の事は、謝るからお願い!


 コマドリは、必死にヘビを説得します。しかし、ヘビは特に気にもせず、言葉を返します。


 ――いいよぉ、歌の事は気にしてないよ。それより、早く助けに戻ろうよ。


 ――本当!良かった……。


 コマドリは、ホッと一安心。そして、ヘビは急ぎ足で、コマドリに言いました。


 ――それに広場に有った食べ物が、食べられるかもしれないからねぇ。 


 ヘビは、食べ物の事ばかり考えていました。これにコマドリは、木の枝から滑り落ちそうになりました。


 ――それじゃぁ、オラは広場に行くよ。でも、オラだけじゃ大変だと思うから、助けを呼んできて。


 ――わかったわ。お願いするわ。


 そして、コマドリは空に飛び立ちます。同時にヘビも、広場に急ぎました。


 そして、コマドリは助けを呼びながら、オンボロ橋の掛かった崖を越えていきました。


 ――なんだか、騒がしいな。


 ――雨も、降ってきているし、少し休憩しようよ。


 コマドリの声を聞いていたのは、キツネとアライグマでした。


 キツネとアライグマは、雨の降る中でも、橋を直していました。


 ――どうやら、広場で何か有ったみたいだね?


 ――ふん、儂らには関係ない。とっとと、橋を直すぞ。


 アライグマは、コマドリの言葉を無視して、作業を再開しようとします。


 しかし、キツネは悩んでいました。そんなキツネに、アライグマは声を荒くして、怒り出します。


 ――おい、早く直すぞ!聞いてるのか!


 アライグマは、今にも手をあげそうです。それでもキツネは、アライグマに向き直って言いました。


 ――ごめん。やっぱり私は、広場に行くよ。


 ――あっ!おい、待て!


 アライグマが止めようとするも、キツネは広場に向かって走り出しました。


 ――……ふん。


 アライグマは、キツネが行ってしまうと、橋を直し始めます。しかし、アライグマは作業を止めました。


 ――あぁ、もう!しょうがねぇなぁ!


 悩んだあげく、アライグマは、走り出しました。キツネの向かった広場の方へと。


 


 その頃、ヘビは広場にたどり着きました。ヘビはリスを探すために、声をあげます。


 ――おーい、何処だー?


 すると、ヘビの耳に、リスの小さな声が聞こえます。ヘビは、その声の元に急ぎました。


 ヘビが、リスを見つけました。根っこに溜まった水は、既にリスの耳の辺りまできていました。


 ――あぁ、良かった。見つけたぁ。


 ――あっ!驚かせて、ごめんなさい!


 リスはヘビを見るなり、謝ります。ヘビを驚かせた事を、怒られると思ったのでした。


 ――なんだぁ、お化けのふりしてたのかぁ。でも、気にしてないよ。


 ヘビはそう言うと、根っこに体を巻き付けて、尻尾でリスを押し上げようとしました。


 しかし、それでもリスの体は根っこの隙間から、抜け出せません。


 ――うーん中々、押し出せないね。おやぁ、誰か来たみたいだ。


 ヘビが、落胆していると、一匹の動物がやって来ました。それは、キツネでした。


 ――どうやら、間に合ったみたいだね。


 ――あぁ、ありがとう……。


 リスの言葉を聞くと、キツネは直ぐに根っこの隙間を広げようと、根っこを引っ張り始めます。

 

 ――うーんしょ、うーんしょ。ダメだ、広がらない……。


 ヘビとキツネが頑張りますが、リスはまだ、抜け出せません。


 ――なんだよ、まだ抜け出せてないのかよ。


 そこに荒い言葉使いで、アライグマがやって来ました。


 ――やぁ、やっぱり君も来てくれたんだね?


 キツネは、嬉しそうにアライグマに言葉を返します。


 アライグマは、少しだけキツネを睨みましたが、直ぐにリスを引っ張ります。


 アライグマとキツネとヘビは、手分けしてリスを助けようとしました。それでも、まだ抜け出せません。


 ――みんな、来てくれたのね。


 すると、そこにコマドリが戻って来ました。その姿を見たリスは、泣き出しました。


 ――うわぁぁぁん!もう、戻って来ないと思ってた……。


 ――そんな事を、するわけないでしょう。それに、ほら。


 コマドリがそう言うと、森の中からドスドスと、走ってくる動物がいました。


 それは、クマでした。でも、どうやってクマは、オンボロ橋を渡ってきたのでしょうか。


 それには、コマドリがオンボロ橋を越えて、飛んでいった時まで話を戻します。




 コマドリが助けを呼び、にオンボロ橋を越えたとき、その声をクマが聞いていました。


 ――お、おおーい!


 クマが飛んでいるコマドリを、呼び止めます。それに気づいたコマドリは、クマの側まで近寄ります。


 コマドリは、クマにリスの事を伝えました。クマは、驚き焦りました。


 ――大変だ!早く戻らないと!


 クマとコマドリは急ぎ、広場に向かいます。しかし、どうしたものでしょう。クマは、オンボロ橋を渡れません。


 クマは、その事を忘れてオンボロ橋の前まで来ました。


 ――あれ、板が張ってある。


 クマとコマドリが来た場所のオンボロ橋は、丁度アライグマとキツネが、直していたオンボロ橋でした。


 ――うぅ……怖いよぅ……。


 それでも木の板は、今にも外れて落ちそうです。クマは、怖くなって立ちすくんでしまいます。


 ――無理に渡らない方が、いいわ。


 怖がるクマに、コマドリは心配そうに渡る事を制止しました。しかし、クマは決意の表情になります。


 ――ううん!僕は変わるんだ!


 クマは意を決して、オンボロ橋を一気に走り渡ります。揺れるオンボロ橋に、少しだけビクビクと震えながら渡りました。


 ――やったわ!


 クマがオンボロ橋を渡りきると、コマドリは歓喜の声を上げました。


 しかし、クマが渡りきると同時に、オンボロ橋の板は外れてしまいました。


 ――あぁ、また壊しちゃった……。


 ――それより、急ぎましょう!


 クマが壊したオンボロ橋を、後ろ目に眺めますが、コマドリはクマを急かします。


 ――うん!そうだね。急ごう!


 コマドリの言う通りに、クマは根っこ広場に急ぎ走ります。




 そして、コマドリとクマが、根っこ広場にたどり着きました。


 そこには、根っこに挟まって、逆さになっているリスと、リスを助けようとしている、アライグマとキツネとヘビが居ました。


 アライグマは、リスを引っ張り引き抜こうと頑張ります。


 ヘビが、リスを下から押し上げようと尻尾で押します。


 キツネが、リスが溺れないように雨水を掬い上げます。


 それでも、リスは根っこから抜け出す事が出来ず、雨水も根っこに溜まっていきます。


 そのリスに、コマドリが近づくとリスは泣き出しました。そして、やって来たクマに気づきました。


 ――来てくれたのかい!オイラ、置いていったのに……。


 ――そんなことより、早く抜け出さなきゃ!


 リスは情けない声を上げましたが、クマは直ぐにリスを助けようとします。


 ――よし、じゃあ根っこを引っ張って、隙間を広げてくれ。


 アライグマが、クマに根っこを引っ張るように頼みました。クマは、その大きな腕で根っこを引っ張ります。


 そんなクマを見たリスは、クマに謝ります。


 ――オイラ、君を利用していたんだ。


 ――うん、知ってるよ。でも、僕も君の事が羨ましかったんだ。


 リスは、皆からかまってもらおうとして、クマをいたずらに誘いました。でもクマは、それを判っていました。


 クマは、いつも明るいリスを、羨ましく思っていました。そんなリスに、怖がりのクマは同じようになりたいと考えました。


 クマはリスに付いていけば、怖がりじゃなくなると思っていました。


 そんなクマに、リスはまた泣き出しました。


 ――ごめんよぉ。オイラ、本当は木の板なんて探す気なんて無かったんだ……。


 ――そうだったんだ……、でもいいよ。僕、渡って来れたよ。


 リスの正直な言葉に、クマは驚きます。しかし、クマはリスを許しました。


 するとリスの体が、すぽんっと根っこの隙間から抜けました。


 リスを掴んでいたアライグマは、ドスンと尻餅をつきました。


 すると、勢い余ってリスが空に飛びました。そして、クマの頭の上に落ちました。


 ――うわぁ!ビックリしたぁ!


 クマは驚き、声を上げました。皆は、少しの間だけ静かになりました。


 ――あはははは!!


 そのリスとクマの姿が、妙に可笑しくて、皆で一斉に笑い始めました。


 リスとクマも、一緒になって笑っています。


 根っこ広場に降っていた雨も、いつの間にか止んで、太陽が雲の間から現れました。




 空の雲が殆どなくなった頃、根っこ広場にはテーブルが置かれました。


 そして、そのテーブルの上には、沢山の食べ物が置かれています。


 ――この食べ物を隠していたのは、君だったのかぁ。


 ヘビは大好きなチーズを食べながら、キツネに聞きました。


 ――今日は、特別な日だからね。皆で、楽しみたかったんだ。


 根っこ広場に隠された、食べ物は今日の為にキツネが用意したのでした。


 ――特別な日?何があるのかしら?


 キツネの言った特別な日という言葉に、コマドリは興味深々です。


 一緒にテーブルに集まっていた、アライグマとリスとクマも、同じく気になっていました。


 ――それはね、……丁度良かった。ほら!


 その事を語ろうとしたキツネは、空を見上げました。それを追うように、集まっていた皆も空を見上げます。


 すると空には、虹が掛かり始めました。その虹は下の方に向かって、曲がっていました。


 今日は、空に虹が逆さに映る特別な日でした。それが、この【逆さ虹の森】と呼ばれる理由でした。


 キツネは今日、虹が掛かる事を知っていたのでした。


 ――でも、どうして知っていたの?


 クマがキツネに質問しました。それに対してアライグマが答えます。


 ――こいつ、きっとドングリ池に願い事をしたんだろ?


 ――い、いやぁ、そんなことは無いよ……。


 アライグマの返答にキツネは、ギクリとして尻尾を振りながら、否定しました。


 しかし、キツネの尻尾は、誤って根っこと根っこの間に挟まりました。そして尻尾の毛が沢山、抜けてしまいました。


 ――……!?痛ったぁい!!


 キツネは尻尾の毛が抜けた痛みで、思わず叫びました。そんなキツネの様子を見ていたアライグマは、思わずはにかみました。


 ――ほぅら、やっぱり願い事をしてたんじゃないか。


 つい嘘をついてしまったキツネに、根っこ広場は見逃したりはしませんでした。


 ――ごめん……、本当はそうなんだ。


 キツネは、痛めた尻尾を擦りながら、皆に謝ります。でも誰も、その嘘を気にしてはいなかったようです。


 ――よーし!オイラ、踊るぞ!


 ――じゃあ、アタイも歌うわ!


 楽しくなったリスは、台を用意して踊り始めます。それに合わせて、コマドリが歌います。


 その歌声には、皮肉は混じっていませんでした。


 そして、その歌声と、それを楽しむ笑い声に、他の動物達も集まって来ました。


 根っこ広場は、とても賑わいます。その賑わいは逆さ虹の森のどこまでも、聞こえてきたそうです。


 それからも、森の動物達は楽しく暮らしました。


 ――おしまい。

「長くなったけど、これでおしまい」


『長くなりましたね?』


「まずは、構想で大分、時間が掛かったよ」


『ヘビの扱いが、難しかったですね』


「肉食動物と、草食動物とで食べ物が違うからね。だから、キツネとヘビで悩んだよ……」


『食いしん坊のヘビですもんね。現実そのままだったら、リスとコマドリ補食対象ですよ』


「そこで、とりあえず【チーズ】を入れてみたよ。あれなら、なんとかワンチャンあった」


『なかなか、厳しい組み合わせでしたね』


「あと、ヘビは脚を持たない生物だったので、擬人化させるのも選択が出来なかったかな」


『なので、動物達が会話は出来るのは良いとして、二足歩行をしていないように表現しました』



 はい、と言うわけで今回、童話を考えるのは初めてだったのてすが、


 登場人物(動物?)と場所の指定が有ったので、構想を考えるのが大変でした。


 でも、それを含めて楽しめたと思います。それでは、失礼します。


 最後まで、読んで頂きありがとうございます。

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