『騎士』01
晴れ渡る空の下、澄んだ空気の中に草木が香る中。私は愛馬のエイミーと共に街道を進んでいた。
「はぁ」
照り付ける日差しの暑さと精神的な疲弊から溜息が溢れる。
「退屈ですね」と気分を紛らわせる様に独り言を呟くと、私の気持ちを汲んだ様にエイミーが鳴く。予期していなかった返事に困惑しながらも笑ってしまう。少しばかり気分が軽くなった。
しかし本当に何もない。見晴らしがいいと言えば聞こえはいいが、これだけ変わり映えのない景色が続くとなると億劫な気持ちが顔を覗かせる。
「あっ」
道沿いに木々が重なって生えている場所を見つけた。この暑さの中を歩き続けるのが危険だと判断した私は下乗し、手綱を引いてエイミーをその陰へと先導する。エイミーの背に括られていた荷物を下ろして、私自身もその場に座り込んだ。
「ごめんね、疲れたでしょう」
私がそう声を掛けると、エイミーは「まだまだ平気だ」と言わんばかりにその場を一回りして大きく声を上げた。
「あなた、とっても優しいのね」
これだけの荷物を担いだままで人ひとり乗せるとなれば、いくら軍馬であっても容易ではないだろう。にも関わらず、この子は私の事を気遣ってくれているのだ。荷の中から林檎をひとつ取り出して差し出す。鼻を鳴らして匂いを確認すると林檎に齧り付くエイミー。私はもうひとつ林檎を取り出して齧りながら、腰に下げたポーチにしまっておいた地図を地面へと広げる。
今の位置から目的の村まであと一時間程度。このペースならば日が落ちるよりも早く、件の村へと到着するだろう。時間的な余裕がある以上は無理して進むべきではない。この日差しが落ち着くまではここで休憩する事にした。
このまま何事もなければいいのだが……。