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小さな異変

少しづつ光が戻ってくる。

意識が覚醒してからの行動は早かった。


「……はっ! お、俺は……そうだ! 俺は背中から攻撃を受けて……」


すぐに起き上がり、そう言って服の下から背中を触る。

自分の手で触れることのできる背中の範囲は限られているが、目立った痛みはなく、傷もない。

しかし、手のひらを見てみると真っ赤な液体が付着している。

鼻腔を刺激するこの匂いは……鉄?


「やっぱりこれ、血だよな……」


下を見ると、俺を中心に血の小さな水溜まり(水じゃなくて血だから血溜まり?)ができていた。


「なんでだろう? ……それにあの牛も……って、そうだ! 甘川さんは?!」


あたりを見渡すと、少し離れたところに甘川さんが倒れていた。


「甘川さん!」


すぐに駆け寄ると意識の無い甘川さんの体を揺らして何度も名を叫ぶ。


「甘川さん! 甘川さん! 甘川さん!……」


なんども呼び続けていると、ビクンと甘川さんの体が揺れた。


「甘川さん! 大丈夫?!」


少しづつ甘川さんの目が開かれる。


「ん……んぅう……や、くも君?」


「そうだよ。俺だよ。」


「……は! わ、私……あの牛に…」


「だ、大丈夫! あの牛はもう……」


言いかけた瞬間、背筋に悪寒が走った。

とっさに後ろを振り向くと……

そこにはあの青牛がなぜか傷だらけの状態で棍棒を大きく振りかぶっていた。


「なっ……!」


とっさに甘川さんを抱え、逃れようとするが、もう遅い。

あの速度の棍棒の振りを目の当たりにして、今はもう、万が一にも逃れることができる気がしないのだ。

死を覚悟した時だった。


ドーン!


大きな音が真後ろから聞こえる。

棍棒は振り下ろされておらず痛みもない。

恐る恐る後ろを振りかえると……


「えっ……?」


青牛が前のめりに倒れていた。

しかも、無惨にも身体のあちこちがへこみ、かすり傷が多くついた状態で。


「どうしたの八雲くん?……って、えっ?!」


驚く甘川さんを無視して話し始める。


「起きたね甘川さん大丈夫?」


「うん、大丈夫だけどこれ……八雲くんがやったの?」


「いや、俺はやってないんだ。 俺たちはどっちも気絶していた。 その間に誰かがやったんだと思う」


「誰かって?」


「わからないけど俺たちを見て襲わずに牛だけを攻撃して、さらに俺の傷も回復させてくれるっていうのは少なくとも敵では無いと思う。」


「傷? 大丈夫なの?!」


「うん、甘川さんを抱えて逃げてた時に背中にズバっと棍棒でね。 ほら、あそこに血溜まりがあるでしょ。」


「暗くて見えないよ。 ちょっと待ってね」


「うん……あれ?」


そこで気づく。


「俺……なんで見えてるんだろ?」


「えっ……?」


よく考えたらそうだ、最初からだ。

あの気絶から目が覚めた時からずっとはっきり見えていた。

なのになんで違和感がなかったんだ?

そう、まるで最初から暗闇の中で住んできたかのように違和感がない。


「目が慣れたとか?」


「いや、そんなんじゃないんだ。 全く違和感のない普通の太陽の下と同じように明るいんだよ」


「そうなの? よくわかんないね」


「……そうだな、それよりこれからの事を考えよう」


今のところ体に害のある異常は無いし。

明るい事に越したことはない。

さあ、行くか。


ぐぅ〜〜……


立ち上がろうとした瞬間、2人のお腹が同時に鳴った。


 「お、おなかへったね」


 「そ、そうだな」


 二人は目を見合わせると同時に苦笑いをした。

 こういう場面では、顔を赤らめて恥ずかしがるところなのだろうが、さすがにそこまで気が回らない……


 「でも、食べるものって言ったら……」


 「これぐらいしかないね……」

 

 ……そう、近くにある食料といえばたった今、目のまえに倒れている牛しか存在しない。

 しかし、牛であるとはいえ、先ほどまで、巨大な棍棒を振り回していて筋肉が固そうなうえ、何より体色だ。

 青。 青である。

 果物や、野菜、お菓子類ならまだしも、生ものだ。

 青いカレーなどはダイエット食品として有名だが、その比ではない。

 まあ、皮をはいでみないと中身までは分からないのだが……


 「うん、絶対に食べたくないね……」


 天川さんが肩を落としながら呟くと、俺は天井を見上げながら言葉を返した。


 「食べるしかないよね……」


 「まあ、そうなんだけどね」


 幸い、火は天川さんが使えるため、生のまま食べることにはならないがやはり、心配は残る……

面白いと思っていただければ幸いです。

ポイント評価、ブクマ、感想等よろしくお願いします。

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