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魔王様の魔法教室 その2

大変お待たせ致しました

 桃園光は魔王である。幾万もの魔族を従え、異世界イグジスタに恐怖をもたらした。故にイグジスタの人間は俺を恐れ忌み嫌う。面と向き合えば名のある騎士でさえ、恐れて泣くのだ。

 それだけの威厳と迫力が俺にはあった……筈。


「えーと、シーツは洗濯した時の事も考えて四枚は必要ね。それとゴミ箱と収納ケースも買わなきゃね」

 恐怖の大魔王様、姉に連れられてお買い物中でございます。あの後、さらっと帰ろうとしたんだけど、そうは問屋ねえちゃんゆるさない。お姉様は“光が、どんな生活をしているか心配だからお部屋をチェックするね”とおっしゃられたのだ。

 結果、姉ちゃん大激怒。必要な物を買いに行くとなったのです。

 俺はイグジスタで過ごした時間を入れると、三百歳を超える。つまり、良い大人だ……姉ちゃんと一緒にお買い物は、照れ臭いのです。


「シーツなんていらないって。ゴミはコンビニの袋に捨てるし、服は洗濯したらハンガーに干して置けば、そのまま着れるし」

 修行時代は岩場や草むらで寝た事もあった。それに比べたら、スプリングがあるベッドは、正に天国の寝心地なのだ。余りの快適さに魔王城にキングサイズベッドを送ってしまいました。


「あんなだらしない生活を許せる訳ないでしょ!あら、このくまさん柄のシーツ可愛いわね」

 姉ちゃんが手に取ったのは、くまがプリントされたシーツ。そう、熊じゃなくくまだ。こんなシーツで寝たらファンシー過ぎて、憤死してしまう。


「姉ちゃん、せめて無地にして。俺には魔王としての立場があるんだよ」

 こんな可愛いシーツで寝ているのがバレたら、他国への睨みが効かなくなる。


『ヒカル―、アイリーン様から伝言“アルモニーも寝ているところ見たいっ言っているから、くまさんシーツを買いなさい”だって。それとお二人からユウさんに伝言“ヒカルをよろしくお願いいたします”だって』

 なんとかくまさんシーツ購入を阻止しようとしたら、ペルルからキラーパスならぬキラーテレパスが飛んできた。

 アイリーン様はイグジスタの精霊神で、俺に魔法を教えてくれた方。そしてアルモニー様はイグジスタの主神で、大恩のあるお方だ。

 早い話が、どちらにも逆らえません。

(どこからお二方に漏れた?アイリーン様とペルルは繋がっている。それで俺とペルルも繋がっている……行動筒抜けじゃねーか)

 ちなみに姉ちゃんもペルルとテレパシーで会話できる様になったので、邪魔出来ないし誤魔化しも効かない。


「神様に心配掛けるって……本当にこの子は!ほら、ボディソープとかも買うんだから、早くしなさい」

 姉ちゃんはそう言うと、俺の手を掴んで歩き出した。いや、昔はこうして手を引いてもらっていたけどさ。


「姉ちゃん、自分で歩くから……うん?シャッター音?」

 そこにいたのは、ニヤニヤしながらスマホを構えるペルル……もしかして、この流れは!


『ペルルッ!それ、どうするつもりだっ!』

 わざわざ、姿を消して撮影しやがって。


『私はアイリーン様とアルモニー様からヒカルの監視を依頼されているの。だって、ヒカルばれなきゃお姉さんに黙って帰るつもりだったでしょ』

 ぐうの音も出ない事実です。ここで反論したら、姉ちゃんにチクられてしまう。


『分かった。お二方の間だけで、終わる様に頼んでもらえるか?』

 配下いや国民にだけは絶対に見られてはいけない。そんな事になったら、威厳が木っ端みじんに砕け散ってしまう。


 嫌な夢を見た。魔王城新聞の一面に、くまさんシーツで寝ている所と姉ちゃんに手を引っ張られている写真が掲載されていたのだ。

 お陰でシーツは汗でびっしょり……早速、変えのシーツが役に立ちました。


「光君、起きてる?もう少しでみんな集まるよ」

 眠気覚ましにコーヒーを飲んでいたら、田中君が声を掛けてきた。ちなみに使ったのは、キリンさんのマグカップです。

 そう、今日はみんなに魔法を教える日なのだ。姉ちゃんとの協議の結果、外国で魔法を習ったって事にする事になった。胡散臭いが催眠魔法を使えば、疑われずに済む。


「それじゃ、これから魔法教室を始めますよ。でも、バレたらまずいので結界を張ります」

 魔法の壁が俺達を取り囲む。効果は空間遮断。これで外から見えないし、音も漏れる事はない。


「結界って、こんなに簡単に張れるのか?呪文も何も唱えていなかったけど」

 家智先輩が壁を叩きながら、首を傾げる。


「俺は自分で魔法が使えるから、無詠唱でも張れたんですよ。基本は力あるなにかと契約しなきゃ、使えませんから」

 俺も最初から魔法が使えた訳じゃない。アルモニー様やアイリーン様、その他色んな方々と契約してここまで使える様になったのだ。


「光君、力ある何かって悪魔とか?代償に命を取られるとかないよね?」

 悪魔か……俺の部下にも地域によっては、悪魔として扱われている奴もいる。悪魔かどうかの線引きなんて、人間の都合だけだ。


「契約だけで、命を取られる事はないよ。命を取れるとしたら、重大な規約違反があった場合さ。例えば許し難い犯罪に使ったとか、魔法で契約相手の身内や仲間を攻撃したとか」

 だから強い力を持った存在ほど、契約内容が複雑になりやすい。俺の契約書だって、三十ページは超えている。


「えーと、あたしも聞いて良いかな?魔法って、その都度許可をもらう物じゃないのか?」

 前田さんが遠慮がちに質問してきた。確かに漫画とかだと、その都度許可をもらっていたりする。


「それだと力を貸す側は、二十四時間待機していなきゃいけなくりますよね?魔法の許可は自動販売機みたいなものだと思って下さい」

 寝てる時やトイレに入っている時に力を貸してくれって言われたら、力を貸す方が参ってしまう。


「呪文が商品名で、魔力がお金変わりって事ですか?」

 流石はお姉様、ご明察です。そしてそのまま他人の振りを続けて下さい。


「そうです。契約すると、どんな魔法を使える様になるか提示されます。ですので、どの魔法使うか念じながら呪文を問えれば、魔力が自動的に回収されるんですよ。ちなみに、呪文はスタパやドトルの注文と似てまいすよ。それを予め、登録しておくんです」

 ちなみに魔力は一人一人味が違う。チョコの様に甘いの魔力もあれば、とんこつ味の魔力もある。

 当然、俺等契約する側にも好みの味があるのだ。嫌い魔力の奴と、好き好んで契約する奴はいない。


「コーヒーMサイズ、砂糖多めとかそんな感じか?巨大な火の弾とかを、頭の中でイメージするのかと思ったよ」

 この場合、コーヒーが属性でサイズが攻撃力となる。そして、オプションで、細かな設定を決めるのだ。こうしておかないとトラブルの素になるのだ。


「巨大って言っても。人によってイメージする大きさが違うんですよ。少ない魔力で、大きい効果を求められても困りますし」

 それに一人一人に合わせていたら、それこそトラブルになってしまう。同じ呪文なのに、あいつの炎の方が大きいってクレームがきたりする。ラーメン屋じゃないけど、常連さんにサービスしたくなるのが、人の常だ。

 それに同じ大きさでも、他人の方が大きく見ているだけって時もある。


「1mの炎みたいに具体的な大きさにしたら駄目なの?」

 田中君が言った様に、具体的な内容大きさを提示してくる奴もいた。


「ほら、紙に五百円硬貨の大きさを書かせると、人によって大きさが違うって言うだろ。五百円を高いと感じれば大きくなって、安く思えば小さく書くってやつ。それと一緒で1mの火の弾って言っても、人によって連想する大きさがまちまちなんだ。それに弾の部分の直径が1mなのか、炎の先端まで含めて1mにするのかと、面倒になるんだよ。これ昨日作っておいた呪文の一覧。好きなのを一つ選んで」

 火炎属性や大地属性はまだ良い。風属性なんて、どこからどこまでで1mなのか目視じゃ分かりににくいし。

(さて、姉ちゃんは俺と契約しけど、他の人はどうするかな?今年入った新人と組ませるか)

 新人にも良い経験になるし、そうしよう。


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