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魔王と姉

更新が遅れて申し訳ありません。それと活動報告にお知らせがあります

 さて、どうする。問題はなんでおとうとだと気付いたかだ。姉ちゃんは証拠を出していないが、確信を得る何かを掴んだんだと思う。

(田中君と家智先輩には気付かれていない……結界を張るか)

効果は遮断と時間停止。上手く誤魔化せれば良いんだけど……


「あの誰かと勘違いしていませんか?」

 初めての交渉を成功させる秘訣は、相手からどれだけ多くの情報を引き出せるかに掛かっている。ここは姉ちゃんが、なんで俺だと思ったのかを聞きだそう。


「光には、階段を登る時につま先だけで登る癖あるの。それと手の甲にある黒子も同じ」

 まじ、知らんかった……だから俺が階段を登る所や手の甲をチェックしたのか。ここは力業で押し切ろう。


「偶然の一致ではないでしょうか?私は桃園光ではなく、百苑光ですよ」

 顔の表情を変えずに返答する。これ位の腹芸は朝飯前だ。


「その名前が貴方に興味をもった切っ掛けよ。行方不明の弟と、同じ名前なんだもの。合ってみたら、青森のおじさんと似ていた。そこから観察していたら、癖や特徴がひかると同じ」

 青森のおじさん、つまり父さんの弟だ。そりゃ似てるよね。全く違う名前を名乗るべきだった。


「それで分かったと言うんですか?推測の域を出ていませんよ」

 でも認める訳にはいかない。姉ちゃんは、Sランクホーパーの姉ちゃんには黒幕の監視が付いている筈。


「……分かるわよ。私は光のお姉ちゃんなのよ。それ、たった二人の姉弟だもん。……光、なんでお姉ちゃんって言ってくれないの?みんな心配したのよ!お父さんとお母さんが……私がどれだけ心配したか分かっているの!」

 姉ちゃんは、俺の目を見ながら泣き始めた。大粒の涙を零しながらも、じっと俺を見つめている。

 罪悪感が半端ないが、黒幕の正体が掴めていないから、白を切るしかない。


「はい、ちょっとストップ……これで良しと。ヒカルのお姉さんですね。弟さんに何があったのか、私がお伝えします」

どうしようか悩んでいたら、ペルルが飛び出してきて、姉ちゃんに経緯を伝えた。


「おい、ペルル!まだ黒幕が何を企んでいるか、分からないんだぞ」

 高ランクホーバーとはいえ、姉ちゃんは戦闘の素人だ。強力な魔物には勝てないだろう。

 ペルルを咎めようとしたら、誰かに袖を引っ張られた。そこにいたのは、怒り心頭のお姉様。


「ひーかーるー!魔王ってなによ。そこに座りなさい!」

 どうやらお姉様は俺の武勇伝を聞いてお怒りになったらしい。まあ、実の弟は異世界で死闘を繰り広げていたって、聞けば心配するのも無理はない。

こうなったら、出来る事は一つだけだ。


「姉ちゃん、分かった。分かったから……今、座るから落ち着いて」

 これ以上お姉様の怒りを増大させたら、まずい。

姉ちゃんは優しい。その分、怒らせたら怖いのだ。

謝らなきゃいけない時は、直ぐに謝る、これも為政者の鉄則である。


「行方不明の弟が“異世界で魔王になってました”なんて聞いて落ち着けると思う?本当にこの子は……光、お座りっ!」

 俺、魔王様だぞ。ドラゴンやヴァンパイアだって、俺に頭を下げてくる。

 そう、俺には魔王としてのプライドがある。


「お姉ちゃん、ごめんなさい」

 床に正座して頭を下げる。いくら魔王様でも、泣いている実姉には、敵いません。それとペルルさん、珍しいからって謝っている俺の写メを撮らない様に。


「光、帰って来てくれてありがとう。お帰りなさい」

 姉ちゃんは、そう言うと涙を流しながら俺を抱きしめてくれた。暖かな温もりがじんわりと伝わってくる……やばい、泣きそうだ。


「……姉ちゃんの魔力が弱くなった?おい、ペルル何をした」

 さっきから、姉ちゃんの魔力がどんどん減っていっている。


「お姉さんと繋がっていた魔力バイパスを遮断したのよ。魔力を供給する代わりに負の感情を吸い上げていたわ。ついでに、魔物を倒すと脳内麻薬が出る様にもなっていたわ」

 脳内麻薬……だから冒険者学校の生徒は、デパートに残っていた魔物を狂った様に倒していたのか。

 でも、なんで負の感情なんだ?ホープって希望の力の筈。負の感情を吸う事で、希望に満ち溢れた戦士にするって言うのか?


「でも、遮断したら怪しまれないか?姉ちゃ……姉も弱体化してしまうし」

 流石にペルル相手に姉ちゃんと言うのは、照れがある。

 姉ちゃんの頭部に目を凝らしてみると、魔力で作られた細い線が出ていた。何重にも隠蔽魔法が掛けられており、注視しないと分からないレベルだ。しかも、何か所もチェックポイントがあり、下手に探れば黒幕に勘付かれると思う。


「バイパスとお姉さんの間に薄い魔力タンクを作ったから大丈夫よ。供給された魔力を、負のエネルギーに変換してあるし……魔力なら光と契約すれば良いでしょ」

 確かに身内だから相性も良い。良いけど、実の姉相手に契約の儀式をするのは、照れ臭い。


「光、私父さんや母さん、みんなを守りたいの。だから、お姉ちゃんに力を貸してくれるよね。こういうのって、何かを捧げなきゃ駄目なの?」

 俺クラスと本契約するには、国宝レベルの宝物が必要になる。


「姉ちゃんからはお菓子やおかずをもらっているから、それで大丈夫だよ……我が名はヒカル。魔族を統べし、王なり。汝の願いを聞き入れ、契約を受け入れよう」

 姉ちゃんの頭に手を入れ、魔力を流し込んでいく。ついでに体内にあった黒幕の物と思われる魔力も駆逐していく。


「凄い力……光、今日は家に泊まるでしょ?お姉ちゃんがオムライス作ってあげる。久し振りに膝枕もしてあげるね」

 確かに昔の俺は甘えん坊だった。しかし、そんな俺も今は魔王である。姉に膝枕なんてしてもらったら、沽券に関わるのだ。


「この事件の黒幕が分かるまで、家には帰らない。パパとマ……父さんと母さんを人質に取られたら、アウトだし」

 危うくパパとママと言いそうになった。姉ちゃんと話していると家の感覚になってしまう。気をつけよう。

 姉ちゃんのオムライスは食べたいが、断腸の思いで断るのだ。人質ならまだ良い、殺してアンデッドとして使役される危険性もある……それとペルルさん、今撮っている動画は削除して下さい。


「光、あんなに強いんだから、父さんや母さんを守れるでしょ?昔みたくオムライスにくまさんを書いてあげるよ」

 それで喜んでいたのは小学生までです。それとペルル、笑いたいなら笑え。涙を零しながら笑いを堪えてんじゃない。


「いくら俺でも二十四時間、家族を護衛するっていうのは現実的じゃないよ。それにそうなると、ご近所さんや親戚も守らなきゃいけなくなる可能性が出てくる“自分は良いけど、まだ小さいこの子だけは助け下さい”ってね」

 部下を召喚出来れば良いけど、マナが足りない。何より敵の魔族と同一視される危険性がある。


「それじゃ早く魔物を倒せば良いんじゃないの。お姉ちゃんも手伝うから、ここのボスを倒しにいきましょう」

 ボスか。瞬殺出来る自信はある。でも、問題はその後だ。


「姉ちゃん,Sランクの権限で他の地域の情報を手に入れられない?」

 Fランクだと制限があり過ぎて、手に入れる情報が少ないのだ。


「良いけど、どんな情報?」

 姉ちゃんは俺と会えたのが、よほど嬉しいのか話を聞きながら俺の頭を撫でている。

 お姉様、魔王の威厳が木端微塵に砕けてしまいます。


「他にボスを倒した地域がないか?そして倒した結果どうなったかだよ」

 戦闘経験のない姉ちゃんでも、ホープの力でオークを倒せたんだ。元から強い奴がいたら、倒していてもおかしくない。


「倒したら、平和になるんじゃないの?政府の偉い人も、そう言ってたし」

 ゲームならそうかも知れないけど、これは現実だ。


「俺が黒幕なら、そんな危険な奴は放って置かない。周囲にある戦力をかき集めて、還付なきまでに叩き潰す。城にいるボスを倒したら隣接している区から魔物が攻めてくる危険性がある。もし、平和になっても他の地域から、人が大勢引っ越してくると思う」

 そうなるとアウトだ。安全を求める時、人は恐ろしい程身勝手になる。うちの地域の魔物を倒せとデモを起こすかも知れない。


「ごめん、お姉ちゃんの端末からも見れない……それじゃ、どうすれば良いの?」

 そりゃ、そうだ。不都合な事実を隠蔽するのは政治の常套手段。何より悪戯に不安を煽るのは得策じゃない。


「信頼のおける仲間を増やして戦力強化。戦い方は俺が教えるよ」

 魔王様は指導の経験もあるのです。


「それじゃ輝夕ちゃんね。それと光、髪と髭を切りなさい。ほらっ、シャツがはみ出ている。もう、手が掛かるんだから」

 弟は姉に逆らえない。絶対に髭は死守してやる!


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