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魔王様の魔法教室?

 魔王様、困惑中。オシーリや知恵お袋に相談したら、ベストアンサーがもらえないかな。


「俺の妹が難しい病気でな。ホーバーの家族は優先的に最高水準の治療を受けれるんだ。それにランクが上がれば、治療費も出してもらえる……百苑君、俺を連れて行ってくれ」

 家智先輩はそう言うと、俺に頭を下げてきた。昨日会ったばっかりの年下の俺にだ。

 しかし、ホーバーシステムってのは、知れば知る程、胸糞が悪くなってくる。

 言いかえれば作った連中もなりふり構ってられない位、必死だったって事か。十代の少年少女だけが頼みの綱なんて漫画じゃないんだから。


「光君、僕を強くして。このままじゃ、輝夕ちゃんがどんどん遠ざかっていく。気持ちを伝える事も出来ないなんて嫌なんだ」

 おじさん、こういう一途な思いに弱いんだよね。前田さんは翼ちゃんと同じく正義のパーティーにいるそうだ。

 そして正義のパーティーメンバーは、高ランクの女子だけとの事。その為、ハーレムパーティーと揶揄されているそうだ。イケメンの上、勇者なんて聞こえのいいジョブを持っているから、物凄くモテているらしい。

 ……幼馴染みなのに、どこで差がついたんだ?俺はなんちゃってじゃなく、リアル魔王なんだぞ……魔王様、大変遺憾です。


「でも二階にいるのは、トロルだぞ。あいつ等、近接戦に強いんだぜ。二人共、魔法って使えるの?」

 トロルに力はゴリラと同じ位だと言う。ゲームだと頭が悪いって扱いだけど、決してそんな事はない。言語コミュニケーションが可能だし、在野のトロルでも簡単な武器や道具を自分達で作っている。分かりやすく言えば、縄文人レベルの文化を持つゴリラ。

 皮膚も分厚く筋肉もあるので、生半可な攻撃は効かない。

そして俺の国にもトロルが住んでいる。幼少期から教育を受けたトロルの知能は、猿人と比べても遜色がない。

 そしてデパートにいるトロルはきっと戦い馴れしている筈。小賢しい罠は通用しないと思う。


「恥ずかしい話だけど、一つも使えないんだ」

 家智先輩はそういうと申し訳なさそうに頭を下げた。でも、先輩のジョブはファーストウィザードだったはず……そういやFランクだとスキルがないって言ってたもんな。


「仕方ないですよ。Fランクにはマジックペーパーが支給されませんし」

 すかさず田中君がフォローをする。

マジックペーパー?なに、それ?簡易の召喚陣が書かれた紙なんだろうか?

 俺は魔王だから魔法に関する知識が豊富だ。どや顔で魔法に関する知識を披露したい所だけど、二人共俺が魔法を使える事を知らない。

 ここは何も知らない振りをして尋ねる事にしよう。


「あのマジックペーパーってなに?」

 魔王様。それなりに魔法に関する知識があるけどマジックペーパーは知りません。

 俺の知らない間に新しいマジックアイテムが発売されたんだろうか?最近若い魔族の流行についていけていなし。


「それを使うと魔法を覚えれるんだよ。一枚に付き、一個覚えれるんだって。高ランクホーバーには、無償で提供されるんだけど、低ランクのホーバーは自分で買わなきゃ駄目なんだ」

 まあ、日本できちんと魔法を教えれる人間はいないと思う。必然的に値段は上がるはず。

 でも、そのマジックペーパーを見ていたい。多分、スクロールや魔導書の一種だと思う。

でも、どっちも中級以上の魔法を覚える時に使うマジックアイテムだ。そんな魔法を使える奴がいるなら、とっくにオークを倒せている筈。


「ちなみにいくらするの?」

 魔王様魔法教室を開けば、一儲け出来るかもしれない。でも魔王って言えないから、低ランクホーバー魔法教室でなきゃ駄目か……絶対に流行らないな。


「一番安いファイヤーボールで二十万円。高いのになると天井しらずさ……バイト代は妹の治療費に回しているし、困っているんだ」

 高っ!異世界貿易で関税が掛かるんだろうか?それにファイヤーボールなんて、低級魔族や下級神族と契約をすれば特典で覚えられる魔法だぞ。

 わざわざマジックアイテムにする必要はないと思うんだけど。

 一応、マジックペーパーはポイントと交換する事も出来るそうだ。その所為かマジックペーパーは、高ランクホーバーが独占しているとの事。

 もしかして茶良達がかつあげをしていたのは、マジックペーパーや高性能の装備を買う為だったのか?

 ホーバーシステムは短期間で作られた割には、随分としっかりした制度だ。とても日本人だけで作ったとは思えない。

やっぱり、黒幕の存在が感じられる。尻尾の先っちょでも掴むまで、派手に動かない方が良いと思う。


(新兵を教育する感じでいくか。それなら、あれを使うか。コスト掛からないし)

 魔王になる前は兵を率いて、戦っていた事もある。新兵の教育や身近な物を武器にして戦う事には慣れている。


 魔王様の心得その7 コネと回復薬は惜しまず、使いましょう。

やって来たのは校長室。市華校長なら一枚くらいマジックペーパーを持っている筈。


「マジックペーパーを見たい?君になら強力なマジックペーパーをあげても良いんだけども、本当に見るだけで良いのか?」

 そう言うと市華校長は金庫から一枚の紙を取り出してきた。

俺は魔法を覚えたい訳じゃない。マジックペーパーの正体を知りたいだけだ。見せてもらったのはファイヤーボールのマジックペーパー。


「ええ、魔法を上手く使えるか分かりませんので……これがマジックペーパーですか!?」 

見た結果は、ぼったくりとしか言い様がない。A4の紙にびっちりと呪文が書かれているのだが、殆んどが無意味な物ばかりで、これでは無駄に魔力を消費してしまう。

しかもこの内容で二十万も取るのか。俺でも作れるぞ……でも、俺がマジックペーパーを作るのは止めた方が良いと思う。

金庫から取り出したって事は、マジックペーパーがかなりの貴重品という事だ。言い換えれば高級品。利権が絡みまくっている筈。

ここはコスパも良く強力なマジックアイテムを使って、茶良達に勝ってやろう。


 魔王様の今日から始められるマジックアイテム作製教室の開校なのです。

 使う材料は、その辺で拾ってきた石ころのみ。石に魔力を浴びさせると、あら不思議、簡易の魔石に変化するのです。

磁石をくっつけて磁化させた鉄と一緒で時間がたつと、元の石に戻ってしまうので注意して下さい。


「二人共、自分の魔力の存在を感じられている?」

 これが出来なきゃ、お話にならない。いざとなったら健康に害のない程度の魔力を、浴びさせるだけだ。


「僕も家智先輩も、全校訓練で感じられる様になったけど……まさか光君が魔法を教えてくれるの?」

 教えてすぐ使えるなら、魔法学校の先生や魔術師協会の立場がありません。でも、二人には実戦で戦えるレベルになってもらう必要がある訳で。


「魔法を使うには、魔法を体感してもらうのが一番なんだ」

 自転車の乗れない奴に、理屈で説明しても無駄である。でも一回乗れば嘘の様にスイスイ乗れる様になる。

 だから簡易魔石を使う事で魔法を体感してもらうのだ。


「それじゃ、この石に魔力を籠めて巻き藁に投げつけみてて下さい。その際、巻き藁を砕くとか、切り裂くとか具体的にイメージして下さいね」

 魔法で必要なのはイメージだ。でも化学万能な世界で育った日本人が火の弾が飛んで行く姿をリアルに思い浮かべるのは難しい。高速飛んだら風圧で消えるんじゃないかと、色々と考えてしまうのだ。

 ちなみにマジックペーパーは、その辺を魔力でカバーする様になっていた。

一見便利そうだが、あれじゃいつまで経っても魔法の腕は上がらない。マジックペーパーに定められた動きしか出来ずに、依存してしまうだろう。

しかし、簡易魔石を使うと魔法の動きを疑似的に体感できる。魔法を教えるのは、その後だ。


「石が巻き藁を切り裂いた?」

 家智先輩が投げた石は巻き藁を真っ二つに切り裂いた。


「現場では俺がトロルの動きを止めて、二人にとどめをさしてもらいます……これだけは覚えておいて下さい……戦いには卑怯も恰好悪いもない。あるのは生きるか、死ぬかだけだ。名誉ある戦死は、生者の利権にしかならない。どんな手を使ってでも、生き残った奴が勝者だ。床にかじりついて、泥水をすすってでも帰って来い」

 ジョウ師匠から教えられた言葉で、戦場に部下を送り出す際に掛ける言葉。

 田中君や家智先輩……茶良や緒高も俺からみたら餓鬼だ。出来たら死なせたくない。


 魔王様、お城帰りたい。どこから聞きつけたのか、前田さんと姉ちゃんが同行する事になったのだ。


「サネ!何でこんな無茶をするんだ……おじさんやおばさんも心配するとだろ」

 ショートカットの少女が田中君に詰め寄っていった。田中君の幼馴染み、前田輝夕さんである。ボーイッシュな美少女で、宝塚の男役がつとまると思う。

その顔からは田中君の事を、本気で心配しているのが分かった。


「輝夕ちゃん、素直に心配だって言って良いと思うよ」

 割って入ってきたのは、俺の姉桃園優。

姉ちゃん、少し空気を読もうね。前田さんの顔が真っ赤だよ。


「ゆ、ゆうしゃん、にゃにを言ってるんですか。自分はサネに何かわったら、おじさんやおばさんが悲しむと思ってだけです……そりゃ、自分も心配ですけど」

 かみかみの前田さん、それを見て顔を赤くする田中君。この甘い空気はなんでしょう。


「……、君どこかで会った事ない?なにか凄く懐かしい感じがするんだけどな?」

 姉ちゃんが上目遣いで覗き込んできた……怪しまれている?


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