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無茶振りの連続?

デパートで戦った翌日、学校へ行くと速攻呼び出しをくらった。しかも俺を呼んだのは校長先生らしい。

名前は市華いちか野花のばな、年は二十三。スーツが似合う知的な美人だ。何故二十代前半の彼女が校長をしているのか……答えは簡単、彼女の親が元々あった学校の理事長との事。以上田中君の受け売りです。


「百苑光君だね。昨日の活躍は聞いたよ。一階と四階のボスの撃退、高ランクホーバーである緒高パーティーの救出。素晴らしい活躍で、学校の代表として嬉しい限りです……ただ、ちょっと面倒な事になっていてね」

 中々やるな。それが素直な感想だ。まず手放しで褒めておいてから、交渉に入る。

 こうすると多少無茶振りしても、恨まれにくい。

特に名誉を重んじる騎士に有効で“お前だから頼むんだ”とか“お前なら分かってくれるよな”等付け加えるとさらに効果が上がる。


「低ランクホーバーがポイントを稼ぎまくったのが、まずいんですね」

 恐らく政府か役所からクレームが来たんだろう。俺はホーバーシステムの異端児だ。ぽっと出の異端児が大活躍して叩かれる。どこの世界でも、良くある話だ。


「……私として非常に遺憾で腹立たしい事なんだ。今朝、ホーバー関係の担当省庁から通知があったの。“百苑光の活躍は眉唾物で、信じるに値しない、故に無効とする”だそうだ……自分は安全な所にいる癖に、好き勝手に命令してくる。あいつ等は何様なんだ。」

市華校長は形の良い眉毛を八の字にして怒っていた……まだ若いな。まあ、日本にいた頃の俺なら怒っていたと思う。


「あちらさんの言い分は“低ランクのホーバーに、自分も戦果を上げれると勘違いさせない為”でしょうね。ところで無効にすると言ってきたのは、ホーバーシステムを作ったグループの一人……その中でも末端のお役人さんですか?」

 低ランクのホーバーは意図的に差別されている。でも見方を変えれば、そのお陰で戦わずに済んでいるのだ。つまり戦いを知らない。中には勘違いする奴もいるだろう。

 ……役人って本、当にこういう理由付けをするのが上手いよな。


「ああ、ホーバーシステムを作ったグループの中では一番の小物だ。それでも我々こそ、人類の救世主だと威張っているいがな」

 それはありがたい。その手のタイプなら、上手く利用出来ると思う。


「役人は自分達が作った法令やシステムを覆されえるのを、凄く嫌うんですよ。正確に言うと自分達の成果ポイント稼ぎを邪魔されるのを嫌うんです」

 高ランクホーバーの人気は凄まじく、中にはファンクラブを持っている人やグッズや写真集を出している人もいるらしい。

また高ランクホーバーが所属している冒険者学校の中には“この子達がいれば安心です”とか“町の平和は、当学園のホーバーが守ります”と宣伝している所も少なくないそうだ。ついでに寄付金集めをしているとの事。

つまりホーバーシステムの裏では大金が動いているのだ。

 そしてホーバーシステムを作ったグループの人間には、それなりの袖のわいろが届いている筈。

  そいつ等にしてみれば、低ランクで活躍する俺は異質な邪魔者でしかない……まあ、魔王って時点で十分異質なんだけど。


「随分と物分かりが良いというか、大人びた考え方だな……つまり、百苑君は、昨日稼いだポイントが無くなっても構わないんだね」

 一瞬だけ、校長が安堵の表情を浮かべた。恐らく、かなりのプレッシャーを掛けられたのだろう。

 それと反省である。今の俺は高校一年生だ。髭が生えていようが、老けていようが高校一年生である。


「ポイントはまた稼げば良いですし、もしあれなら俺のポイントは少なめに報告しても構いませんよ。その人達にばれずに。ポイントを少なく報告出来る方法なんてないですよね」

 むしろ、そうして欲しい。あまり目立って身元調査をされたら、困る。百苑光なんて人間が存在しないのだから。


「学校で貸与した携帯端末を貸してもらえるかな?……本来、これは懲罰用の設定なんだけどね……これで君のポイントは十分の一になる。でも、私個人は君の味方だと言う事を忘れないでくれ」

 俺はFランクだ。前線に出る機会は少ないだろう。校長室を出ると、同時にペペルが話し掛けてきた。


「ヒカル良いの?あれじゃ働き損だよ」

 むしろ俺的にはありがたい流れなんだが。


「日本にホーバーを紹介したっていう妖精に、俺の事を知られたくないんだよ」

 一回なら計測ミスで誤魔化せるが、Fランクが何回も高ポイント稼いだら妖精の耳に入ってしまう。


「でも、その子は魔物を倒す術を教えてくれたんでしょ?何を警戒しているの?」

 職業まおう病だろうか。小さな石ころも、きちんと片付けないと気が済まないのだ。ちなみに俺は勇者を最初から全力叩くタイプだ。

魔王の心得その四 火事と勇者は、弱いうちに消しましょう。


「気になる点は二つ。一つはその妖精が日本語話したって事。お前は俺と契約しているから、日本語が分かるんだぜ」

 でも、その妖精が日本にきて直ぐに日本語を話していたそうだ。


「そういえば、ヒカルも最初は言語スキルを使ってたんもんね。言語スキルは、スキルを授ける人が、その言語を知ってないと無理だしね」

 当たり前だけど、向こうで日本語通じない。一体その妖精はどこで日本語を覚えたんだろう?


「そしてもう一つは、その妖精はどこで日本の政治家を知ったかだ。ただの政治家じゃない。そいつは初見の妖精の申し出にくいついてきた。都合が良すぎる位、おあつらえ向きの人材と会ってるんだよ」

 いくら魔物が出たなんて非常時でも、いきなり現れた妖精の言葉を信じる政治家なんてそうはいない。何よりそれなりの実力者じゃなきゃ、この短期間でホーバーシステムや冒険者学校を作れないと思う。


 魔王様、大いに反省するの巻。教室で授業の準備をしていたら、ドアが乱暴に開け放たれた。入って来たの茶良と愉快な仲間達……プレハブ小屋の戸って、立て付けが悪くなりやすいんだぞ。


「茶良さん、いましたよ。俺達を電柱に括り付けて、いなくなった奴です」

 普段の行いが悪いのか、入学二日目にして茶良達に見つかってしまいました。

 でも、なんでこんなに早く見つかったんだ?


「ヒカル、髭剃った方が良いよ。学校じゃ目立ち過ぎだって」

 俺の考えを読んだのか、ペルルが突っ込んでくれた。髭面の大男。しかも転校生で、初日でボス二体撃破……目立たない方がおかしいか。


「お前……あの後、大変だったんだぞ。トイレに行けなくて漏らすし、お姉ちゃんに怒られるし」

 そのつっぱった格好で、お姉ちゃんがい……ちょっと待て、もし姉ちゃんに正体がバレたら、なんて呼べば良いんだ?

 魔王様おれが姉ちゃんなんて言葉を使ったら、部下に笑われてしまう。


「カツアゲしようとしたお前が悪いんだろ?警察に突き出さなかっただけ、ありがたいと思え。それにお前等の好感度が高けりゃ、誰か助けてくれたと思うぞ」

 こいつ等の態度からすると、学校にはかなりの苦情が来ていると思う。先生や大人が注意しても、お前等は戦っていないだろと聞く耳を持たなそうだ。


「う、うるさい!勝負だ。百苑光、俺達と勝負しろ!」

 彼には学習能力がないのだろうか。前回はかなり手加減したんだぞ。


「良いぜ。特別に自慢の得物を使ってやるから、感謝しろ」

 威嚇の為、拳を鳴らしながら近づいていく。


「ち、違う。パーティー戦だ。デパートの二階で、どっちのパーティーがより多くのポイントを稼げるか勝負だ」

 パーティーでポイント?俺はボッチだし、ポイント十分の一だぞ。

 何よりあの魔窟トロルじごくには行きたくない。


「パーティーを組んでないから、俺一人で挑戦して良いか?」

 魔法を使えば、近付かなないで倒せるし……その前に、こいつ等トロルと戦った事あるのか?あいつ等、近接戦強いんだぞ。


「Fランクでパーティーを組め。それでパーティー全員のポイントを足して、人数で割る。良いな!メンバーは家智と田中の二人……あいつ等、低ランクの癖に生意気なんだよ。」

 いや、良くないし。ゴブリンとも戦った事がない奴にトロルと戦っていうのか?

 


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