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作者: 石鍋 盥囘し

大きな蛇がいたのだ。


ほら、どこぞの神話にもヨルムンガルドってのがいるでしょ。


そんなイメージを持ってもらえば概ね正しい。


口を開き、閉じれば大事だったものも、嫌いなものも、そしてなんとも思わないものもすべからく飲み下してしまうのだ。


そして加速度的に、蛇は更に巨大になっていくのだ。


多くの場合、大事なものっていうのがすぐ近くにあるものだから、真っ先に蛇が消化してしまったものは大事なものだった。


そして蛇は、諦めて、その巨躯を呪った。


この蛇の名誉の為に言っておこうかな。


この蛇は、えらかったんだ。


巨大であるということはそれだけたくさんの何かを食べなくちゃならない。


蛇は身近に大事なものがあると知っていたから、他の何かであったならば死んでしまうくらい、口を閉ざし続けていた。


一度ごそりと飲み込んでしまってから、二度目の口を開くことを止めたんだ。


ある日、蛇は我慢が出来ないほどの空腹に、微かに尾をふるった。


その遠大な尾は、わずかばかり動かしたつもりであったけれど、近くにあったような大事だったものも、嫌いなものも、そしてなんとも思わないものもすべからく吹き飛ばしてしまった。


そして嘆き、口を開いた瞬間に、雀の涙ほど残っていた大事なものは、蛇のお腹の中に納まってしまった。


この蛇の名誉も、お腹の中に納まってしまったようだけれど。


蛇は巨躯を呪っていた。そして、このセカイにそぐわないそれを自分に寄越した何者かを憎んだ。


もはや、蛇の周囲には何もなかった。


虚無。その概念と、蛇しかなかった。


失うことすら、もう出来なかった。


たった一度きり、蛇は怨嗟をつむいだ。


その口に、己の尾が飛び込んできた。


痛みに呻くと、更に深くわが身に牙は食い込み、更に更にわが身を飲み込んでいく。


頑丈だった鱗が牙にこそぎ落とされきらきらと舞った。


蛇は、苦痛の限界を超えたからなのか、蛇のあぎとの毒のせいなのか、だんだんと痛みを覚えなくなってきた。


しばらくすると、ただ、ぼんやりと空腹を覚えていた。


次の一口で舞っていた鱗をすべて飲み込んだ。


加速度的に体が膨らんでいっては、同時に蛇はそれを上回らん勢いで己を喰らった。


蛇は……もとい、 それ は一つの固まりとなっていた。


膨張と収縮を延々と繰り返す不定形の固まり。


その おなか の中には虚無を除いたすべてがあった。


それはつまり 蛇 を 生み出した もの だった。


蛇以外を 生み出す もの だった。


んま、これ以上でもこれ以下でも、ないのです汗


ありがとうございました

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