8.
「(いよいよ、本降りになってきたにゃー)」
私は近くにある神社で雨宿りをしていた。
縁の下には私以外にもたくさんの猫がいた。
身体を寄せ合うようにしているが、その毛並みは汚い。
きっと捨て猫なんだろうな。
そう思うとすこし心が痛んだ。
雨脚は強くなる一方だった。
縁の下は吹き抜けになっているから、雨は当たらないけど、風が冷たい。
そうして身を縮こまらせていると、人影が現れた。
それも見覚えのある、人影が。
「今日は雨天中止で、近くの体育館でウエイトだったわー」
そう傘を差しやってきたのは太一だった。
なんでと思う半面、私はうれしくて、つい飛び出してしまった。
雨に打たれながら彼の足元にすり寄ってみる。
「にゃーご」
なんだコイツ、人懐っこいな。
彼は私を抱き上げて笑った。
学校でみせる、あの屈託のない笑顔だった。
「にゃー」
「もしかしてお前、里帆の家の猫じゃねーのか?」
彼は私の首輪を確認してうなずくと、
「ちょっと待ってろ。こいつらに餌あげたら、家に連れてってやるから」
太一はスクールバッグからキャットフードを取り出して、縁の下にばらまいた。
その背中はすごくたくましくて、なぜかカッコよくみえた。