5.
「ん、にゃ」
目覚まし用のアラームがけたたましい咆哮を上げている。
私はうーんと手足を伸ばす。
前腕が厚い毛皮に覆われていた。
「にゃ?」
あわてて二本足で立ち上がる。すぐに転倒してしまった。
バランス感覚を保つのが非常に難しいのだ。
今度は四つん這いで立ってみる。それはうまくいった。目線がすごく低い。
「にゃ、にゅぃ、にゅ」
あいうえおの発声練習。あいうでやめた。
ていうか、なにこれ。
もしかしてこの身体はマロンなんじゃ?
もぞもぞとベッドの布団の上を移動する。
トランポリンのように地面が沈んだ。
「(え、なんで?)」
私はそうすやすやと寝息を立てている少女を見て言葉を失った。
ベッドで眠っているのは間違いなく私。里帆だった!
私が私を見て私だと言うのだから、私で間違いない。
もしかして。
「(私たち身体が入れ替わってる!?)」
でも、この身体じゃ助けを呼べるわけがないし。
「にゃーご!」
マロンはそう私の身体で起き上がった。
四つん這いの姿勢で体毛を逆立てる。(もちろん体毛はないし、寝間着だけど)
ぺろぺろと手のひらや手の甲をなめて、リビングへと移動していくマロン。
うわー、手にごみつくからやめてよ。
私はマロンを追従しながら思った。