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4.
その日は空腹で何度も目が覚めた。
もう真夜中だ。
こんな時間に食べたら、それこそ太ってしまう。
私はそう不機嫌になりながらも、リビングへと向かう。
キッチンに置いてある今晩のおかずが目に飛び込んできた。
誘惑に負けたらダメだぞ、私。
自分を叱咤しながら、お茶を一口飲む。
それは驚くほど簡単に、空っぽの胃へと吸い込まれていった。
ぐるると獣の威嚇じみた音が、お腹から出た。
リビングの電気をつけて、テレビをみる。
光と音の情報媒体が頭の中を素通りしていく。
深夜のひんやりとした空気が私を苦しめた。
「マロンになりたい」
ぽつりと言の葉がもれる。
目の前にはキャットフードがあった。
いやいや、まさか。
ぶんぶんとかぶりを振って、その思考を打ち消そうとする。
「マロンは私とは違って痩せているし、すこしだけなら大丈夫だよ」
私の中の悪魔が、ささやいた。
ぐるると、腹の獣も追い討ちをかける。
「すこしだけなら、平気だよね」
私はそう無味乾燥とした食品に手をつける。
噛まないで、錠剤を飲み込むようにしたため、味はよくわからなかった。