3.
「ただいまー」
牛乳色のビニール袋をドサッと床におろす。
その音を敏感に聞きつけたのか、アメリカンショートヘアーのマロンが足元にすり寄ってきた。
マロンはのどを鳴らして、私がくつを脱ぐのを待っている。
早くごはんくれよ。とでも言わんばかりだ。
「はいはい、ご主人様」
従僕の私はリビングに直行して。
マロンの餌入れにキャットフードを流し込む。
愛猫はさっさとしろと、鼻でつついてきた。
「さてと」
一通り終えたところで、私はそう今日の晩御飯を食卓に並べていく。
マロンはむしゃむしゃと食事をしていた。
ほっけの塩焼き(レトルト食品)。
煮込みハンバーグ(冷凍食品)。
十種のサラダ(コンビニ食品)。
ライス(炊飯器)。
脂肪を消費しやすくするお茶。
シュークリーム(コンビニ食品)。
「うーん」
つい唸ってしまう。
「私って、女子力低いかなー」
そう思うとほとんど食欲もわかず、おかずも全部残した。
お惣菜にラップをかけて流し台に運ぶ。
でもシュークリームだけは食べるか。もったいないし。
そう洋菓子を口につけて、すこし後悔した。
低脂肪牛乳も買ってくるべきだった。
お茶とカスタードクリームじゃ、相性が最悪だ。
今度から気を付けよう。
マロンをちらりと見ると、愛猫は毛づくろいの最中だった。
彼女は美しい矮躯についたごみを熱心になめとっている。
「マロンは悩みがなくていいなー」
そう飽きもせず、愛猫のしなやかな肢体をながめつづけた。
私もマロンになりたい。
彼女はにゃんと鳴いて、どこかへ行ってしまった。