2.
「マジで無理、あんな男!」
「里帆ちゃん、太一くんの話ばっかりだね」
陽代ちゃんはそう肩をすくめる。
引かれてないか心配になりつつも、私は慎重に言葉を選ぶ。
「だってデリカシーなくない。女の子に向かって太ってるとか、禁句だよ」
「まあまあ落ち着いて」
そう陽代ちゃんに手を握られた。
つめたい。まるで氷のようだ。
いや、ちがう。陽代ちゃんがつめたいんじゃなくて。
私が熱くなりすぎてたんだ!
そう思うと、背中がぞわりとする。
なにを熱くなっているんだ、私は。
あんな男なんて忘れてしまえばいいのに。
そう胸に手を当ててみる。
呼吸が浅くて、ちょっと息苦しかった。
胸の奥がきゅっと締め付けられるような不思議な感覚だった。
陽代ちゃんとわかれた私は、コンビニエンスストアに向かった。
両親は出張でいないから、今晩のお惣菜を買って。
愛猫のマロンのために、キャットフードも買い物かごに入れる。
ちょっと値段が高いけど、脂肪を消費しやすくするお茶も手に取った。
最後に雑誌の陳列棚を一瞥する。
帯状に伸びた陽光が目に突き刺さる。
ガラス越しには黄金色の景色が広がっていた。
あいつ、部活がんばってるかな?
そんな考えが、頭をよぎった。