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大罪の意味を知れ

二話です。ありがとうございます

「どうして…」


目が覚めたら、周りは白景色のみだった。


ーー起きたようだね。

「アンタ誰だよ。僕は何故ここにいるんだ。」


どこからともなく聞こえた声。姿は見えない。


ーー頭の回転が早いのは結構だけど、君は愚かだ。

「なんだと…!僕は天才だ!愚かではない!」


ーーいや、愚かだね。君は君の野望のために一人の命を殺しかけたんだ。それを愚か以外の何である?

「は…?殺しかけた…って、どういうことだよ。」


僕は誰かを殺めようとした覚えは一切なかった。確かに"アレ"には犠牲は付き物だったが、それは材料などの為に狩ったくらい。人を殺めたことなど無いはずだ。


ーーパラレルワールドって、知ってるかい?

パラレルワールド…?確か、僕のいる世界とは似て非なる世界…。

ーーそう。そのパラレルワールドにいる君を君は殺しかけたんだ。

「なんだと…?」

というか、僕の思ってることが伝わっているのか…?

ーー君があの研究。つまり"不老不死“の研究を進め、世界の規律を乱してくれたおかげで君の世界以外にも影響が出てしまった。


なんとも嘆かわしいことだ、とため息混じりにソイツは言った。思っていることが分かるか否かは特に教える気はないようだ。


「お前…本当に何者だよ。まさかカミサマ、とか言う訳じゃないだろ?」

ーーそうだよ。僕は神だ。万物を統べる者。創造する者。

僕は神なんて信じない。神は僕を救ってはくれなかった。

ーーそれは君が僕に期待しすぎていただけに過ぎない。僕は世界を創り見守るだけの存在。誰かを救ってしまっては見守れないだろう?それに贔屓も出てしまうし。勝手に期待して勝手に絶望したのは君だ。僕にそれを求めるのはよしてくれないか?

「くっ…!」


確かにそうだ。神は人々を救うと思い込んでいたのは自分だ。神本人がそういった訳ではないのに、勝手に期待していた。神というものが人を救う便利道具みたいに勝手に考えていたのは僕たち人だ。

悔しい…。天才であるこの僕がそれに気付かずにいたことが。


ーー……。君は…何も知ろうとしてない。

…は?何言って…。

ーーまあ、死にかけてるもう一人の自分に会って色々気付いてみて。それが君に残された唯一の''│救済(すくい)''なのだから。


意味が分からない、とそう思う寸前に僕の視界は真っ黒に染まった。

神は最後まで僕に姿を見せなかったが、薄れゆく意識の中で悲しそうな顔をする何かが僕を見つめていたような気がした。




「……っかはっ…!」


目覚めた途端、僕は跳ね起きた。

何かとてつもなく悪い夢を見ていた気がする。

神とか言う変態野郎にもう一人の僕を救えとかなんとか…。

……ん?


「ここ…どこ…」


見たことのない物に包まれた空間。正直居心地が悪い。

机や椅子などの使い方はわかるが…ガラス張りの机なんて見たことも無い。脆そうで使いたくはないな。

色のない部屋だ。面白みのない部屋。


ーーやっとお目覚めかい?


神と名乗った奴の声が頭の中で響く。姿は見えない。


「お前…ここは一体どこだ」


どこに向けてるか自分でも分からないが、睨みながら聞いた。


ーーここは、あの子のいる世界のこれから君が住む場所だよ。


神は特に気にした様子もなく静かに答えた。正直ムカつく。


「そいつは今どこにいるんだ」


あの子って一体誰だよ…もう一人の僕ってどんなやつなんだ。

そんな思いを全部確かめるために場所を聞いた。


ーーその前に、君は今この世界の知識を全く持っていない状態なわけだ。だから僕が、特別の特別な特別に君の中に基本的な知識とガイドを埋め込むよ!

「は…?…ぅあ…!!!」


最後ノリノリで言ったの一生恨んでやる…。

そうは思えど、何も考えられないくらいに頭を鋭い痛みが襲う。走馬灯のように知識が僕の中に入り込んでるのが分かる。そしてその痛みに耐え切れず、僕の意識は深い闇の中に落ちていった。



——ただ、愛されたかった。それだけなんだ…——


小さな町はずれの民家に、“ソレ”は生まれた。漆黒の髪に漆黒の瞳。特別珍しいものではなかった。

産まれた証である産声をあげるでもなく、ソレは静かに目を覚ました。産んだ母親はその後間もなくして息を引き取ったそうな。

父親はおらず、民家の主人がその子供を自分の子の様に育てた。すべての混沌の原因とは露知らず…。

 子供は魔法が使えた。炎、水、土。子供特有である暴発や暴走などはせず、出したい時に、出したい量だけを出していた。それは大人には良いように見られなかったらしく、その子どもは五歳にも満たないうちに捨てられた。それは子どもにも伝わっていた。

彼はわかっていた。自分が嫌われている人間で、捨てられたということも。全部わかっていた。けれど彼に家族を責める資格も、出来る権利もなかったことも知っていた。

いつしか彼の中にあるのは決して満たされることのない研究心のみだった。

毎日毎日、ただ勉強して実験する日々。周りに人はいなかった。薬から、危険な毒物まで。森の動物たちから採取したものや、町で売り出されていた奇妙なものまですべて実験材料にした。

そうして、いつしか彼は厄災と呼ばれるようになった…。

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