第二話〜優しさ〜
私は走るのに疲れて立ち止まり座り込んだ。すでに子どもの姿は見えなくなっていた。
お腹が減った…そういえばここ数日何も食べていないことを思い出した。
食べ物を探しに行こうと立ち上がろうとしたが、立ち上がることができない。足に力が入らない…
もう、食べ物なんて探しに行けない…
そっか私はここで死ぬのかな…
別に死んでも構わない…
生きていてもいいことなんてない…
むしろ死んでしまった方がいいのかもしれない…
しかし私はなかなか死ぬことができなかった。お腹が空いてとても苦しいのにいくら待っても死はなかなかやってこない。
その時、奥の道から人間が歩いてくる音が聞こえてきた。
ちょうどいい。人間よ、私を傷つけてくれ。そして私を殺してくれ。
そういえば、初めて人間を頼りにしてるな…初めてのお願いが殺してくれ、か。
人間は私に気づいたようだ。近づいてくる。
しかし、いくら待っても痛みは襲ってこなかった。
男は自分から去っていった。どうして!どうして、私を殺してくれないの⁉︎私は死ぬときでさえ苦しまなければいけないの⁉︎
私は去っていく人間を睨みつけた。
私はもう一度、目を閉じ、自分の死を待とうとしたが、ふと足元に目をやると一つの皿が置かれてあった。そして、その皿の中にはミルクがたっぷり入っていた。
まさか!あの人間が私にくれたの⁉︎どうして⁉︎人間なんてひどいことをしてくる奴らばっかじゃなかったの⁉︎
私は夢中でミルクを飲み始めた。
生まれて初めての優しさが素直に嬉しかった。
沈んで消えるしかないと思われていた彼女の心に一本の手が差し伸べられた。彼女の心はどんどん浮上していき、久しぶりの空気を吸い込んだ。
まだ彼女も気づいていない新しい感情と共に…