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第74話 本当の気持ち 3

今回は切ない話になってしまいましたが『本当の気持ち』の3をお届けします。

彼が出した大事な気持ちのお話です。この物語を書くと決めた頃からあった物で、上手く表現出来れば良いのですが……><。

どうぞ最後まで宜しくお願い致します。

 朝起きるとブリュンヒルデの姿が見当たらなかった。


 何か悪い予感がして尋ねると有風が怪訝そうな顔をする。


「何か早く学校に行ってすることがあるからと出て行ったわよ。あなたには言ってあると言ってたわ……。もしかして寝ぼけて忘れた?」


 有風の話を聞いてピンと来た。彼女が自分に会う前に神々の国へ戻ったのだと思った。


「あ、そうだったかな?」と誤魔化すが上手く答えられただろうかと一人思う。


 しかし誤魔化した所で何か良い事が有るのだろうかとも考える。誤魔化しても誤魔化さなくても、もう彼女が居ない事は変わりないのだから……。



 家を出ようとしてお弁当を渡されてハッとなる。

 いつもはブリュンヒルデが持って来てくれてその手から受け取っていたのだ。


「何驚いているのよ、今日はブリュンちゃんは居ないんだから、あなただけの分は持ってよ。しかしおかしいわね、そんな顔するなんて、貴方たち何か喧嘩でもしたの?」


 お弁当を手渡しながら有風が首を傾げる。


「どちらが悪いか判らないけど、その時はあなたから謝りなさいよ。あの子に限って悪い事なんか無いんだから。それにあの子を悲しませたらご両親に申し訳ないんだから。あんな良い子この世界中探したって何処には居ないんだから、さっさと謝って許してもらいなさい。そうしないと自分が一番痛い目を見るわよ」


「そんな事ないから……」


 いつの間にか喧嘩した事になっていたが、それを冗談として返して家を出る。


「あんな良い子は世界中探したって何処にも居ない」――――。


 有風の言っていた言葉を繰り返してみる。その通りだ。彼女みたいな人はこの世界中の何処を探しても居ないのだ。誰よりも自分が一番わかってる。しかしもう彼女には会えないかもの知れないのだ。


「そんな事判ってるよ」短く呟いて駅へと向かって歩き出した。




「今日はあの子は居ないのね、病気でもしたかしら? ま、病気なんて私達女神がするわけ無いんだけど」


 駅に近づく商店街でいつもの様に会うと、アテナは開口一番そう言ってきた。


 いつも一緒のペアで学校に向かう二人のはずが、今日に限って蒼が一人で立って居たのだ。ブリュンヒルデの姿が無いのを見るのは初めてである。しかしそういう事も有るのかと少し考える。だがこの二人が一緒でないのを見たのが初めてとはまた不思議な物だった。地上に来て一度も別行動をしている所を見たことが無い。それほどこの二人は一緒だったのかと少し不思議な気持ちになる。


 だがその為今日は異常な光景だった。ブリュンヒルデ抜きの蒼の姿。不思議なので聞かずには居られなかったのである。


「あ、いや何でも無いんだけど。用事が有って……」


 何か思いつめたような顔で答えを返す。アテナが病気は無いと言っていたので風邪だとは言えなくなったからである。

 その様子を見てアテナは黙ってしまった。

 ただ押し黙ったままの彼の後姿を見つめ、それ以上は聞かず一緒の電車に乗り込むのであった。




 学校に着いて教室に入ると芹那も同じ質問をする。


 彼女が居ないのが今では珍しい風景になっていたのだ。


「用事が有ってそれで来れないみたいよ」代わりに答えたアテナの言葉を蒼は黙って聞いていた。芹那が何かを言っていたが、耳には聞こえた来ない。ほんの数ヶ月前までは居なかった彼女が今は居ない事が不思議に思われるんだ……。そんな事を不思議に感じながら、ただ今はそっとしておいて欲しいと考えながら、何も言わずに席に座るのであった。


 そんな様子を見ながら、芹那とアテナは授業開始のベルを聞いていた。



 昼休み。


 給水塔の傍でいつものように昼食のお弁当を開く。

 しかし今日はブリュンヒルデが居ない為、その姿は二人だった。何かおかしくて寂しい光景であった。何も喋らないで弁当を食べる蒼の姿がやけに不自然であった。


「この頃は鳳さんがあまり難癖をつけて来ないから助かりますわ。あの方の攻撃は露骨だから。いくらあたしの美貌に叶わないからって、あそこまでしなくてもね。そうは貴方も思わないかしら、神憑君……?」


「そうだな……」


 アテナがとりとめも無い話を振ってみた。もう食事を始めてから何度目かの光景だろう。

 アテナが話しかけてそれを彼が返事をする。するのは『そうだな……』のその一言であった。沈黙するのは構わなかった。しかしブリュンヒルデが居ないだけで、これは無いと思っていた。

 いくらあの子が好きだからって、ここまで落ち込まれたら一緒にいる私の立場が無いじゃない。気の短い私にしては今日は我慢した方だと思う。いつもの状況だったら一回目に気付いた時に怒鳴り散らしていた。――そう思って言うのだった。


「今日はお弁当は美味しかったかしら?」


「そうだな……」


「あなたは何を食べているか判らないみたいだったけど、本当に美味しかった。本当はあの子が居ないから何をしてるか判らないみたいだけど、それでも本当に?」


「え……?」


 そこまで言われてやっと自分の事を言われてると気付いた。しかし何を言ってるのかまでは判らない。ましてやブリュンヒルデが居なくなった事を彼女が知ってる筈が無いのだから。

 しかし顔を上げるとアテナがまっすぐに自分を見てるので当惑して見つめ返してしまっていた。

 彼女の目が怒ったように自分を見ていてどうして良いか判らない。


「朝から見ていて判らないとでも? どれほど貴方と一緒に居ると思ってるかしら。朝から様子がおかしいのはあなたのそのうすら寒い顔を見ていたら何も知らない人だって直ぐに判りますわ。あの子の姿が無いんだもの。それが原因だって、私だって認めたくないけど、直ぐに判る……」


「うん……?」


 最後の方が良く聞き取れなくて聞き返してしまった。しかしそれを誤魔化すようにアテナは顔を逸らす。


「けれど、あの子が居ないのはどうなの本当なの?」


 それ以上聞かれると困るので彼への質問に変える。本当はそんな事言うつもりなど無かったのだから。

 しかしその言葉を聞くと、蒼は急に黙り込んでしまった。

 何かを考え込んでるように暫く押し黙っていた。本当は誤魔化すべきなのだろうと考えていた。しかしそれを出来ないのも判っていた。現に今も彼女に朝からばれていたと言われた。しかしそれを言い出せば何かが自分の中から零れ落ちてしまいそうで、それが判ってしまいそうでどうしても、どうしても言い出せなくて。しかし嘘を突き通すなど今の自分には出来なくて――――。


「本当なんだ。もう今はここには彼女は居ない。アースガルズとか言う所に行って終った筈だ……」


 搾り出すようにその心の底にしまった言葉を押し出した。


「やはりそうだったのね……」


 アテナは予想していたと言う顔をして呟いた。

 彼がこんな顔をするのはそんな事しかないとは判っては居たのだ。しかしまたそれが判ってもどうしようも無い問題には思えたが。

 しかし考えてみると少し解せなかった。だって自分も何も聞いていない。ここまで一緒に居たのに水臭い。帰るなら一言あっても良かっただろうに。


「しかし……」そう言いかけて言葉を止めた。言える事ならブリュンヒルデの性格からして言っていただろうと思ったのである。つまりそれはそれほど簡単なことではない事で帰った事を意味していたのだ。帰った事を言えない程に重大な事――――。


「あの子。どう思って帰ったのかしら。私にも一言も言わずに……」


 アテナはなんだか腹立たしい口調でその言葉を口にしていた。

 何の為に一言も言わずに言ったのだ。同じ女神である自分にでさえ一言も言わずに。もしかしたら――――。そんな気持ちが頭を掠めた。


「最初からの約束だったんだ。最初からブリュンは神界から言われてたんだ、『運命の女神で無いからずっと居られない』と。昨日まで居たのもシステムを誤魔化していると言われてたし。本当はこの地上に居られないと言われてたんだ。それを無理してたのかも知れない……」


 蒼が鉛のような言葉を呟いていた。

 最初からこの地上には居られなかったという事なのか。アテナがその言葉の真意を確かめるように口を開きかけた時だった。


「やはりそうだったのか……」


 振り返るとそこにガブリエルが立っていた。そして悲しげな顔をして蒼を見ていた。


「今朝学校ここに来た時から何か気配がしないと思っていたが、まさかそんな事になっていたとはな……」


 顔を上げた蒼の目がガブリエルとぶつかった。もうどうしようも無い事なのかとガブリエルに問うてみたかった。


「ブリュンはこの地上に僕の為に来たんです。僕の運命が酷く悪いからって事で、でもそれは命令を無視した事らしくて、戻ってくるように前にも言われてました。それでも誤魔化して昨日まで居てくれて……」


 すがるような目でガブリエルを見ていた。どうしようもない気持ちが溢れてきてしまっていた。


「しかし私じゃアースガルズとやらは判らないが……」そこでアテナを見る。「お前さんはどうなんだアテナ。行けるのか?」


 急いで彼女に視線を向けると彼女は当惑するように首を振った。「オリュンポスの人間が行ける所ではないと思いますわ。場所も判らない……」


 その言葉を聞くと、蒼は一層酷く落ち込んで呟くのだった。


「そうなんですか……。もしかしたらと思っていたんですが。もしかしてアテナやガブリエルさんに聞いたら知ってると思って居たんですが。無理なのか……」


 あまりにも悲しそうな彼の姿に二人は何も言えなくてただ見つめているしか出来なかった。その痛々しすぎる彼の姿がどれほど彼女を想ってるのかを聞くよりも辛かった。






 放課後、様子のおかしい彼を置いて部活に行くのを躊躇う芹那が居た。


 一日も、授業中もその様子はおかしくて何を言っても、何を聞いても返事は空気の様。そこに心は無かったのである。理由を知りたくてアテナを見ると、ただ黙って首を振るばかりであった。そんな彼の姿を見るのは辛かったが、今は声を掛けられるのも辛そうで出来なくて……。


 部活に行くの時間がせまり迎えに来た呪歌が教室に入って来た。


「部活に行こう。遅れると後輩を虐める時間が短くなる……」


 いつもの口調で言って来た呪歌に後ろ髪を引かれる顔をして蒼に一度視線を向ける。心配なのだと芹那の表情が呪歌を見る。

 すると呪歌は一瞬何かを感じて教室を見回す。そして蒼の姿の傍に目を止めて顔を近づけるのだった。


「帰ってしまったの。私にも何も言わなくて?」


 その言葉を聞いて顔を上げる。

 目の前で彼女がじっと彼を見つめていた。


「でも何も言わないで行くと言う事は、きっとまた帰って来る事よね。私にそうしたのなら、あなたにだってそうでしょう。あなたが信じてあげなくて誰が信じるの?」


 そう言うと少し怒ったような笑顔のような表情を彼に見せるのだった。


「有難う……」


 それを言うのが精一杯だった。今は力が出無かったけれど精一杯の笑顔で答えてみた。


「何やっていたの?」と聞いて来る芹那を引っ張って呪歌は出て行った。


 いつもおかしな彼女の言動に紛らわされているが、彼女は本当に優しい人だとその時改めて思った。


『あなたが信じてあげなくて誰が信じるの?』――――。


 彼女が言った言葉を胸に刻む。


 それでも辛い気持ちは晴れなかった。アテナに掛けられた言葉になんとか動き出して、教室を後にするのだった。

前回までの話が嘘の様に寂しい話になってしまいますが、決めていた事なのでここまで来てしまいました。この先も読んで頂けたらきっと判って貰えるのでこのエピソードの最後まで宜しくお願いします。

少しづつでもブックマークも増える日もあり、書いていて本当に良かったと想いますので、更に登録貰える様頑張りたいと思います。

あと、次の更新は少し判らないので1日か2日過ぎの24時を目標に頑張りたいと思います。今後も読んで面白かったと思って貰えるように頑張りたいと思いますので、どうか応援宜しくお願い致します!

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