第68話 近づけない二人 3
誠にすみません。前回約束していた時間をオーバーしたので、今日は早く書きあがったと言う事で先に更新してみました。『近づけない二人』の3をお届けします。
何気に今回で終わる筈が少し伸びてしまって、あと少しかかりますがもう少しだけ宜しくお願い致します^^;(笑)
どうぞ最後まで宜しくお願い致しますm(__)m。
テレビを前にしてソファーの上でこう着状態。
横を向いたまま、彼女の寝顔を見つめていた。
夜の居間であった。
夕飯が終わりお腹がいっぱいの状態で昼間借りた映画を見ていた。テーブルの上にはコーヒーが二つ置いてある。
しかしテレビで映されている映画は、ただ勝手に進んで行くだけだった。
だって蒼の肩には、すっかり満足したような寝顔の女神さまが寝ているのだったから。
ブリュンヒルデがそこで眠っているのだった。
ゆるく編んだような髪が真っ直ぐに胸元に伸びていた。
長いまつげは閉じられて、ゆるく胸元が上下している。柔らかそうな白い肌は透き通るようで、暗くした灯りの下でほのかに浮かび上がって綺麗だった。
膝元に載せた併せた手は細く、そんな細い手でいつも料理や自分の世話を何も文句も言わず黙ってしてくれている。悪魔が相手でもいつも自分の楯になって一生懸命に戦ってくれているのだ。そう思うと、言葉には言えないほどに感謝の気持ちが胸をついて込み上げてくる。
「有難う。いつも……」
そう思うと今にもその白く細い手を取って抱きしめてしまいたくなる。
だがはっとして我に返る。
いや、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ! 寝てる間にそんな事して良い訳がない。そんな事をしたら彼女を起こしてしまう。いや起こしても何にも悪く無い。抱き締める方が問題なんだ! どうしよう。見ているとつい変な事を考えてしまう。さっきかけた最終兵器の発射ボタンの安全装置を、また外しそうになってしまう。
しかし見返すと本当に気持ち良さそう眠っている。どんな夢を見ているのか、少し微笑んでるような顔をしていた。綺麗に伸びた鼻筋も美しい。そしてその下にある薄ピンク色の唇が、なんとも言えず非常に柔らかそうで……。
触れると柔らかく押し返しそうなその唇の弾力を、何故だか無性に確かめたくなってくる。
そんな時頭の中にある考えが浮かんできた。
もしかしたら彼女は少し触れたくらいでは起きないかも知れない。忙しすぎた日曜日に疲れすぎて眠ってしまったのだから。それにもし触れて起きてしまっても彼女なら怒らないかも知れない。他の誰かなら怒るかも知れないけど、もしかしてこの僕なら怒らないで――――。
見ていたその柔らかそうな薄ピンク色の物体に、吸い込まれるように彼が近づいて行った時だった。
ピピピピピッ!……と突如鳴り響いた電話の呼出音。
その音にビクっと驚いて身体が動けなくなった。目の前ではブリュンヒルデが目を覚ます。その距離、5センチ。
「あーわわわわわわわわわ?!」
慌ててソファーを飛びのいた。
そのタイミングで飛んでからついでにキッチンのテーブルも飛び越して廊下の影に飛び込んだ。その動きまるでアクション俳優並み。
「いやー、あんまり高くて綺麗な鼻をしてるから、どのくらい高いか測ってみようかなんておもったりなんかして……」しどろもどろになりながら、ブリュンヒルデに向かって答えてみる。誰も聞いてないのに言うから本当は怪しい。しかし彼女はただ驚いて目をパチクリしてるだけ。基本的にはあまり疑うことなんて無いからそれも信用してしまう感じであった。
「ああ、蒼さま電話が……」
「あ、そうだった出るよ、今すぐ出ます! 電話にすぐに出なくっちゃだね……」
うまく誤魔化す材料が見つかって、何か浮かれたように受話器を手に取るのであった。
「もう遅いんだから何やってるのお兄ちゃん?!」
電話を取るなりいきなり甲高い声が聞こえて来る。電話の向こうの声は聞き覚えも有りすぎるお騒がせの颱風タイフーンであった。
「なんだお前今頃、泰菜か? 今、凄くいい所だったのになんで……」
「いい所っ?!」
「いい所っ?!」
自分で言っといて泰菜と一緒に突っ込んでしまう。妹の泰菜への驚きとチャンスを潰された事への感情が、思わず同時に本音となって出てしまっていた。そのやり取りを聞きながら、後ろでブリュンヒルデが首を傾げてる。
「そのぉなんだ、今見てた映画のクライマックスで凄いモンスターが出てくる所だったんだよ。凄い怖いやつが出てくる所で……」
「その映画でそんなシーンあったっけ。この前に出て来たっけかな……?」
「え?」思わず泰菜の言った言葉に受話器を抑えて、当たりを見る。「うーん、隠しカメラなんて仕掛けてないよな?」と思いなおした。
「有るんだよ、もう出ちゃったけど。あ、もういい所見逃しちゃったよ。お前の電話のせいだぞ。ま、許してやるけど」ブリュンヒルデに向かって手を振って誤魔化した。本当は映画のシーンにそんな所は無かったのだ。
「何よそれ? 何か私が悪いみたいじゃない。本当は二人でソファーで見てたの邪魔されたからそんな事言ってるんじゃないの? コーヒーなんて飲んでくつろいだりしちゃって許せないんだから」
「え?」再び走る泰菜の指摘に、部屋の隅々まで見回してみる。本当に隠しカメラなんて無いよね?
「あそうそう、そんな事よりブリュンヒルデさんに代わってくれない? ちょっとブリュンヒルデさんに聞きたいことが有ったんだけど……」
「はぁ、家族の俺よりブリュンに用事ってなんなの。母さんとかに代わろうとか無かったわけ? ま、今は留守で居ないから無理なんだけど」
「知ってる」
電話の子機を降ろして、ブリュンヒルデに向けて手渡す。蒼の手から子機を受け取りながら頭を下げる。「あれ、今あいつ『知ってる』って言わなかったか?」
電話を代わり何事かをブリュンヒルデが会話をしていた。時折笑い、時折蒼の顔を見る。話を聞くのは憚れるので離れて椅子に腰掛けたが、何やら楽しそうにブリュンヒルデは電話の向こうの泰菜と会話をしていた。
そしてひとしきり話し終わると、また受話器が彼の手元に戻ってきた。さっきの話からある事が判っていた。
「おい、さっきお前『知ってる』って言っただろ? 母さんからお前聞いたんだな。だからこんななんでも無い日にわざわざ電話して来たんだろ?」受話器を取るなり電話の向こうの泰菜へ先制攻撃をしかけてやった。きっと図星だ。だから有風の事は一言も聞かなかったんだ。知ってるってのはもう有風に聞いたって事を肯定した返事だったのだ。確信を得て泰菜に言ってやったと誇らしげに空いての返事を待った。
「何、怒った様にムキになって言ってるの? その通りよ。別に隠そうなんて思ってない。逆にそんなに焦ってお兄ちゃんの方がヤラしいんだから。大丈夫なの?」
ムキになってる? ヤラしい?
「そんな事あるわけ無いだろ。大丈夫に決まってる。それを俺の何処がムキになってるんだ? どこから見ても平常心の塊じゃないか?!」何処から見ても平常心の真逆としか見えない状態の彼に泰菜が電話の向こうから言って来た。
「どこから見てもムキになってるお兄ちゃんに最後にお父さんから伝言があるから聞いておいてね……」兄の怒りの電話暴走を気にも留めないように泰菜は呟いてきた。
「なんだよ?」
「『変な事はするな。あと、変な事しても報告するなよ!』……だって。ブリュンヒルデさんには私から注意しておいたから、後はお兄ちゃんの自制心だけが頼りよ。健闘を祈る! じゃ……」
そこで勝手に電話が切れる。
「何が健闘を祈る!――だ、この野郎!」顔を真っ赤にして怒鳴ってしまう。『何が変なことはするな』――だ。変なことなんかこれっぽっちも考えただけで、まだしてないんだから。それを、それを……。
そこまで怒ってふと我に返る。凄い視線が気になってブリュンヒルデを見ると、その目が疑うような目をしてた。
疑ってる。完全に犯罪者を見る目になっていた。
あーもうお終いだ! 泰菜は何を吹き込んだのか? この純真なブリュンヒルデがこんな疑うような目をするのだ。きっと凄いことを言ったに違いない。問い詰めても良いのだけれど、彼女の口からは言えない様な事を妹ならば言ってるに違いない。だからそれすらも確かめられないではないか! あーどうする? どう言えば考えただけでまだ何もする気は無かったと、どうやったら彼女に信じてもらえるのか――――?
頭の中に次々と浮かぶ沢山の良心の呵責に攻め立てられ、正気を失った彼の手が空に十字を描いて天へ祈るようにそこに跪くのであった。
しかし、それを見たブリュンヒルデがフフっと含み笑いをした。
「?」
傍らで静かに笑いを堪えるブリュンヒルデを見て、憤慨したように彼女を見る。人がこんなに真剣に悩んでるのに酷いじゃないか。何がおかしい? 僕だって人間なんだ。君と居たらそりゃ僕だっておかしくなるに決まってる。あんな美しい寝顔見せられたら誰だっておかしくなるに決まってるじゃないか?!
まるで誰でも煩悩の塊のように理不尽な言い訳を思いながら、笑ってる彼女を問い詰める。
「だって私はただ蒼さまがおかしな態度だったら、疑うような目で見ればすぐ大人しくなると泰菜さんに言われたのでやって見ただけです。するとこんなにいろんな表情するなんて――。何か変な事でもあったのですか?」
やられた。
まんまと泰菜に嵌められたのである。聞こえない状態でブリュンに何かを言ってると思って、逆に自分の思考の罠に嵌ったのである。ワザと『変な事はするな!』とか親父の忠告も付け加えて人の事を煽りおって――――。今度帰って来たら許さない! そう思ってると、不思議がるブリュンヒルデを残して「何でもない」と答える。
「お風呂に入ってくる!」まだ少し笑ってるブリュンヒルデを残し、風呂場に向かう。
そこへ携帯に掛かって来た有風の電話を取ると開口一番そう告げる。
「今掛かって来たよ。あいつに電話して話したの母さんだろ?」
有風はやけに嬉しそうに話してくる。
「やっぱり? そうなの。あの子に話したら直ぐに電話するって聞かないから。でも良かったでしょ? 久しぶりに話せてあの子元気そうだったから……」
「元気すぎて変な事ブリュンに吹き込むから参ったよ。頼むからこんな日にあいつに教えるのは止めて欲しい」
げっそりして電話を切ろうとすると、まだ電話口で有風の声が聞こえていた。
「そう? 何を言ったのか聞きたいけど。それよりあの子、この後も1時間おきに電話するって言ってたから、ひょっとしてこの後も……」
そこまで聞いてブチっと電話を切った。
「一時間おきに掛けられて堪るか!」
怒りに震えながら、お風呂場のドアを勢いよく閉めるのであった。
しかしよく考えれば、このお陰で最終兵器の発射を止める事が出来たので良かったのかも知れない――――そんな事を思って、お風呂に入る事にした。
だが、まだ彼は知らなかった。更なる愛のキューピットの最終攻撃の脅威が彼の身に迫ってる事を…………。
最後まで読んで頂けて有難う御座います。前回の話の続きですが、いかんせん今回は最も好きなジャンルな為、今回も終わりませんでした。スミマセン……_orz。
それと一つお願いが有るのですが、今回の話は凄い好きな部類の話なので、もしお時間がある方が居ましたら感想や、いや評価だけでもして貰えたら嬉しいと思います。お時間が有る方だけで良いです。出来れば宜しくお願い致します。
書いていて良かったと想う事も有りますので、更に登録貰える様頑張りたいと思います。
あと、次の更新は2/4水曜の24時を目標に頑張りたいと思います。今後も読んで面白かったと思って貰えるように頑張りたいと思いますので、どうか応援宜しくお願い致します!




