第54話 お騒がせ颱風(タイフーン)の来襲 5
さてエピソード『お騒がせ颱風タイフーンの来襲』の5をお届けします。体調があまり良くなくて、更新分の内容が纏まらず遅くなって本当に申し訳御座いませんTT。
今回はいよいよ出雲の地で何やら不穏な物語が動き出しますが、それが上手く表現出来れば良いのですが。最後まで読んで頂けると嬉しいです。面白かった時はどうぞ宜しくお願い致します。
評価やブクマ登録など貰えると凄く嬉しいです。最近は少しづつ増える事もあり、少しだけ書いていて良かったと想う事も有りますが、更に登録貰える様頑張りたいと思います。
どうか最後まで宜しくお願い致します。
土産物店から出てきて膝に手をついた。
もう何件目だろう、同じ質問をして店から出てきたところであった。
気がつくと反対側の蕎麦屋から出てきたブリュンヒルデと目が合った。しかし、蒼が問うように見つめると、彼女は目を瞑ってダメだったと首を振るのであった。
出雲大社の神門通りの中である。
真勝と有風と分かれて神門通りを見て来て良いといわれた途端、泰菜が自分達を置いて歩き出したのである。まるで、自分やブリュンヒルデから逃げるかのように。
そして直ぐ追いつこうと信号のある角を曲がった途端、泰菜の姿が見えなくなったのである。
「いったい何だってんだ……?」
坂になった商店街から通りを見下ろしながら1人呟いた。
そこから商店街の店を覗いては店に尋ね、あるいは裏の路地を探す時間が1時間ほど過ぎていた。
だが、どこを探そうとも泰菜の姿は何処にも無かったのである。
考えれば、今朝の態度からおかしかった。話しかけても素っ気無かったのである。まるで自分を避けているようであった。しかし、それは本当に今朝からなのだったのだろうか?
いや思い出せば、もっと前だったように思う。
確か、卓球の後の肩揉みもさせず様子がおかしかったのである。
何が原因なのか判らないが、帰ってきて早々面倒を起こすのは仕方ないと思った。しかし、何故か今回はそんなに簡単な理由には思えなかった。何故だか判らないがそんな気がしていた。
しかしブリュンヒルデはそれでも疲れた顔一つせず一生懸命探してくれていた。
またその姿が申し訳なくてやり切れなかった。
「もう少し先の大きな鳥居の方まで行ってみようか?」
ずっと下に下った所にある、鳥居を指差して言って見た。ブリュンヒルデも頷いて二人連れ立って歩き出す。そんな短時間でその地点まで行く可能性は低かったが、どうせ見つかるまで探すしかないのだ。最後にはとる方法を最初からするつもりであった。
「あっ!」しかし、歩き出すと同時に何かにぶつかって蒼はよろめいた。
見れば、そこに何かの丸太のように太い腰が見えた。「え?」と思い見上げると雲をつくような大男がそこで自分を見下ろしていた。それも蒼と目が合うと、ゆっくりと目を細め品定めをするように見つめている。まるで人のそれではない一種異様な雰囲気を携えた男で、じっとこちらを見ているのであった。
それに気圧されるように顔を背けて蒼は頭を少し下げてその場から直ぐ様退散した。泰菜を探すのが先決なのは確かだが、その雰囲気に何か危険な物を察知したのである。
その様子を遠くから見ている影が一つあった。
甘味屋の奥の窓ガラスの向こうから、帽子を目深に被った人影が蒼と大男のぶつかる姿を、そっと頭を低くして見ているのであった。
蒼の姿がやや離れていくのを見ていると、少しほっとするのであった。しかし、すぐにまた膨れっ面になる。今彼らに探して貰っている泰菜であった。
泰菜が頭を低くして蒼の姿が離れていくのをぶすっとした顔で見送っていた。
そしてそれを見ながら、ゆっくりと気の椅子の背もたれにゆっくりと倒れこむのであった。
ふと、いったい自分は何故そんな事をしているのかと考えていた。
ふいに兄とブリュンヒルデが見つめ合っている光景が浮かんできた。兄は彼女の美しい顔を見つめ優しげな笑顔を向けていた。そして、浴衣姿を見てうっとりとして見つめていた。好きなのだろうか? いいや、きっと好きなのである。あのブリュンヒルデさんを――――。
あの顔は間違いなかった。
あれほど美人なのだ、好きにならない筈がない。それにとっても自分にも優しいのだ、生まれついての美しい心を持ってるのが判る。あの人が自分の兄の恋人になるなんて考えただけでも望ましい事なのだ。しかし――――。しかし、それでも自分はそれを喜べなかった。
「なんて自分は心の狭い人間なのだ――――」通りを下って行く二人の姿を見つめ、心の中で呟いた。何故だか、喜ぼうと思うのにそれを素直に出来なかった。理由は判らないが、兄と仲が良さそうにすればする程、それを認めたくなかったのである。独りでに心がささくれ立ってくるのであった。
そのまま居たら、何かを言ってしまいそうだった。だから二人と離れて少し時間を置こうとしたのである。困らせてやりたいと思ってる訳ではなかったが、自分だけ良い思いをしてるような気がしたので、このまま姿を暫く見せなくても罰は当たらないだろうと少し考えていた。
だが、そんな考えをしながら兄を見てると、行けない! どうした物かそのまま行くとばかり思っていたのだが、引き返して戻ってくるのが見えていた。
「!」
それを聞いた時、ずっと先に見えていた鳥居に向かって歩いていこうとしていたのであった。そのぶつかった大男の異様な感じが恐ろしかったからである。
しかし、それがその言葉を聞いた時に気が変わったのである。あまりに可笑しな会話であったからである。
「だからお前さんの言ってる事は道理が通らん。ワシは約束の物を貰いに来たのである。その為にわざわざここまで来たんだ。まさか手ぶらで帰れとは言うまい?」
大男は二の鳥居の前で立ち尽くしていた。誰かと対峙して話しをしているようであった。だが、それが何か争ってるような口調なのである。それがさっきから大声で聞こえているのであった。大男の前で話しを受けている神官らしき人がまた華奢な体躯で哀れに思うほどだったからである。
そして、その華奢な体躯の神官に覆いかぶさるように顔を近づけて凄んでいるのである。「もしこのまま聞かなんだら、お前さんでも良いんだで。お前さんなら1人でも構わんよ。かなり旨そうだから……」
その大男の息をまともに受けてそこで両手を広げたその神官が呟いた。
「何を血迷ってるのだ。3人や、私を1人だと。お主、私を食うなどとここで口にしたのか?」
「ああ食うてやるさ。お前ならたっぷり楽しんでから頭から食うてやりたいな。もしお前が生贄にならないなら、お前を食らってこのまま先へ進んで何もかも食らうとしようか?」
そこまで言って大男が大きな口の端を吊り上げてニイと笑うのであった。黄色い歯を見せてその神官を見たのである。
「このヤガミが目の黒いうちはそのような真似は絶対にさせぬぞ。いいか!」
するとヤガミと名乗った神官が大男の顔をまともに下から見上げたのであった。
そこに美しい顔立ちのヤガミの顔があった。
なんとそこに居たのは、肌も透き通るように白い美しい女性なのであった。
その美しいヤガミが「食らう」と口にしてる大男の前で、一歩も引かずにその視線を受け止めているのであった。
ドン!
だが、その瞬間、大男の背中に何かがぶつかる衝撃があるのであった。
大男がそれをゆっくりと振り返り見つめてくるのであった。
「あ、すみません。前を良く見てなかったもので……。ここら辺で女の子は見なかったですかね? 年は16・7の髪の長い女の子なんですがね。さっきから探してるんですが、ちっとも見つからないんですよ」
大男の視線に、蒼が頭を掻きながら見上げているのが入り込んでくるのであった。
それも先ほどぶつかった時に顔を見ていたので、あからさまに戻ってきたのが良く判かったのだが、それでも凄むのはやめはしなかった。
「見なんだが、はてそなたはわざとぶつかって来たと思うが、それに相違ないか?」
なんだか言葉遣いが今の言葉と少し違っている。あまり聞きなれない言葉であった。しかし、その聞き慣れない言葉遣いがまたその男が本気で言っているかのように、変な説得力があった。従わなければ、何かを食らうと言う、理不尽な言葉を今にも吐きそうであったのである。
だが、その言葉にも蒼はじっとその大男を見上げて、一歩もひるまなかった。
そして、その反対側にいる、ヤガミと名乗るその神官も。
「…………」
大男は交互に蒼とヤガミの顔を見た。
そして、不意に何かを悟ったように少し笑いながら、くるりと向きを変えてもと来た道を向くと、ヤガミを見てそう言うのであった。
「覚えているよ。忘れるでないぞ。お前が約束を守らないから悪いのだからな……」
なんとも形容しがたい笑みを一つ浮かべ、大男はヤガミを見た。
それでも更に睨み返す彼女の瞳を見ると、怒り収まりきらない顔をしながら、舐めるように蒼も顔も見てゆっくりと歩いて行くのであった。
それでも更に睨み返す彼女の瞳を見ると、怒りの収まりきらない顔をしながら、舐めるように彼の顔も見てゆっくりと歩いて行くのであった。
後には、白い美しい顔の神官のヤガミと、腰の抜けそうになった蒼とブリュンヒルデの3人が、雑踏の神門通りに残るのであった…………。
最後まで読んで頂けて有難う御座います。
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ここまで読んで頂いて本当に有難う御座いました。
ではまた、次回の更新まで宜しくお願い致します^^。




