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第44話 想い続けるから 2

新しいエピソードのその2をお届けします。

今回は『忘れられない想い』という事をテーマに短いエピソードを目指しています。それが上手く表現出来れば良いのですが。最後まで読んで頂けると嬉しいです。面白かった時はどうぞ宜しくお願い致します。内容の関係で今回は長文になってしまいました。読みにくいので申し訳ないですが、読んで頂けると嬉しいです。

評価やブクマ登録など貰えると凄く嬉しいです。最近は下がることも多く、落ち込んでいますが、なんとか登録貰える様頑張りたいと思います。

どうか最後まで宜しくお願い致します。

 アテナが商店街の中の歩いている。

 

 蒼やブリュンヒルデが住んでいる中囲町の商店街であった。


 すっかり暗くなった時間だが、まだ商店街の中は買い物帰りの人ごみもまばらにあり、それほど寂しい時間では無かった。

 割と遅めの夕食を採る人やまだ買い物をする人のやり取りも聞こえていて、直ぐ様帰らなければ行けない時間ではなかった。寂しくなるのは、そんな人々も居なくなった後の時間であった。


 そんな中をアテナが1人進んで行くのであった。


 沢山の人々の間をそっとすり抜けて進んでいる。しかし、様子が変であった。俯いてまるで人々を避けてるような足取りであった。


「…………」


 何をどう感じてるのか判らないが、そのままにしては置けなかった。


 2人は顔を見合わせてまたその後を付いて行く事にする。もう食事の仕度をして待っている母親には連絡を入れなければ行けないだろう。


 そう思った時、不意に電話がなった。案の定、家で待っている有風からだ。もう今から掛けようと思っていたのに――――。


「ごめんね。いつものお店で手伝いしての帰りなんだけど、ちょっと友達が様子が変なんだよ。そう、アテナって家で話題にしてるあの転校生の子なんだけど。それで、あっ――――?!」


 その時電話している蒼の視界の中でアテナが急に路地を曲がって行くのが見えたのである。


「蒼さま……」


 ブリュンヒルデもあわてて蒼の服を掴んで知らせる。

 急いでその後を追いかける。


「ごめんね。少ししたら必ず連絡するから……」


 そう言って彼女が入った角を曲がると、そこで蒼は誰かの身体にぶつかって止まるのであった。


「あたっ……。ごめんなさい。急いで居たからすみま……?」そこでぶつかった人に謝ろうと顔をあげた蒼がその人の背中を見て絶句した。


 そこに、アテナが背中を向けて立って居たのである。ただ、黙ってそこに立ち尽くして。


「私の家がすぐそこにある。少しだけ寄って行ってくれるかしら……」


 少しだけ振り向いて、目だけをこちらにやりながら静かにそう告げるのであった。





「もう何日経ったかしらね。私があの人に話しかけられてから……」


 暗い道をまっすぐに進みながら、アテナは茫洋と喋り始めた。

 

 商店街から少し離れた道である。

 車もぎりぎり通れないような道を抜けながら、アテナは進んで行く。商店街の喧騒ももう遠く聞こえなくなっていった。


 見慣れた筈の中囲町の中だが、蒼は初めて通る道で不思議な感覚に襲われていた。

 どうやらその道はアテナの魔法による所が大きいのかも知れないと少し考えていた。

 

 そこでアテナはあの男について話し始めたのであった。


 喫茶店に居た男である。アテナと店を出る所で何やら話していた様にも見えたが、蒼とブリュンヒルデにはその内容は判っていなかった。


「少し前にあの商店街で話しかけられたのよ、ある女性を知らないかと言われたかしらね。その時は絵を見せられたの。髪の長い女性だったわ。綺麗な人」


 その絵を思い出すかのようにアテナは空を見上げた。白い息がもう混じっている。綺麗な白いアテナの顔が月明かりに美しく輝いていた。


「その人を探してると言ってね、見かけたらすまないけどそこの喫茶店に居ると言われた。けれど見た事も無い人だわ。私はそのように正直に話してその晩は帰ったわ」アテナは蒼やブリュンヒルデを見ながら順を追って考えて話そうとしていた。


「そしてまた次の日も見かけたの、帰り道に。同じように道を行く人に話しかけていたわ。そしてあの喫茶店の同じ席に座っていた。あの窓から外が見える席に。また次の日も、次の日も。何故か気になってね。暫く見ていたわ。何でそんなに探す用事が有るのだろうと。それで彼に聞いてみたの、誰を探してるのかと。すると彼は答えてくれたわ。古い友人なのだと。遠い日に分かれてそれきりの友人だと言っていた。その友人と会っていたのが、あの喫茶店のあの場所だったらしい」


 アテナはそこまで話してそこで立ち止まって一言呟いた。「ついたわ」


 その言葉に二人が顔を上げて門の前で固まった。

 そこに見たことも無いぐらいに大きい宮殿のような屋敷が広がっていたのであった。ざっと見ても野球場10個分はありそうだ。門扉だけで蒼の背の二倍はある。そこの格子状の門の奥に広大な中庭が広がっていた。

 そして、屋敷の入り口に三角形のガラス張りのピラミッドがある。これ何処かで見たような気がするが……? 


「コレは何?」蒼が開いた口が塞がらないという風に聞いてみた。実際、その通りである。


 するとモニターに顔を近づけたアテナが当たり前のように答えるのであった。「お帰りなさいましお嬢さま。ただ今お迎えに向かいます」奥のモニターの中に綺麗な女性の姿が見えた。


「私の地上での仮の住まいよ。遠慮しないで寄って行って。あまり時間も無いだろうけど、お茶くらいは出させるから……」


 アテナは何も気にする事も無しにそのまま入っていくのであった。


「仮の住まいだって……。何処が仮の住まいなんだ。何かどこかのルーヴル美術館に似てる気がするけど、こんなでっかい屋敷どうしたの?」


 思わず仮住まいに進んで行くアテナに突っ込んでしまった。相当なお金持ちでも広大な土地にコレだけの屋敷は持てない。また派手にやらかした物だと逆に感心してしまった。


「だってコレあのルーヴル宮殿を作った建築家に頼んだから仕方ないわね。ま、土地の都合で半分も収まらなかったけど。中庭が出来たから我慢してるわ。さ、入ってね……」


 アテネに促されて屋敷の入り口にたどり着く。


 扉が開くとそこに数十人のメイドがズラリと並んで両側で頭を少し下げていた。


 そのまま進むアテナにその先頭に立っていたメイド長が近づいてきた。構わず進むアテナの手から荷物を受け取って横にずれる。


「友人が2人来ていますから中にお通ししておいて。私は先に着替えるわ。宜しく」


 アテナはそうゆうと中に入って蒼たちを振り返ってまた中に消えていくのであった。

 その様子を見ていると、いきなりメイド長らしき人が二人の前に立って頭を下げるのであった。


「この度はよくお越しくださいました。私はメイド長のニケと申します。ささ、お嬢さまのご友人の神憑様とブリュンヒルデ様ですね、お噂は兼ね兼ね聞いております。ささ中へお進み下さい」金色の輝くような髪を見事に結い上げたメイド長が、真っ青な瞳を真っ直ぐにこちらに向けて言うのだった。しっかりとして背筋の伸びた爽やかな感じのメイド長だった。


 噂って……。

 アテナがどんな噂をしているか気になるが、メイドを沢山待たせて居るのでそそくさと促されるままに中に入っていく二人だった。





 メイド長のニケに案内されて通された居間に腰掛けていた。


 途中案内される廊下には高い窓が設えていて、吊り下げられていた細いシャンデリアが無数の微細な光で壁に描かれている宗教画と照らし出していた。

 そのどれもが精巧で、まるであたかも本物のルーヴルを歩いているようであった。


「あ、これもまた本物の画で御座います。ただ、お嬢さまの好きな物に限りましたが、“再現”と言うよりは“再建”と言う様な方向で私に任されましたので、少し違うところは有りますが……」


 廊下を歩きながらニケはそう説明するのであった。


 再建――――? 

 一瞬考えたが、メイド長がやった事なのだろうか? ルーブル宮を再建するなどと、よくそんな事を考えた物だ。


 そして居間にアテナより先に通されたのである。


 そこは豪華絢爛な装飾を施された廊下とは少し違って落ち着いた雰囲気の部屋であったが、やはり金の装飾があちらこちらに施された部屋である。

 「よくこんな所で過ごせるな……?」と思わず蒼はブリュンヒルデと顔を見合わせてしまった。


「良かった、少し休んでいくといいわ。今日もよく働いた物ね」


 いきなり扉を開けてアテナが入ってきた。丁度、お茶が運ばれてきた時で、声の方向に向き直るとそこは先ほどの廊下から入ってきたドアではなかった。恐らくは、廊下など通らずに部屋から着替えのある部屋には家の住人は行けるのだろう。

 アテナの上げた手にすぐにニケがガウンを手渡す。お茶を運んで居た筈なのに、次にはクッションを直し、座ろうとするアテナにブランケットを手渡す。いったい何処からそれを取り出したのか? まさに貴族に仕えるメイドのそれである。ちょっと見ようによってはマジシャンの領域であるが、女神なのでそれも否定出来ない?


 不意にそんな生活を知らない自分が少しだけ惨めな気持ちになった。

 はて、ブリュンヒルデも本当はこうゆう上流階級の生活をしてるのだろうか? 蒼は素朴にそんな事を思って見ていた。しかし、天上界で過ごしてるのでこんな人間の住む生活と同じか甚だ疑問であったが、それでも何故だか彼女はどこかそんな派手な生活をしていないような気がしていた。


 アテナは少し緩やかな服装に着替えて蒼たちの前に姿を現した。

 しかし、それでも凛としたいつもの気品は健在である。そこはどうしても気を緩められないという所なのかも知れなかった。そして、彼等の待つ大テーブルのある椅子に腰掛けるのであった。


「ごめんなさいね。急いで居ただろうにつき合わせて。けれど貴方に聞いてほしかったことが有るの。悪く思わないでね」


 アテナはいつに無く愁傷な面持ちで切り出してきた。




 それからひと時をアテナと過ごし蒼とブリュンヒルデはその部屋を後にした。


 廊下にはニケを先頭にまた玄関のある方向へ進んでいる。

 部屋を出る時にアテナが一言「今日は聞いてくれて有難う」と言っていたのが新鮮だった。あのアテナがいつもより少し弱気だったような気がしていた。


 アテナの話しとは、先ほどの男の話だった。

 アテナが言うには、その男が探している女性と言うのが、彼の恋人だというのだった。

 アテナはそこで蒼に聞いてきたのである。地上の人間の為に、探して良い物かと言う事を。


 例えば魔法を使えばひょっとしたら見つかるかもしれない。いや、程なくしてその顔や特徴が判れば見つかると思うとアテナは考えてると言った。


 しかし、それが果たして彼の為になるのかと聞いてきたのである。

 

 アテナにはそれが判らないのだと、地上人の蒼に聞いてきたのである。

 彼の運命を自分の魔法で安易に変えてしまって良いのかと言うことを。


「うん。難しいね。けれどそれはアテナに関わった時から変わる運命だったんじゃない」


 アテナが納得できるかわからなかったが、蒼は正直に答えた。


 そんな言葉をブリュンヒルデも黙って聞いていた。

 運命の女神でない自分が蒼の元に来た事。それはアテナが感じた運命に関与する事を恐れたことと似ていた。

 アテナも戦女神である。戦いの勝利を願い、その勝利を約束する女神である。しかし、運命を弄ぶのをよしとはしない。その気持ちは同じである。

 だが、今自分は蒼の傍に居る。彼の人としての優しさやその素晴らしい心に報いる運命にしたいと地上へ来てしまったのだ。それはアテナが言った事と同じかも知れない。その事を思うと本当は複雑だった。


 だがその言葉を聞いて、アテナは自分の気持ちに整理がついたようであった。


「蒼さま、ブリュンヒルデ様、今日はお越し頂いて本当に有難う御座います」


 玄関が近づいた時、不意にニケが二人に礼を言ってきた。

 驚く二人。突然お礼を言われたが、特別にこのニケに礼を言われるような事はしていなかったのだ。


 するとニケはそれを察知して保っていた難い表情を少しだけ柔和に崩すのであった。


「これは突然失礼致しました。ですが気持ちは本当です。最近のお嬢様は人が変わられたように色々な事に真摯に向き合うようになられました。今までもそうでありましたが、今はさらにそのように。何を大事にするべき物か判ったのだとお見受け致します。その為、毎日慣れない人の中に入っても働くようにしてるのだと思います」


 ニケは少し笑うような表情でそう言ったのである。


「理由を聞いたのですが教えてはくれませんでした。ただ、ある方に教えられたのだと言っていました。その方が大事にしようとした姿を見て、自分も学んだと言っていました。珍しいんですよ。お嬢様は人から学ぶなどというお方じゃありません。なのにその時は『確かに言葉では聞いてはいないけど、学んだ』と言っていました。その顔は私は一生忘れられません。それ故、彼の街で出会った方の人探しにも手伝うべきかと心を痛めるようになったのだと思います。お嬢様は、少しづつ変わって来たのだと思います」


 嬉しそうだった。その話しをするニケの顔は、満面の笑みであった。


「神憑様にお願いが有ります。お嬢様は私が全力で守ります。けれど私にはあのような顔をお嬢さまにさせる事は一生かかっても出来ません。どうかこれからもお嬢さまのお力になって下さい。そして、もし叶うならば、私はどんな事でもしますのでそれだけは忘れないで置いて下さい。本当に、本当に有難う御座いました」


 ニケが話し終わるのと、玄関に着くのは同じであった。

 アテナが変わった原因が誰にあるのかを知っているような口ぶりだった。

 そう言うと深々と頭を下げじっとして動かなかった。まるで、それが蒼への頼みの意味の深さでもあるようにただじっと深くしたまま動かなかったのである。


「判りました。判りましたから、その顔を上げてください。僕はそんな大した事は出来ないんだから。少しでも手助けできる事は僕も全力でやりますから、それで勘弁して下さい」


 困ったように呟くと、ようやくニケは顔を上げるのであった。それも、満面の笑みを浮かべてである。

 ニケは笑い、そして今度はその勢いも冷めぬまま、今度はブリュンヒルデに向き直るのであった。


「それともう一つ。ブリュンヒルデ様には負けられません。私が全力でお嬢さまをサポートしますから、その時はブリュンヒルデ様も全力でお願い致します。宜しいでしょうか?」


「え?」


 それを聞いてブリュンヒルデは訳が判らないという風に蒼の顔を見た。しかし、それはいつかブリュンヒルデと力試しをするという意味だとわかり、ブリュンヒルデも満面の笑みをして快諾するのであった。


 二人に丁寧に礼をいい、ニケに見送られてブリュンヒルデが魔法で家に帰った。




 そして翌日。


 学校の間にもアテナは昨日の話をもう一度蒼に聞いて心を決めたようであった。


 そして再度夕方、あの店に行き彼の話しを聞いて、今度は写真をもう一度見せてもらったのであった。

 

 彼に力になれるか判らないが、見かけることがあったら知らせると約束して彼を喜ばせた。


 だが、見つかるとは限らない。しかし、それでもと彼は力なく喜んでくれた。


 その彼女の事を聞いて写真を見せてもらってアテナはこれから探せると考えた時であった。うしろからアテナの事を呼ぶ人声があった。

 まれで、初対面な自分にまったく知らない人から声をいきなり掛けられたのである。


「あのもし宜しければ私の話を聞いて貰えないでしょうか?」


 アテナは不意に掛けられた言葉に、後ろを振り選った。

 

 そこに、今まで見たことも無い人が立って居たのである。


 商店街の中、あの彼の待つ喫茶店からそう遠くない場所であった。


「あ……」


 そこに1人の髪の長い女性が居た。


 そこにこれから探すと彼に約束した彼女が立ってこちらを見つめてるのであった。

最後まで読んで頂けて有難う御座います。

面白かった時は評価もブクマ登録どうぞ宜しくお願いします。ランキングもぽちっとして貰えるとうれしいです。

次回も読んで頂ける様に頑張りたいと思います。

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