第42話 文漫研 9
何とか大好きなエピソードを入れることが出来ました。
今回は部活の最後のエピソードになります。それが上手く表現出来れば良いのですが、大丈夫でしょうかTT。ですが最後まで読んで頂けると嬉しいです。面白かった時はどうぞ宜しくお願い致します。
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どうか最後まで宜しくお願い致します。
お勘定を払い、『ご馳走様でした!』と全員で言う。これが、文漫研の慣わしだった。
そしてみんなで騒ぎながら、駅に向かって歩いていた。
道明寺が再びブリュンヒルデ、環奈の女の子ペアに軟体な腕をニュルニュルと伸ばし始めたが、それを近くのお店のノボリで応戦してるのであった。
そんなやり取りを少し遅れて見ていた神楽に、後ろから馬頭が話しかけて来るのであった。
「なぁ神楽。一つ聞いて欲しい事が有るんだが、良いか?」
「ああ」神楽は後ろも見ずにそう応えた。
すると、馬頭は少し躊躇うように低い声で言うのだった。
「俺は、今日の物語はなしも良かったと思うぞ」
急に言われた言葉に、神楽はビクッとして背筋を伸ばした。神楽はまたマフラーに首をすぼめて言いにくそうに「ありがとう」と言う。
「それに前より感情や、言葉の入れ方も良くなってると思う。少なくとも俺はそんな話が好きだ」
その言葉に、ますます神楽の首がマフラーの中にめり込んでいった。「それは少し良かったよ、有難う。今日は私も飲みすぎた」そう言うと、関係ない事を言って誤魔化そうとする。凄く嬉しかったのだ。
だが、次の言葉を言おうとした時、馬頭は少し言い難そうにしていた。何かを言えず、何かを凄く戸惑ってるようで馬頭は中々次の言葉を言い出せないでいるようであった。しかし、それでは話しが出来ない。馬頭は次の瞬間、意を決したかのように重い口を開くのであった。
「あとだな。もう一つの有名になってる方での話もよいが、俺はこっちの方が好きだ、お前の伝えたい物がよく表現出来てると思う……」
しかし、その言葉を聞いた途端、神楽は何を……と言う顔をした。
なんでその事を知っている。今まで誰にも言った事がないのだ。それは馬頭にも。いや、馬頭にだからこそ知って欲しくないのに――――。
「悪いな。この前、お前の携帯が居ない時に鳴って居たんだ。知らせてやろうと見た時、そこに出版社の名前があった。すると切れた直後の携帯に出版社からメールが入ったんだ。見た事も無い名前宛のメールが。それを俺は何気なく覚えていた。ネットでその名前の作者の話を少し読んだ。するとそれは見たことのある、お前の文章だったよ」
神楽はその言葉を聞きたくなかった。
神楽は自分の名前の作品が読まれない時に、別名義で女性同士のラブロマンスを書いてみた。自分的に少し過激でそんな物読まれないだろうと試しにやっただけだった。だが、それが読まれ始め人気が出た為、面白くなってより過激な内容で少し続けると、評判は評判を呼び瞬く間に人気作品になっていった。元の名前の自分の純愛物は、全く読まれないのにだ。
最初は良かった。知らないが、知らないなりに色々書く為に調べたりして続きを書くと、喜んで読まれるのも嬉しかったり。
しかし、人気が出て書き進めれば進めるほど、自分は何のために書いているのだろうと思うようになって行った。こんな物。こんな話しを書きたくて、自分はここに居るわけじゃない。
毎日、毎日その事が頭に浮かびながら書き続けていた。自分の本当の書きたい物で無い物と向き合いながら――――。
だからそんな物、馬頭の耳になんて入れたくなかったのだ。
相談はしたかったが、それを相談するなんてありえない。それを書いてるのを知って欲しくないから。
しかし、それを今彼は知っていると言った。
何て事だ。一番知って欲しくない人に知られてしまって。私は何をやってるのだろう。私は、何を大切な時間を使って、こんな事をやってるんだろう。こんな事をする為に、私は今、ここで生きてるんじゃない筈なのに! ――――神楽の胸が張り裂けそうに、音を立てて悲鳴を上げそうだった。
神楽は馬頭を振り返れなかった。本当は否定しなきゃいけない。自分じゃないって否定しなきゃ行けないって思っていた。
馬頭に恥ずかしい。自分の弱さを、馬頭に知られたのが恥ずかしいから。
だが、それが出来ないのだ。否定をするにもそれは嘘じゃないから否定できないんだと思った。嘘を言うのは簡単だ。だが、もう嘘を言って逃げ回るのを自分は辞めると決めたのだから。馬頭に嘘を言って誤魔化すなんて、死んでもやっちゃいけない事だと、自分は分かっていた筈だから――――。
だが、そこで聞こえてきた言葉に神楽は動けなくなった。
「すまないな。俺はその事を知ったのが最近で何も言ってやれなくて。ただ、悪かったと思ってるんだ。お前がアレを書いていて、辛かったんじゃないかって思ってな」
馬頭が今までこんなに長く話した事を、神楽は聞いた事が無かった。
「お前がアレを書いていて楽しいなら俺はそれでいい。だがなこれだけは聞いて欲しかったんだ。俺はいつものお前の物語の方が何倍も好きだぜ。お前には自分らしい話を書いて欲しいんだ。お前らしい、お前の好きな物語をな」
もう動けなかった。動くと自然に何かが地面に落ちてしまうから。
「もし、それが書けたら最初に読んでくれるか?」
声が聞き取れなくなっていたが、それでも神楽はつよがりにそう言った。
すると馬頭が直ぐ様答えてきた。それはいつにも増して低く、少し不服そうに。
「当たり前だ。いつだってそうしてるじゃないか。安心しろ」
その声を聞いて、もう動けなかった。
みんなに少し遅れていたが、もう歩いて居られなかったのだ。
もうこれ以上には入れないというぐらいにマフラーに顔を埋めて神楽は動けなかった。
そんな神楽を前にして、馬頭は追い抜かずに、ずっと後ろに立っていてくれた。
翌日、学校の教室で蒼はもう席についていた。
すると早速、アテナが突っついてくる。
昨日はレヴィアタンの店に顔を出さなかったから、怒っていたぞと朝から八つ当たりをされた。
だが、それも昨日の『お好み会』の後では仕方が無い。ブリュンヒルデと一緒に平身低頭謝るのであった。
しかし、あの後も神楽が大変だったのだ。
思わず顔を2人で見合わせて、思い出して笑ってしまった。
「何2人でにやけてるのよ。私にも謝りなさいよ、本当にもう!」
後ろから、芹那が蒼の耳を掴んで来た。
授業が始まり、皆がいつにも増して静かに勉強をしている……。
しかし、勉強をする音に混じってカリカリとスケッチブックに木炭をのせる音がする。
それを聞きながら、皆が前かがみに小声でひそひそ話しをしていた。皆は一様に後ろを気にしている。
「おいお前ら、いくら留学生のブリュンヒルデ君やアテナ君が珍しいからって、授業中に来るのは辞めてくれるか。他の者が気になって授業にならんぞ」
教壇の英語教師、驢馬徒 打宇二Jr.(ろばと だうにいJr)先生が後ろの2人に声をかけてきた。
見ればそこに山のような巨漢とメガネを掛けた秀才が2人並んで座ってるのであった。
馬頭と道明寺が2人、椅子に座ってブリュンヒルデをスケッチしてるのであった。
「ああ、お構いなく。私達文漫研の者ですから、怪しいものじゃないです!」
「いや、そうゆう問題じゃないから……」答える道明寺に蒼が思わず突っ込みを入れる。
「いつも創造する喜びを大事にし、その衝動を抑えずに突き進めと初代『文漫研』部長の校長先生の許可も貰ってます。それで問題ないでしょう」馬頭もさらっととんでもない事を言う。いったいどうなってるのだうちの部は。
皆もざわざわとする教室で、馬頭はにっと笑ってこちらを見るのだった。
「それと神憑。南橋本がうちに入ると言ってきた。お前に『頼みましたよ』と言っていた、伝言は伝えたぞ。宜しくな」
「もう教室で必要ない伝言は言わないで下さい……」
馬頭の声に、またがっかりして突っ込みを入れるが、その顔は嬉しそうだった。
教室は更にざわついて行た。
2人のスケッチブックに描いたブリュンヒルデが、蒼を見つめて笑っていた……。
最後まで読んで頂けて有難う御座います。
これにて文学・漫画研究会のお好み会の話しは終わりです。短くしたかったのですが、やはり長くなってしまって申し訳ありません。しかしどうしても書きたかった話なのでお許し下さい。
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