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第39話 文漫研 6

何とか大好きなエピソードを入れることが出来ました。

もう少しだけお付き合い宜しくお願い致します。前回の続きです。最後まで読んで頂けると嬉しいです。それが上手く表現出来れば良いのですが、面白かった時はどうぞ宜しくお願い致します。

評価やブクマ登録など貰えると凄く嬉しいです。最近は下がることも多く、落ち込んでいますが、なんとか登録貰える様頑張りたいと思います。

どうか最後まで宜しくお願い致します。

「さぁ、文漫研恒例の『お好み会』を執り行います! 今日もすっかり皆は自分の作品を発表して恥ずかしい思いや楽しい思いをしたと思いますが、それも全てここに集いし仲間の向上の為ですので、その感謝と親睦の気持ちを込めて始めましょう。カンパーイ!!」


 神楽が手に持ったコップを高らかに持ち上げた。


 これが文漫研の月に一度の発表会の感謝会であった。


 月に一度の発表会ではそれぞれ殆どの者が、その酷評や恥ずかしい思いをした為に少なからず立ち直れない気持ちに成る為、昔からここ薔薇原高校裏のお好み焼き屋『蒸減閉夢亭むすぺるへいむてい』でその後の心の回復を取るのが恒例となっていたのである。

 ようはそこで交わした酷評や賞賛も、全ては仲間の為にあるとその勇気を称えあう場なのであった。そして、お腹がいい加減空いてるので、それを満たす場でも有るのである。お腹が空くと、腹も立つという訳なのであった。(どんな訳だ)


「それと今日は特別ゲストに留学生ブリュンヒルデ君と1年の南橋下も参加してるので、皆、いつもより上品に楽しむようにお願いする。宜しく~」


 ここでもやはり進行は神楽なのだが、どうも既に酒の席のような進行となっていた。普段どんな会をやっているのか想像すると怖い。

 

 各々、4人に一人のぐらいの席の前に鉄板があるが、そこで道明寺と蒼がお好み焼を焼く係りになって進めてる。


 ブリュンヒルデも直ぐ様、皆にお好み焼きを取り分けていた。なんだか、ここでレヴィアタンの店での裏方を担当してるのが役にたってしまっていた。それに黙っていてもいつもブリュンヒルデはいつの間にか先回りしてやる事が多いのである。


「お、なんか奥さんみたいだな、ブリュンヒルデ君は。確か神憑の家にホームステイだと言う事らしいが?」


「ええ?」皆が一斉に蒼の顔を見た。やはりそれほど凄いインパクトがある事実なのであったか。


 その時、ガタンッと隣のテーブルから音がした。

 見ればそこで環奈が手にしたお好み焼きのヘラを落とした所だった。

 皆が注目すると、環奈の目が蒼の顔を見ていた。その目が、少し驚いたように見開かれている。何か驚くような事があったのは間違いないと皆が思った。


「ホームステイの話しは1年の南橋下には刺激が強すぎたかな、神憑?」神楽が蒼の耳元で囁いた。かなり真剣な顔をしている。


「何、いやらしい事言ってるんですか? そんな事無いでしょ、普通にホームステイなんだから」


「いや、南橋下の顔はそうゆう風に見えんが、嫌らしい事を考えてるとしか思えないぞ、どうする神憑?」


 見ると環奈が自分の事を言われてると分かって急いで下を向くのであった。顔が真っ赤になっている。彼女は自分が聞き入ってヘラを落としてる事を思い出して、急いで床にしゃがみこむのであった。


「すみません。何か私ホームステイなんて始めて聞いた物で、つい驚いてしまっただけです」


 環奈は耳まで真っ赤になりながら、ヘラを掴んでまた自分の席に戻るのであった。


「ほら、神楽先輩が変な事言うからかわいそうじゃないですか。ごめんね」


 冗談を言った神楽に文句言いながら謝まってみせると、環奈は蒼の顔を見ずに頷くのみであった。だが、また鉄板に向かって神楽達と話しだすとその姿をこっそり盗み見ていた。



「でも本当に可愛いなお前。しかし、南橋下はなんであんなに上手いんだ、漫画が!」


 環奈が神楽にからかわれてる様子を見ていると、いつの間にか近くに道明寺が座ってきていた。

 それも相当に柄が悪くなっている。やはり環奈が可愛いのが気に食わないのか、環奈の腕を掴んでいる。


「ねぇねぇあんたさぁ、そんなに可愛いのになんであんなに漫画が上手いの? おかしいでしょ。それじゃ神様があんたばかり贔屓ひいきしてるとしか思えないのよ、どうなってるのよ!」


 道明寺は環奈の顔を見て管を巻きだした。自分の漫画の腕が上手くないのを環奈のせいにして文句を言う始末。テーブルに倒れこんだ身体が巨乳で支えられていた。

 慌てて蒼とブリュンヒルデは道明寺の腕を引き剥がして環奈の事を防御する。


「あー、面白くない。この世は可愛い子に甘すぎる。甘すぎるんだよ、ちくしょー!」


「困った奴だなぁおい……」


 呆れ顔でそう言うと、蒼は環奈の手を離して道明寺のコップにウーロン茶を注ぐのであった。


「しかし、私は好きな漫画を辞めないのだよ。好きな漫画をもっと上手くなりたいんだ!」


 テーブルにうつ伏せになったまま道明寺が話し始めた。


「私は漫画を小さい時から好きだった。だから夢中で読んできたんだ、家には凄い数の漫画がある。それで、いつかこんな話を私も書いてみたいと思うようになったんだ。こんな綺麗な子を書いてみたい。こんな美人なお姉さまと一緒にラブラブしたいって……」


「あ、そこはもう“お姉さま”に成っちゃってるんだ、ふぅーん」黙って聞いていた蒼がボソっと呟いた。


「でも、漫画を描きたいって思っても最初は何をして言いか分からない。そこでいつも読んでいた漫画の真似をして書き始めたんだ。それがな、本当に面白いんだよ。すっごいヘタなんだけど、自分で書いた物は面白かったんだ。面白かったと言うか、楽しかったんだ漫画を書くっていう事が。笑っちゃうくらいヘタな絵だったけどね……」道明寺の声は晴れやかだった。その時の事を思い出して声が自然と軽くなってるようだった。


「あ、それ判ります!」環奈がその言葉に同調して嬉しそうに口を挟んだ。


「何、ヘタなのが判るだと?」


 しかし道明寺の耳にはそこが強調されたらしい。

 慌てて環奈が訂正した。


「いや、漫画を書き上げた時って『本当に生きてて良かった』と思うくらい嬉しいですよね。……という所です。すみません」 


 激しく落ち込む環奈に蒼とブリュンヒルデが両側で「まぁまぁ」と慰める。

 それを聞いて道明寺も少し嬉しかったのかまた話を続けるのだった。


「もうそこからは書き方の本や参考になるものは片っ端から買ったね。それこそ道具も色々と必要で、中には高価な物もだいぶあるからその為にバイトも頑張ってやったし。どれもこれもみんな漫画の為にやってるような物なんだよね。ああ、バイトなんて始めたから親が文句言うようになって、その為に成績落ちると辞めさせられちゃうから、勉強もそこから頑張ったよ。そのお陰で今は私は成績も上に上がったくらいだ。偉いだろ、神憑?」


「へいへい」呼ばれると渋々褒め称えて笑ってみせる。


「するともう自分の漫画を誰かに見て欲しくて堪らなくなったんだ。どうにかしてこれを沢山の人に見てもらいたい。それには応募しか無いだろうと。それで漫画の後ろにある色んな新人賞に送ってみたんだ。けれど、何処もダメだった。そりゃそうだよね、基礎も画力もまるで無いからね……」


 そこで一層落ち込む道明寺がドロドロに溶けてテーブルと同化し始めていた。


「けれど、そんな時一つの作品を読んだんだ。いつも買ってる漫画に載った凄い上手い作品。何かの佳作に入ったと書いていた。その画が凄く上手くてね。それに話しが素敵なの、主人公の心がとってもイケメンで。私はその作品を見て思ったね、『この人みたいに画が描けて面白ければ、文句無いんじゃないかって?』。そこでその人のHPホームページを見つけてある日、近づいていた近場のコミケでその人の作品を買いに行ったのよ。そしたらそこで私を待っていたのが、凄いゴツイ顔の作者だった訳。もう人を何人か殺めてること間違いなしの作者が、そこで漫画を怖い顔して売っていたわ。それがそう、あそこで焼きそばをお代わりしてるうち等の部長よ」


 そう言っていつの間にか顔を上げていた彼女が馬頭の事を指差した。

 皆も一様に驚いた。


「驚いたわよ、そう最初は私も。ペンネームは普通に女性だったし、線が細く繊細だったから、てっきり女性だと思い込んでた。けれど、そこで買ってくれる人に一人一人丁寧に頭を下げるその姿を見たら私判ったんだよね、この人だからあの漫画を描けるんだって。見てるだけで判るなんて珍しいよね、まだ話した事もない他人なのに。それもあんなに怖いのに」道明寺は嬉しそうに笑っていた。その笑顔はとても嬉しそうだった。


「それで、自分も買った後、そこでずっと待っててみたんだ。一言話しがしたくて。しかし、怖かった。今思うと見ず知らずのあんな部長を待つなんて、私の命知らずも堂に入ったものだよね。しかし、部長はその時も優しかったよ。私が待ってるのをちゃんと判ってた。だから、終わりの片付けの時、向こうから来てくれた。慌てて逃げ出そうとする私に『今日は有難う御座いました』とまた言ってくれてそして、何か質問が有るのではと先に聞いてきてくれたんだ。私はどぎまぎしたけど、やはりここで聞かなかったら後悔すると思って聞いたんだ、『どうしたら貴方のように上手くなれるか?』ってね」道明寺は顔を輝かせていた。それはまるで今もすぐそこであった事の様に彼女の中では鮮明に繰り返されていたのだろう。


「そうしたら部長はその時こう言ったよ。『僕は上手くないしまだまだだけど、それでも上手くなる方法は知っている』って。それはとにかく『描く事』、それが一番の方法だって言った。そしてこうも言ってくれたんだ。『僕のように成らなくて良いから、自分らしく、自分の好きな物を精一杯描いて欲しい』ってね。あとは、その後から付いて来るからとね」


 道明寺は短くそう言い放った。その顔は何故か自分が言った事でもないのに、どこか誇らしげに輝いていた。


「創造する者にとって、それが一番といつも部長は言ってくれるからね。『描く事』とそして他の作品を多く見る事、その二つが基本だって」


「そう。そうしたら私馬鹿だからそこで泣いちゃってね。どうしてか判らないけど、どうしようもなく涙が止まらなくて。それでも部長は優しかった。私はあれほど恥ずかしい思いをしたのは初めてだったけど、何故だか嬉しかった。自分にそんな事を教えてくれる最初の先生だと。その時、本当に感謝した。それで聞いたんだ、どこの大学に通ってるのかってね。そしたら部長は

苦笑いして答えてくれたよ、私の高校の名前を言って」


 皆はそこで大笑いをした。老け顔にも程があるって。


 しかし、それは単なる道明寺の話しが面白かったからだけじゃ無かったのかも知れない。

 部長の話の面白かったのと、その話しを聞けたそこに居る全部の人間が何か誇らしいものを貰えて嬉しかったからなのだった。

 そんな事を普通はそこで聞けなかっただろう。けれでも、部長はそうゆう話を真剣に聞いてきた道明寺の事を判ったから、その気持ちに応えようとしたのだろう。

 そうゆう人だから、真実ほんとうの事を言ってくれたのかも知らなかった。


「私は、そこで決めたんだ。ここで私が良いと思う物を描き上げて、それで本当に良かったと認めて貰える漫画が描けたら、ここから送ってやるんだってね!」


「先輩……」


 環奈もその話しを真剣に聞いていた。目にはうっすらと涙が滲んでいたかも知れない。

 誰にも譲れない物がある。だから、頑張れるのだと、真剣に頑張れるのだと、その話しを聞いていて思うのであった。


「先輩なら必ず出来ます。私もそう確信しました!」


 それを聞いて、道明寺はヒシッと環奈を抱きしめた。


「あんたは顔も可愛いけど、心はもっと可愛いんだね? どうしよう。なんだか私はあんたを気に入ってしまったみたいだよ!」


 道明寺に再び拘束された環奈がもがいていた。


 しかし今度は誰も環奈の事を、助けようとする者は居なかった。

最後まで読んで頂けて有難う御座います。

区切りの良い所まで何とか読んで頂きたくて頑張りました^^。

面白かった時はどうぞ宜しくお願いします。もし良かったらランキングもぽちっとして貰えるとうれしいです。

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