第34話 文漫研 1
最後まで読んで頂けると嬉しいです。
自分の気持ち的には2日も遅れてやっと更新に漕ぎ着けました^^;。
さて今回はどんなエピソードになるか言えないのですが、楽しんでもらえるように幾つか考えてる話しの中で、この話しを出す事に決めました。それが上手く書けてると良いのですが、楽しんで貰えると嬉しいです。
評価やブクマ登録など貰えると凄く嬉しいです。最近は下がることも多く、落ち込んでいますが、なんとか登録貰える様頑張りたいと思います。
どうか最後まで宜しくお願い致します。
「あれは一体どういう事だったの。私が何度回っても何処にも居なかったわよね。ねぇ貴方達は何時ごろあの会場を出たの?」
学校の自分の席に着くなり、芹那が机の前に陣取った。先週の大騒ぎでの剣幕では無かったが、やはり今日も快調に飛ばしている。
蒼は大声で怒鳴ってる芹那を見上げる。―――― やれやれ今日は何が気に食わないと言うのだろうか?
「『何時ごろ出た』って、何の話し?」
怒ってる様でも、実はそれ程怒っていない。昨日は遅くなって帰宅した為顔は見なかったが、元気そうな顔をしている。もう大丈夫だなと、少し安心した。
しかし、そんな蒼の気持ちとは正反対に、彼女の心は穏やかではなかった。だって昨日も窓から見ていたが、蒼たちが帰って来たのは夜もだいぶ空が暗くなってからだった。気付いたが確かめには行けなかったのである。
「隣町で貴方達が行ってたって言うイベントよ。私なんか回るのに時間掛かりすぎて、2周しか出来なかったわ。お陰でこれ一つしか買えなかった。貴方たちも買ったでしょ、コレ?」そう言うと、芹那は大きめなサイズの信楽焼を机の上に重そうに載せるのであった。
「はい。開運に効く(?)と言われてるレッドちゃんちゃんこ狸!」
そこに今紹介のあった『信楽焼の狸』が置かれて蒼が驚くのであった。そう言えば、芹那が来た時は隣街に行ったと母親に頼んでいたのだ。それは明らかに『信楽焼見本市』で買った物だろう。しかし、よくこんな大きな物まで買った物だ。そして、何故それを学校に持ってくる?
「ああ、あそこは直ぐ出てきちゃったから覚えてないけど、早かったよ……」
「そう。私も中でやってた音楽フェスを見てて気付いたら夕方だったから、貴方たちも見つからないまま出てきちゃったわ。だから、貴方にはこれしか買えなかったけど悪く思わないでね? あ、でも……」そこまで言うと、芹那は顎に指を当てて少し考える。「もしかしたらもう買ってしまったかな、蒼なら箱買いとか?」
蒼は首を横に激しく振った。
「有難う。これは芹那の気持ちとして有り難く受け取っとくね……」どうしたらそんな思考に到達するのか判らなかったが、芹那の気持ちを汲んで狸の置物を受け取るのであった。
返事を聞くと満足げに芹那は席に着いた。
何はともあれ彼女が元気なので全て良しとしよう。狸の置物も心なしか満足気だし。
芹那を見送りながら振り返ると、狸の置物に驚いていたアテナを他所に、横のブリュンヒルデもそれを見て目を輝かせてるのであった。基本的にブリュンヒルデもそうゆう限度を知らないタイプだからな……。
何事も無く、静かな朝が訪れようとしていた。
二時限目の休み時間になって、廊下にふと目を向けると蒼は何かを見つけて慌てて目を逸らす。
いけない。うっかり“それ”を見て、気付いてしまう所だった。
急に話しの途中で下を向いた蒼を見て、ブリュンヒルデは不思議そうに顔を覗き込む。
「蒼さま……。どうしましたかね?」
「しっ。今は少しだけそっとしておいて……」
その言葉に、一緒に話していたアテナも蒼の様子に気付く。いきなり変な行動に言葉をかけようとすると、その顔の前に手が伸びる。
少しだけ顔をあげて蒼がチラッと廊下を再確認する。
すると、やはりそこに一人の女生徒がじっとこちらを見てるのであった。
その行動に、アテナとブリュンヒルデも視線の先に目を凝らす。
そこには、今教室に入って来ようとしてる呪歌が居た。
呪歌がそれに気付いて自分を指差す。しかし、蒼はそれを目を瞑って首を振る。すると、私でないとすると……と横を見れば、怪しげなメガネの女生徒が静かに教室の蒼を見つめてるのであった。
大人しそうな子で、周りの女生徒が騒ぐ中にあっても、あまり明るい雰囲気が無い。それに最近は珍しい丸い縁のメガネをしている。別の教室に来ている為そうなのかも知れないが、俯いて顔が判らない様に立ってる様にその時は見えた。
「呼んで来るか?」
横に居た呪歌が蒼を指差すと、その女生徒が静かに頷く。その行動に蒼は諦めたように頭を下げるのであった。
呪歌が近づいてくると、蒼は判ったと目配せして立ち上がった。相当に気乗りしない様子である。
「貴方との関係はもう終わったのよ。もうこれ以上付き纏わないで……と言っていた」
「嘘だっ!」蒼は間髪居れずに呪歌の言葉に突っ込みを入れた。
「知らない人が聞いたら本気にするじゃないですか? 何でそんな話しを真顔で言うんですかね……呪歌さんは」
蒼は、疑心暗鬼な表情を浮かべてるブリュンヒルデを見ながら呪歌に文句を言った。ブリュンヒルデもそうだが、アテナも蒼の顔をまじまじと見てる。
「大丈夫。私のアドリブだから、気にするな」
「気にしますよ! どこからそんな作り話を考え付くんだか……」
呪歌の話しに芹那が笑い出すと、蒼は愚痴を言いながら廊下に向かうのであった。
「どうしたの、わざわざ僕のクラスまで?」
人が頻繁に出入りする教室のドアに近づいて蒼がメガネの女生徒に声をかける。
どうも知り合いのようであった。
教室を見ると、ブリュンヒルデが笑顔で蒼を見守っている。その横ではアテナと芹那が面白そうにこちらを見つめてるのが腹立たしい。
「あんたが先週部活休んだから、部長の伝言を伝えに来たのよ。少しは感謝しなさいね」
「そうか……。でも何か怒ってるの、道明寺?」
すると、蒼が道明寺と呼んだ女生徒が少し顔を上げて蒼を見た。
メガネの為に顔は良く見えないが、口調が少し高圧的だった。
「いや、怒っては無いわ。ただ、その為にワザワザここまで来たのが鬱陶しかっただけだから……」
「…………」
一般的にはそれが怒ってると言う事なのだけれど……。蒼は心の中で謝っていた。
「で、伝言ってなんだろ?」
すると、蒼はすぐに道明寺に聞いてみた。これ以上彼女を苛立たせるのは得策でないから。
「今週の部活は“火曜”に変更になるって事。つまり明日だね。いつものように作品を持って時間に集合よ。今週は何かの都合で一日繰上げらしいから」
「え、明日になったの? まだ出来上がってないよ……」
それを聞くと、蒼は頭を抱えた。先週も忙しくて、それどころではなかったのである。しかし、月に一度の発表なのは判ってた。世界の平和を守っていたと言っても、許して貰え無いのは明白なのが残念でならなかっただけである。
「それは自分の都合ね神憑。明日までに持って来れないと2ヶ月連続だから、これは相当な罰が下ると思うわよ。今回の罰は高くつくだろうから」
すると、一言呟いて道明寺が少し笑った。なんだか罰などと穏やかな話しではない。
確かに今回提出できないと、2ヶ月連続にカウントされるのは間違いない。先月の時は1週遅れで勘弁して貰ったが、先輩のラーメン屋のバイトを1週間肩代わりしたのだ。それを考えると2ヶ月連続の罰が怖くてどうしても回避せざるを得ない状況になった。
蒼の頭に静かに笑う部長たちの顔が浮かんできた……。
「ま、あなたがどんな罰を受けるのかはどうでも良いけど、一応判ってないとまずいから言いに来たよ。出来てないなら、今日は徹夜になりそうね」
「有難う知らせてくれて。判ったよ。こんな事してられないな……」
そう言うと、道明寺と呼ばれた女生徒はくるりと背を向けて自分のクラスの方向へ歩き出した。全く好きになれない性格である。知っていたのなら伝言を一週間も放置しないで貰いたいものだ。その後姿もなんだか可愛げがなかった。
先週はブリュンヒルデに出会って忙しすぎて部活を休んだのが痛かった。だが、考えてみるとそれが無くてもきっと終わって無かっただろう。幾らブリュンヒルデのせいにしても、問題は解決しないのだ。だけどその後のアテナやレヴィアタンちゃんの事は、何処から舞い込んでくるのかと思いたくなる節があった。
「しかし、どうしよ。時間が……」
だが、自分で言ったとおりでそんな事を考えても仕方ない。
こちらを心配そうに見ているブリュンヒルデの為にも、ここはなんとか思いついて、明日の部活を切り抜けないと――――。
「うん?」
だが、教室に戻ろうとした時、不意に何かの視線を感じて蒼はそこで立ち止まった。
廊下の奥の方である。
何か、確かに自分を見ていた視線と目が合ったような気がしたのだった。
教室から出て、もう一度そこを見たが、廊下には自分を見ているような人間は誰も居なかった。
「…………?」
いつもの友達が幾人かで騒いでるのを見て、気のせいだったのかと教室に入って行く事にした。
頭には明日の部活までの時間がカウトダウンを始めてるのであった。
戻ってくる蒼の姿に芹那達が何しに行ったのか聞いてきた。
その姿を再び教室の後ろのドアから見つめてるひとつの影があった。
その事を、蒼はその時まだ知らなかった…………。
最後まで読んで頂けて有難う御座います。
今回もなるべく短めにエピソードが終わるようにしたいので、頑張って進めたいと思います。
どうぞ次回も宜しくお願い致します。




