第32話 一番好きな場所 1
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繁華街に向かって2人で走ってる蒼とブリュンヒルデ。
信号が変わるのを待ちながらも2人で息を切らして顔を見合わせて少し笑う。
しかし、蒼が済まなさそうにまた頭を下げた。蒼が朝寝坊した為、走らないとお目当ての映画の時間に間に合わないのだ。
その日は、待ちに待った日曜日。
蒼がブリュンヒルデに街中を案内すると言った日がやって来たのだった。
思えば、ブリュンヒルデが来たその日、世界の終末を宣言するフェンリルが現れて、誰にも聞こえてない様なので仕方なく戦おうと向かったら空からブリュンヒルデが降りて来てフェンリルを斃してくれたのだった。
それからと言うもの、アテナが来たり、レヴィアタンちゃんが来て、大天使ガブリエル迄が地上に降りて来て、毎日が忙しくおちおちブリュンヒルデに街の案内も出来ない始末。
だがしかし、それがやっと果たせるとあって蒼はいつにも増して張り切っていたのだった。
予定がびっちり入って居る為、朝も早くから出ることにしていた。何しろ、ブリュンヒルデに見せてあげたい場所が目白押しなのだ。予定も分刻みなのである。だが、それが蒼の朝寝坊のせいでこの状況であった。
「ごめんね、朝からブリュンヒルデまで急がせてしまって。だけど、この映画どうしても一緒に見たかったから……」信号が変わり、蒼は謝りながらも、映画館の方へ走り出していた。
「はい、大丈夫です。私も映画と言うのを見るの初めてなので、凄く嬉しいです。だから走るのなんて気にもなりません」
ブリュンヒルデは必死に謝りながら走る蒼に笑顔で答えていた。その顔が嬉しそうに笑ってる。
その笑顔を見ると、昨日まで行くべき所を必死に考えてきた甲斐があったと思えた。しかし、まだまだ楽しい一日はこれからなのである。ブリュンヒルデにもっと楽しい思いをさせなければいけない。
上映時間の5分前について、カウンターにチケットを見せて入り口を通過する。指定券を買ってあるので、すんなり中に進む。
朝も一番の上映時間だが、予定が詰まってるので仕方なかった。だが、それも色々考えての行動だった。ひょっとしたら家では隣の芹那が家に乱入してきたりして、今日の一日の予定が全てパアになるかも知れないと考えたのだ。朝から芹那に抑えられては、せっかく考えた予定が水の泡に成りかねない。蒼は、その日の自分の判断は間違って無いと確信していた。
――――蒼の家の前。
インターホンを押して出てきた有風の前に芹那が立っていた。
「あら、ごめんなさいね。蒼ちゃん今日は何処かブリュンヒルデちゃんを案内するとか言って、確か隣町の信楽焼きの見本市に行くと言ってたと思うけど……」
「フ……。図られたか」―――― 芹那は、有風の返事を聞いて独り言を呟いた。
芹那はキラリと光る目をさせて、有風に礼を言ってすぐその場を後にするのだった――――。
有風に悪いと思ったが、行き先は嘘を言ってもらうように頼んでおいた。
そうしないと、ゆっくりブリュンヒルデを案内出来ないと思ったからである。
有風も、芹那の事は大好きだったが、自分の息子の事になると見境が無くなる性格を知ってるため、ブリュンヒルデの為に協力してくれる事になったのである。
映画館では、やはりパンフレットとポップコーンだろう。
映画好きの為、必ずパンフレットを買って映画を見るのだが、今日は傍にブリュンヒルデが居たので他にも何か食べたいのではないかと、売店の前にブリュンヒルデを連れて行ったのだ。
しかし、ブリュンヒルデは見るもの全てが美味しそうに見えるがどれも判らない為、見本とにらめっこを続けてた。だが、それも時間が無いので蒼も焦りだす。
それに気付いたブリュンヒルデの出した答えは「蒼さんの好きな物でお願いします」だった。ああ、こうなる事は予想出来たから、時間も無いのに最初からすれば良かったと、自分の思慮不足を呪うのだった。もう、予告編が終わる頃だろう。映画を見てる最中は食べる音を出したり、大声で話してはいけないと教えて中に入るのだった。
それから程なくして、映画が始まった。
座席も入りやすい中央の通路から二席を取っていた。結構人気の映画の為、予約して正解だったと言える。見える範囲ではどこにも席が無かったからである。ブリュンヒルデに嫌な思いをさせないで良かったと、自分で自分を褒めてやった。
映画は『指輪の物語』という映画の続編のファンタジー物で、今度は苦労して滅びの山に捨てた指輪を小人族の呼びかけで、再び取り返しに行くというお話しで面白かった。
前作のパート14を見てるので、毎年見続けないとどうなるか不安のハラハラドキドキで画面を見続けているのだ。因みに、パート20で完結するらしい。どこにそれだけの内容があるのか疑問だったが、どうしても捨てた指輪を取り戻した後が気になるので、見続けるしかないのだった。取り戻したら、また世界を滅ぼす王が復活するのでは無いだろうか?
だが、その映画にはなんだかブリュンヒルデに似た者たちが結構出ていて、蒼は不思議に思った。妖精族が特に似ている。綺麗で、薄く靄が掛かってるよう。立ち居振る舞いがなんだか穏やかで似ているのだ。
「なんだかさぁ、あの妖精族の白い人、ブリュンヒルデに似ていないかな?」隣で画面を静かに見ているブリュンヒルデに小声で聞いてみた。
「ふぇ、ほうでふか?」
「うん?」
おかしな声でそう言ったブリュンヒルデがこちらを見ると、ほっぺたを膨らませて蒼を見るのであった。
「どうしたって言うの?」
驚いてブリュンヒルデの背中を叩いて吐き出させると、ブリュンヒルデは咳き込みながら答えるのであった。
「食べる音を出しては行けないと聞いたので必死に我慢しましたが、口の中の水分を全部取られて飲み込めなくなりました。すみません……」
蒼は、周りの人に凄い目つきで睨まれていたが、それでも思わず笑わずには居られなかった。ブリュンヒルデの顔が、まるでリスのあの口のようにデコボコだったのだから。ブリュンヒルデも申し訳無さそうに笑っていた。
そんな事もあったが、ブリュンヒルデは映画が面白かった様子で居てくれたので蒼も嬉しかった。
特に、自分には空を飛ぶシーンが好きだったが、きっとブリュンヒルデにはそれは自分も出来るから、どこが面白かったか後で聞いてみようと思うのだった。
恋愛物を選ぶべきだったかも知れないと最初少し思ったが、ブリュンヒルデは楽しそうに見ていてくれるので、やはり自分の好きな物を見せて正解だったと思い直すのであった。
「ごめんね。僕の好きな映画を見せてしまったけど、ブリュンヒルデは面白かったかな?」
映画が終わり出口に向かう通路で蒼は、気になっていた事を聞いてみた。
沢山の人が思い思いの言葉を言い合って進む中、ブリュンヒルデは蒼の言葉に直ぐさま答える。
「はい。とっても面白かったです。あれが映画って物なのですね」
髪をくるっとさせてこちらを向きながら、目を輝かせて蒼を見つめてくる。自分の好きな物と一緒で蒼も嬉しかった。
「ただ、私より弱そうな巨人族や兵士ばかりなので、あまり結末は納得できませんでしたが。あと、お菓子を食べるのに音を出せないのが一番困りました……」
それは、ごめんね。その言葉を聞くと、映画が本当に面白かったのか疑問が残こる蒼なのであった……。
最後まで読んで頂けて有難う御座います。
この休日のエピソードをどうしても日曜日に更新したくて、やってみたり^^;。
そうゆうの無駄な所に頑張ってしまうのがまたダメな所ですね。また後半も何とかしたいと思って勧めていますので、どうぞ次回も宜しくお願い致します。
 




