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一蓮托生!  作者: 怪盗エース
初めの一歩
8/15

侵入者

☆と☆の間は、魁人視点になっています。

「さぁて、どこにいるかな……」

 私は、耳をすませた。お、移動中だなこれは。この先は……二階の通路? 足音は、徐々に私の真上になってきている。

「魁人。二階の一番奥の部屋で待機していて。それと、見つけたら――捕まえて」

「分かりました。では、舞様は応接間でお待ち下さい。すぐに連れてくるので――」


 それじゃあ、これからは魁人に視点を移そうかな! そっちの方が面白いと思うし……ね?

 ほら、ハイタッチ――! 私は手を出したけど、華麗にスルーされた。ノリ悪いなぁ……。



                               ☆ 



「いちいち面倒なことは僕に押しつけやがって……!」

 僕は、珍しく怒っていた。まぁ、舞様のこともあるかも知れないが――。歩いている音が廊下に響く。基本的に気配を消して歩くのが得意としている僕が、今は違う。

 舞様の父――元組長は、偉大な方だった。僕を唯一助けてくれ、人を信じるということを学ばせてもらった。そんな素晴らしき方の家の中に、一体誰が侵入したって言うんだ!


 僕は舞様に言われたとおりに、待機していた。すると、誰かの話し声が聞こえた。

「……はい。まだ捜査中なので……あとで、また連絡します」

 その会話が耳に届いた瞬間、僕は立ち止った。これ以上下手に歩くと、音を立ててしまう。相手は、このドアを開けた先にいる。影が揺れているのが見えた。

 一呼吸置き、僕は静かに、そして素早くドアを開けた。

「……!?」

 相手は、驚いたようにこちらを見た。一瞬で、どんなやつかは分かった――警察だ。

 若い――というか、舞様を同級生くらいのくせに、結構きこんだあとがある制服。これで警察じゃなかったら、コスプレ男として僕が瞬殺してしまう。


「誰ですか」

「……俺は警察の人間だ! ここは、浅野組の……っ!」

 僕は躊躇なく相手の後ろに入り込み、首を絞めた。それなりの抵抗をするが、足りない。

「はなせっ……くっ!」

「運が良いですね。もし、舞様があなたを捕まえてと言わなかったら……僕はここで、あなたを殺していました」

 手を離すと、簡単に床に倒れた。その隙に、縛り上げる。

「俺をどうするつもりだ!!」

「……騒がないで下さい。耳障りです」


 何か、不思議な胸騒ぎがした。

 この人がここに現れたせいで、何かが変わるような気がしてならない。


「……おい! 聞いてるのか?!」

 どうやら、乱暴に引きずっていたらしい。何故かボロボロになっている。

「あぁ、すみません。つい、考え事を」

「すみませんって謝るくらいなら、この縄を解け!」

「もう――」

 小さくため息をつき、僕は舞様が待っている所へと連れて行く。


 なんだろう。会わせたくないような気がした。



                               ☆



 はいはーい! 皆さんお待ちかね、私が帰ってきましたよー!! 私は自分の両手でハイタッチをした。もう、魁人には頼まない。

 ん? それより話を進めろって? 全く、しょうがないですねー……



 目の前に放り出された敵は、どこからどう見ても警察だった。

「捕まえてきました」

「有難う」

 なんだろう。どこかで見たことのあるような顔をしているな……一体どこだ?

「浅野舞! お前が浅野組の組長だったなんて……!」

「え、なんで私の名前知っているの? 誰?」

 一瞬、ストーカーか何かとは思ったけど、警察ならそれくらいの情報を掴んでいるだろう。私は彼に近づいた。

「おい、嘘だろ!? 隣のクラスの宇佐見だ!」

「ウサギ?」

 私が聞き返すと、珍しく魁人が笑った。その下では、ウサギ(・・・)が顔を真っ赤にしている。

「う・さ・みだ! どこをどう間違えたら――!」

 あぁ、そう言えばいたな。確か名前は、宇佐見……なんだっけ? 学校では優香以外の人の名前、覚えていないもんなー。私は頭を掻いた。失敗失敗。来月までには全員名前だけでも把握しておこう。


「それで? なんでこんな所にいるのさ、ウサギ。もうこの回終わりそうなんだから、要点まとめて喋って」

「俺はウサギじゃねぇ! 俺は……お前を捕まえるために、ここに一人で侵入した。それだけだ。だから、今からお前達を――」

「ほう。なのに自分が捕まっているのですか」

 魁人はクスクスと笑い、ウサギに向かって言った。どんどん熱が入っているのが分かる。

 ウサギも負けじと反論をしているけど、何かこう……楽しそう。


 この人……面白い!

「一人で乗り込んできただけ、褒めてあげる。ねぇ――取引しない?」

「……は?」

 私は、拳銃を取り出した。思っていなかったのだろう。ウサギは目を見開いた。


「本来、私たちみたいな裏の世界で生きている人は……自分の正体を知られた時点で、目撃者を殺している。でもここの浅野組は違う。『信頼』と『命』を誰よりも大切にし、極力人を殺さないようにしている。でも、警察にばれたんだから――死んでもらおうと思った」

 だけど、と私は付け加えた。


「たった今、気持が変わった。どう? 私の部下にならない? 警察の仕事をしながら」

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