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一蓮托生!  作者: 怪盗エース
初めの一歩
7/15

耳の良さ

 学校から帰ってくると、そこには仁王立ちをしている魁人がいた。昨日まで騒がしかった部下たちも、今日は魁人の指示で皆いなかった。これはこれで、静かでいいかも……なんて考えている間に、魁人が痺れを切らした。


「……高かったんですよ! あのとき、貴方は財布をもっていなかったのですか?! ……持っていましたよね。なぜ、すぐに出さないのですか! 自分のお小遣いは使わずに、可愛い部下の金を使わせるなんて、どうかと思いますけどね。どうです、僕の主張は間違っていますか?!」

「お、ぅ…………」

 間髪を入れずに言われた説教には、ツッコミが出来なかった。だが、自分のことを『可愛い部下』と言っている所は納得できない。


「で、でも! おじいさんがおかしいと思いません……?」

「あぁ。それは一理ありますね。ベンチにコンタクトレンズを置いてなくす人なんて、初めて見ましたし。――はい」

 魁人は手を出した。予想していたけど、お金は一円もないです! なんて言う暇はなかった。

「請求です。料金は――円」

 とてもじゃないけど公開できない値段に、私は小さく悲鳴を上げた。


「なんじゃそりゃ!? 詐欺だよ詐欺! あんた馬鹿正直にその値段出したの?!」

「警察に通報されたら、身元確認されるじゃないですか――!! そうしたら、僕はなんて答えればいいのですか?! 仮に、貴方の保護者として登録していますが、仕事は偽装していて……」

 魁人の声は耳に届いていたけど、私は違う事を考えていた……あ、ふざけたことじゃないですよ? 私は、口の前に人差し指を立てた。

「どうし……!」

一人・・、多いよ」


 私は周りを見回した。今聞こえているに、違和感がある。

「今日、何人部下いるの?」

「僕と舞様を含め、20人です。今の時間だと……誰も、出這入りはしていないはずですが……どうしました?」

「招いていない人の足音・・が聞こえるよ」




                               ☆



 昔から、耳だけはすごく良い方だと思っていた。人に話を聞き返したことがないし、遠くから名前を呼ばれてもすぐ返事出来るくらい。でも、それには理由があったということを知ったのは、私が中学二年生くらいの頃。

 一人で――何百メートル後ろには魁人も護衛でついてきていたけど――人が少ない路地を通り過ぎている時だった。

「……ん?」

 何かの、変な声が聞こえた。初めは聞き取れなかったけど、次第に大きくなって私の耳に届いた。


「ほら、早く金を出せ!! でないと、こいつを殺すぞ!」

「い、今やっていますから……」

 そんな会話だった。でも、周りを見ても誰もいない。ふと顔をあげると、そこには大きな一軒家が建てられている。私は魁人を呼んだ。


「魁人、この家の中に強盗が……」

 初めは信じてもらえなかった。また何か変なことを言っているよ……と笑われた。でも、それどころじゃなかった。は、私の耳に容赦なく届いてくる。


「金が少ない! さては、隠しているな――こいつを殺す!」

「やめてください! 本当に、これしかないのです……!」


「魁人、信じて!!」

「ったく、これで恥をかいたら給料あげてもらいますからね……おらっ!」

 魁人は小さく舌打ちをし、ガラスを割って侵入した。もっと何かいい方法はなかったのだろうかと心配しながら見送っていると――

「……マジかよ!」

 魁人の声が聞こえた。行ってみると、そこには完全に伸びている強盗とそれを掴んでいる魁人。何が起こったか分からなく、魁人に対して震えている女性と子供がいた。




 この事は、すぐに私のお父さんに伝わった。この時はまだ生きていた。

「素質はあると見込んでいたが……やはりか」

 お父さんは、分かっていたように頷いた。

「やっぱり? それってどういうこと?」

「舞。今まで内緒にしていた事がある。多分、お父さんたちの家系に生まれた人は聴覚が人並み以上――聞こえないであろう範囲のでも耳に入ってくるという能力を備わっている」


「え、なにそれ!? 物語の主人公は少なくとも一つくらい長けているものがあるって言うのは嘘じゃなかったんだ。でも何で、今まで教えてくれなかったの?」

 ちょっとふざけて言った見たけど、お父さんの顔は深刻な顔だった。

「悪い話じゃないが……誰かにばれたら……」

 耳が良いと知った私でも、後半部分は聞こえなかった。一体、何を言おうとしたんだろう?

 そう思ったけど、別に深く聞くことは無いかと思ったので、聞くのはやめた。


 いつか聞こう、なんて思っているうちに、私のお父さんは死んでしまった――



                               ☆


「たまに過去を公開して、読者の気を引かせるのもよし……」

「何しているのですか」

 私の持っている『自分が書いた本を、誰かに読んでもらえる方法』の本を見て、魁人は言った。

「ん? たまには真面目な話もいいかなぁ――とぉっ!?」

 せっかく一人で盛り上がっているのに、魁人の殺気で冷めてしまった。


「分かったって……さぁ、探しますか――侵入者!」

魁人「……」

舞 「なに? 考え事?」

魁人「コンタクト代の話は、どこへ行ったのでしょう?」

舞 「いや……その……また来週~!!」

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