バトルするよっ!②
☆より下は、宇佐見視点で書きました。
相手のボスは、形相を変えて私に走ってきた。
「たかが女が、浅野組語っていたなんて知らなかった俺が馬鹿だった。しかも、十分で終わらせるだと?! 笑わせるな!」
「……言葉、汚いですね。私の方がよっぽどまし!」
ボスは、懐から銃をとりだした。相手が構える前に、私は金属バットを投げた。これで一本は役目終了。お疲れ様。それは、ボスの目の前に転がった。
「この……!」
ボスは見事にこけ、バランスを崩した。が、すぐに私に向けて弾を一発。私はしっかりと弾を見つめ、金属バットで――打ち返す。
「なぁっ!??」
私は右足に、金属バットを振り下ろしてボスを完全に転ばせた。何が起きたか分からない顔をしている間抜けな顔に、私は仁王立ちで立って金属バットを頭に乗せた。
「動いたら、頭蓋骨バラバラになりますよ」
「っ……!」
「ぎゃぁぁぁ!!?」
遠くで、声が聞こえた。この声が魁人だったら私はきっと大笑いしていたのに。悲鳴をあげたのは――大体、五十人くらいの敵。ごめんなさい、今数えました。
魁人は体術を得意としている。相手が凶器を持っていても全く動じなかった。次々と相手をなぎ倒し、凶器を遠くの方に投げる。取りにいけないように、だ。
「頑張れー。ファイトー」
私は、棒読みで魁人を応援した。聞こえないような小さな声で言ったつもりが、魁人の耳に届いていたみたいだ。
「手伝ってくれればいいのに……!」
思いっ切り一度睨まれ、戦闘に戻った。私は苦笑いをしてから、ボスと向き合う。
「……負けを、認めて下さい。あなたたちは私たちに勝てない。これ以上続けても、自分の部下が傷つくだけ」
「畜生……」
私は大きく金属バットを振りあげた。
「認めないのなら、仕方ないですね。さようなら」
「ま、待て!! 分かった、分かったから殺さないでくれ――!!」
私はとびっきりの笑顔を作って、金属バットを止めた。その距離、ボスの顔と僅か数センチ。わ、泣いてる泣いてる。最近の男って、なんでこう弱虫なんだろうね……。
「魁人、終わり!!」
「はい」
魁人は短い返事をし、掴んでいた相手にとどめを――さした?! もう、ほとんどの人が床に倒れている。全く、やりすぎだ。
「では、この紙に署名を。これはもう、同盟ではありません。あんたたち全員、私の部下になりなさい」
「……えぇ?!」
「それともなに、断るの?」
魁人が、殺気をむきだしにしてボスを睨む。もう、魁人の強さは部下が倒れているのをみただけで分かっただろう。
「……分かりました。組長」
相手は、素直に署名した。――よし。
「では、今日はこれで。魁人、帰ろう」
「もうちょっとやりたかった……分かりました」
「あいつら、鬼かよ……」
「ボス、なんで名前書いちまったんですか?! 俺たち、あんな化けもんみたいなやつらにつきたくなかったっすよ!」
「仕方ねぇだろ! おい、早く病院行くぞ!」
背後で、そんな声が耳に届いた。
「ねぇ、手加減って言葉知ってる?」
「知っていますよ。『相手や状態に応じて、扱いの厳しさの度合いをゆるめること。てごころ。手勝手』ですよね、引用は、goo辞書です」
「そんなこと聞いてないわっ!!」
お、我ながら良いツッコミ。なんて思いながら、ビルをあとにした。
☆
「……ウソだろ……!?」
宇佐見は、浅野組の組長の顔を見て固まった。なにやらツッコミをして、満足そうにビルを出ている姿を携帯で撮った。隣には、軽く返り血を浴びている男。なんだあいつら?!
「いやいやいや……浅野組って……あの浅野か?」
ありえない。俺の隣のクラスの浅野が――浅野組の、組長……!
――あ、馬鹿! 作者この野郎、なに俺の心の中公開してんだよ!! 個人情報だぞ。少しは考えろ!
え? ここは少なくとも書きたかったから、仕方ないって?
チッ……まぁ、今回は許す。今後は、しっかりと主人公の視点で書けよ?!