バトルするよっ!①
「あー……もうちょっと厚着で来ればよかった……」
いくら雪が解け始めてきたと言え、冬はやっぱりさびぃーなー……
「古いです。普通に寒いと言ったらどうでしょう?」
「なんで私が考えていること分かるのよ?!」
「長い付き合いですから。なんとなく舞様が考えていることくらい、分かりますよ」
「腹立つなー……」
吐く息が、真っ白になっては消える――昔、これでタバコごっこしてたな。と回想をした。そう言えば、昔お父さんに煙草を勧められたっけ。結局吸わなかったなぁ。
ふと横を見ると、本当に煙草を吸っているやつがいた。全く、大学生のくせに……。
「あれぇ~? 魁人君。まだ二十歳じゃないよね?」
「っ……良いじゃないですか。別に」
「煙草って、周りにいる人の方が肺に影響あるんだけどなぁー。どうしよう、お父さんの後継ぎの私が肺がんにかかったら……」
「……はぁ」
魁人は、煙草を捨てて足で消した。お父さんには弱いんだな、本当に。それにしても、魁人とお父さんってどんな関係だったんだろう……?
と考えつつも、私と魁人は隣町まで足を運んだ。
場所は、とある廃ビルの地下。本当はもっといい所を選んでいたけど、さっきの話を聞く限り、そこはきっとマークされているだろう――私たちの敵に。
手が冷たくなってきて、そろそろタクシーに乗ろうか迷っていた矢先、魁人が足を止めた。
「ん? どうし……」
「こちらからいきましょう。今、パトカーが通っていました」
「いいじゃん。別に、私の正体知っているわけじゃあるまいし」
「……貴方は馬鹿ですか? 夜中に金属バット持って歩いている人がいたら、変質者ですよ」
魁人は、私の手を強引に引っ張って裏路地へと走っていった。
「はぁ、はぁ……着きましたよ」
魁人は、息を整えてから私に言った。二人で、ざっと二十分近くは全力疾走してきただろう。
「ちょ、ちょっとタンマ……これ、結構重いんだって……」
魁人に頼んでも持ってくれなかった金属バットを地面に置いて、私もしゃがんだ。
「全く……では、先に行っています」
「あ、それは嫌だ! 待って!」
あれだけ走っても足りないのか、魁人はビルへと突っ走っていった。私は舌打ちをして――おっといけない。可愛いヒロインが台無しだ――私は、華麗にビルまで歩いた。
「おぉ、あなたが浅野組の組長ですか。随分とお若いもんで」
「……はい。待たせました」
地下へ行くと、もう相手は待っていた。あれれ、人数が意外と多い……絶対、二十人以上いた。今、私に声をかけた人がボスだろう。何か、オーラが違った。私は持っていた金属バットを後ろに隠した。まぁ、相手には見えているだろうけど。
「サツが来る前に、さっさと交渉しましょう。この前話した通り、うちと同盟を組んで欲しい」
私は、こいつらと話で交渉する気はなかった――この質問に、私が満足するような答えがでなかったら。
「なぜ、あなた達の仲間が一人捕まったのに助けようとしていないのですか?」
「……それは、そいつの失態です。俺達には関係ない。必要のないやつは、切り捨てないと後で厄介になる。そうでしょう、浅野さん?」
あぁ、こいつらダメだ。私はため息をつき、魁人を見た。もう、察してくれただろう。魁人は前にでた。
「組長はあなた達と同盟を組みたくないそうです。今すぐ、失せて下さい」
「は?! どういうつもりだよ? ここの団地を仕切っているのは、俺たちだぞ? もし、今回の交渉が成立しなかったら、困るのはお前達も同じじゃないか?」
「私は、仲間を大切にしない人は嫌いなの。あんたたち全員倒してここを乗っ取ることに決めた!」
私が叫んだと同時に、魁人は相手の中に突っ込んだ。
「初めからそのつもりだったのか?! おいお前ら、こいつら殺せ! たった二人だ!」
『了解!』
「魁人、負けたら明日のご飯なしだよ!」
「え?! それは困る!」
魁人は焦りながらも、慎重に彼らに立ち向かった。さて、私もそろそろ暴れさせてもらおうかな。私は金属バットを、ボスへ向けた――予告ホームラン。
「十分で、終わらせてみせましょう!」