幕間~ダッシュ!~
「待って下さい!」
「待てって言われて待つ程私は馬鹿じゃない!」
「おい、あいつ速くねぇか?!」
私は、必死に逃げていた。今日は、絶対に捕まりたくない! 私は、曲がり角が多い町の中へと走り込んだ。
「はぁっ、はぁっ……」
どんなに体育の成績がいいとしても、女子と男子の体力には差があり過ぎた。頭を使わないとね――
……よし。ひとまず落ち着いたところで、現状を教えましょう。私は人が多いデパートへ足を運びながら周りを見渡した。まだ、見えないから大丈夫……
何から逃げているかと言うと、魁人とウサギから。と言うか、登場人物的に考えてもそいつらしかいない。
そして今日は、期間限定の苺タルトの販売最終日! さらに言えば、欲しかった物が安売りしている!
ずっと前から買おうとしていたけど、仕事が忙しくてそれどころじゃなかったんだよね――!
それで、なんで追われているかと言うと……
「……見つけた……はぁ、はぁ……!」
「ぎゃぁっ!」
伸びてきたウサギの手を避け、私は全力疾走をした。ここで距離を離しておかないと、捕まる。すると、前方に魁人の姿が見えた。……しまった!
「……舞様。お金、返して下さい」
「チッ……挟みこみは卑怯だ!」
「あなたの方が、よっぽど卑怯だと思いますけど?!」
そう。少しだけ――本当に少しだけ、私はこいつらからお金を頂戴した。ばれない程度に盗んだつもりだったのに、意外とあっさり見つかっちゃった。次はもっと技術あげないとなぁ……。
「はぁ……」
仕方ないな……私は、魁人の腕を引っ張って体を引き寄せた。そして、その勢いで私は倒れる。ようするに、押し倒された状態に、ね?
「っ、舞様?!」
後ろで見ているウサギも、目を丸くしている。私は素早く、魁人の手で私の腕を掴ませる――よし。
「キャーっ! 痴漢です、助けて下さい!」
「なっ……!」
周りにいた人は、当然のごとく冷たい目で魁人を見つめる。
「隙あり……っと!」
私は魁人を突き飛ばし、すぐににエレベーターに乗った。ハッハッハ! 女の特権で大勝利!
閉まる瞬間、ウサギが前に出て周りをなだめている姿が見えた。
「俺は警察です。この人を連れていくので、ご安心を……」
わ、完全に今睨まれた。魁人ならともかく、ウサギって自分の立場わきまえてんだろうかね……。
無事買い物できて、私は満足そうに店を出た。さぁて、後はお楽しみのタルト! 私は近道を選び、人通りの少ない道を選んだ。
「あぁ――生きているって最高だね……!」
すると、後ろから誰かに両腕を掴まれた。
「っん!?」
「もう逃げられませんよ」
この上ないと言うほど腹黒い笑みを浮かべている魁人が、目の前に立った。それじゃあ、掴んでいるのは……
「……あんたを裏切るつもりはない。だが……俺の金、返せ!」
ウサギだった。こいつ、こんなに力強いのっ?! もう一度叫ぼうかな……
「変な意味になりますが、口塞ぎますよ?」
「わわわ、ごめんなさい! もうしませんって! 許して――!」
「説教は帰ってからにしましょうね」
ウサギに引っ張られながら、私は家に連れて行かれた。
「あっ、でもタルト! いやだいやだ! タルトォォォ――……」
最後の抵抗で駄々をこねたが、可愛げのない魁人たちは無言でデパートを後にした。
☆
「なぜあなたはいつも突拍子な事をしだすのですか?! 学校では秀才と呼ばれるほどなのに……! 大体、自分の立場をわきまえて下さい! あんな事されたら、僕が変質者と思われるじゃないですか?!」
「だ、だって……タルト食べたかったんだもん……しかも、一話で魁人のこと不審者って作者が……」
「作者は関係ないのです! ったく、何でこうもまぁギャップが激しいんでしょうね……」
「ギャップ萌えとか言うじゃん……」
そんなのなくても、私は可愛いって設定でしょうけど――!!
「それで、なんでウサギまだいるの? もう帰ってもいいよ。……そう言うことじゃねぇよ! なんて言わせない」
「この野郎!」
「人の話を聞いて下さい!」
なんて賑やかで楽しんだろう。私は苦笑しながら、二人を見た。
ずっと、こんな状態が続けば良いのに……な。
魁人>舞>ウサギ について。
舞 「なんで私主人公なのに魁人より下なのよ?! 私、組長よ。あんたら部下でしょ?!」
魁人 「とりあえず、僕はあなたの保護者ですから」
ウサギ「俺に自由をくれ! ――というか、金返せよぉぉ!!」
結局、魁人とウサギにお金は返ってきませんでした。めでたしめでたし……?