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恋する妖精セカイ

作者: 水下たる

『ねえねえ。早く信匡に告白しちゃおうよ? コックハク! コックハク!』


 お調子者の少年の声がわたしを急かす。


『待て待て。まだその時ではない。ここはやはり二人きりで話をする機会を増やすことが先だ』


 落ち着いた青年の声が少年を諭す。

 でも、やっぱりわたしに行動しろって言うのは変わらないのよね。


『まずは連絡先交換から。……と、この「合コン必勝法10の基礎」という本にも書いてあるぞ?』

『えーっ。そんなの待ってらんないよ。コクっちゃえコクっちゃえー。当たって砕けろー、ガンガンいこうぜ!』


 右耳と左耳。わたしの顔を挟んで言い合いになる二つの声。


「うー、うるさいな! わたしの好きにさせてよっ!」


 イライラが最高潮に達したわたしは、顔と身体をぷるぷるっと振って抗議する。


『うわああー』

『お、落ちるっ! パックよ、姫さまの肩に掴まるのだ』

『忠告遅ぇよ、ばーかっ。姫さま、気をつけてくれよう。飛べたからおれ死ななかったけど、リドルは飛べないんだぞ』


 わたしの顔の近くまでぱたぱたと羽根を羽ばたかせて怒りの表情を露わにする、親指大の少年。


『だ、大丈夫ですよ姫さま。私は気をつけていますから、無様な姿は晒しません』


 ぜいぜいと息を切らしながら言うのは、肩を必死によじ登った、中指くらいの大きさの青年。


「ごめんね、パック、リドル。悪いことしたね。……でも、耳元で喧嘩するのはやめてって、いつもいってるでしょ。直接わたしの耳に怒鳴ってるみたいに聞こえるんだから。サイズを考えてよ」


 そう。さっきからわたしのことを『姫さま』と呼び話しかけてくるのは、人間と同じようなつくりをしているのに、手でつぶせそうなくらい小さな生きものなのだ。


 笑ったり、怒ったり、心配したり、喧嘩したり。本当に人間みたい。

 こんな生きものがいるなんて、誰も知らないと思う。

 わたしだって、しばらく前までこんな生きものがいるなんて知らなかった。







  ◇ ◆ ◇ ◆







 綿あめみたいでおいしそう、っていうのが第一印象。

 そこは、キラキラのふわふわ雲で出来たセカイ。

 わたしは気づいたらパジャマのまま、雲の上に立っていた。


 ――姫さま。どうか恋をして、我らが妖精界【ノヴァ】を救って欲しい。


 思念が頭に直接語りかけてくる。


 わたしが妖精たちの住む世界【ノヴァ】のお姫さまに選ばれたってこと。

 【ノヴァ】が存在し続けるためには、お姫さまの【恋の力】が必要なんだってこと。

 だから、早く恋の相手を見つけろって。


「はあ……? なにそれ。よくわかんない」


 なんて夢なんだろう、ってわたしは思った。中学生にもなって、ファンタジーすぎる。

 お姫さまって、何よ。あり得ない。

 恋とか恥ずかしすぎるでしょ。

 朝起きたら夢占いしてみようかな。そんな恋のこと気にしちゃってたの。と、その時はそんなふうに思った。


「てゆか、恋って。わたし片想いなんだけど。しかもちゃんと話したことない、うっすーい片想いだよ」


 相手の姿がないから、どこを見たらいいかわからない。ふらふら視線を動かしながら答えたわたしに、思念の返答がある。


 ――もちろん承知している。だから我らが生まれたのだ。【ノヴァ】は姫さまのためにある。我らは姫さまの恋を応援しているぞ!! ばっくあっぷも任せておけっ。二人の妖精を姫さまにつけよう。パック、リドル。頼んだぞ!


「は? は?」


 ぱちん。ぱちん。

 わたしの目の前に、ふたつのシャボン玉が弾けるような音がして、何か光るものが現れる。

 ぱらぱらと光がこぼれていく。まるでダイヤモンドみたいなキラキラ。

 思わず見とれてしまう。

 眩しかった光が収まってきて、二つの小さな影が現れた。


『おいっすー。姫さま。おれパックってんだー、ヨ・ロ・シ・ク』


 一人は、黄緑色の半袖短パン、編みサンダルの妖精。

 ふわふわくるくるの金の髪に、エメラルドの瞳。生意気そうな顔をしてる。


『私はリドルと申します。姫さまのお側付になれたこと、この上ない喜びでございます……。粗相のないよう精進致します』


 もう一人は、藍色のタートルネック長袖、長ズボン、ブーツの妖精。

 サラサラの長い銀の髪に、アメジストの瞳。メガネをかけて、まるで委員長みたい。



 ――姫さま、二人のことをよろしくお願いいたします……。


 思念が遠くなっていって、気づけばふわふわの綿あめ世界は見慣れたわたしのベッドに変わっていた。寝たときとほとんど同じでほっとする。


『おお、ここが姫さまのお部屋!』

『感慨深いものがあります。姫さまはここで勉学に励んだり、身体を休ませたり、恋について夢想したりするのですね』


 ベッドの上でぴょんぴょんと跳ねる小さい生きものたち。

 ぎょっとして目を擦ってみるけど、やっぱり動いている。しかもちょっと光ってる。


「ちょっと、な、な、な、なんでここにいるの!?」


 思わずふとんを握りしめて叫ぶと、きょとんとした顔がわたしを見た。


『だっておれら、お側付き妖精だよ』

『私たちは姫さまの身の安全を守ること、恋のお世話をすること、妖精界との連絡をとるためにいるのです』

『姫さまがー、どこに行くときもぉー、何をするときもぉー』

『私たち二人がお供致します。いつ何時なにがあるとも限りませんからね』


 二人が声を合わせて、深く深くわたしに頭を下げた。


「……はあああ!?」







  ◇ ◆ ◇ ◆







 青いユニフォームの8番。


 蹴りあげられたサッカーボールを胸でトラップ。周囲の状況を一瞬で判断して、守りの薄いレフトサイドからドリブルで前方に駆けあがる。

 チームのフォワードに声を掛けながら、敵を2人ドリブルで突破。3人に囲まれたところでゴール前にスルーパス。10番がシュート。これが決勝点になった。

 わたしは興奮して立ちあがり、パチパチパチと激しく拍手を贈った。わたしの前に座っていた人たちももちろん盛り上がって、抱き合ったりタオルを振ったりしている。


 サッカー全国大会中学生の部。わたしたちの学校が優勝したのだ。


 決勝点を決めた10番に、8番の選手が駆け寄る。

 ハイタッチ。その後チームメイトにもみくちゃにされて見えなくなってしまう。


 でも、嬉しそうに何かを話す、爽やかな笑顔はしっかり見た。

 っていうか、わたしは8番を背負った彼しか見てなかった。


「はあ……かっこいいなあ」


 胸の前で手を組みうっとりとため息をつくと、頭の上からふたつの声が降ってきた。


『ふんふん、アレが姫さまの好きなヤツかー』

『パック。アレだのヤツだのと呼ぶな。信匡のぶたださまとお呼びするのだ。姫さまのお相手だぞ』


 もちろん、わたしのお世話係の妖精、パックとリドルだ。

 わたしがさっきうるさいって怒ったから、肩に乗るのはやめたのだ。


『えー、でもわっかんねーじゃーん。信匡が姫さまのこと好きかどうか、わかんねーんだろ?』

『私とお前がなんのために姫さまにお仕えしていると思っているのだ。信匡さまと姫さまの恋を成就させるためであろう?』

『そーだけどさー、恋であればいんだから、信匡である必要はないじゃん?』

『姫さまの恋焦がれる相手でなくては、【恋の力】が小さくなってしまうだろう』


 二人の会話に、信匡くんにうっとりしてた気持ちがみるみる萎んでくる。

 うう。自信無くなっちゃうよ。確かにそうだ。喋ったことがちょっとしかない、憧れの相手ってやつですよ……。



 信匡くんは、わたしの片想いの相手。

 髪の毛が短いけど、いつもサラサラしてる。目が大きくて童顔、爽やか系。

 隣のクラスで、サッカー部の司令塔。

 女の子といるよりは、男の子と遊んでいるときの方が多くて、たまに隣のクラスから笑い声が聞こえてくる。

 女の子からの人気も高くて、チョコレートをあげたとかあげないとか、話を聞くんだ。

 わたしは出会って一目惚れしてから、出来る限りサッカー部の応援に来てるけど、信匡くんと10番の選手目当ての女の子が結構いる。



 見てるだけで幸せだったから、片想いも楽しかったんだけど……。

 妖精界のために恋を成就させろ、って言われてから憂鬱だ。

 たくさんの女の子から、わたしを選んでくれーってアピールしろってことなんだよね。


『姫さま』

『姫さまぁー。【ノヴァ】から反応あるよー』

「わかった。もう行くよ」


 二人に呼びかけられて、ぱんぱんとお尻を払って立ちあがる。

 可愛こぶって、お気に入りのふりふりワンピースを着てきたけど、また信匡くんに話しかけられなかったなあ。







  ◇ ◆ ◇ ◆







 【ノヴァ】に行くのは簡単だ。二人と手を繋いで、目を瞑るだけ。

 二人のことはわたしにしか見えないけれど、人目につかないところでしかあまりしたくない。わたしの身体も【ノヴァ】に消えてしまうらしいから。



 サッカー場の木の陰で目を閉じる。扉のようなものを通ったイメージがあって、わたしはふわふわキラキラの世界に立っていた。


「何回来ても、綿あめにしか見えない。ザラメみたいなのがひっかかっててキラキラしてるところとかそっくり」

『ここは姫さまのための世界だからね。姫さまの心地いいように創られているんだよ』


 パックが偉そうに胸を張って言った。よくわかんないなあ。


『【ノヴァ】は姫さまの【恋の力】で創られ、循環している小さな世界なのです。救えるのは姫さましかいないし、姫さまが恋をしなければ我々も消えゆくしかない』


 リドルの補足説明もビミョー。

 妖精界の危機なのに、わたしのこの恋が叶うって決まった訳じゃない。

 そこは運命の恋だから絶対叶うんだよって言うところじゃないの?

 妖精の魔法とかがあればいいのに。


『ああ、今日はノヴァがいるみたいだよ。姫さま、相手してやって』


 パックが指差した方向を見て思わず、顔がひきつっちゃう。


 そこには、短い黒髪、大きな目、優しい顔つき。――『信匡くん』に似た男が白い学ランを着て佇んでいる。

 黒い学ランだったら、思わず「信匡くん」って声を掛けてしまいそうなくらいそっくり。


「ノヴァ……」


 わたしが呼びかけると、彼はにっこり爽やかに笑った。思わずドキっとしちゃう。


「ああ、姫。遅かったな。今日もまたコクハクとやらをせずに来たんだろう? 知っているぞ。恋の成就どころじゃないな」


 見た目はカンペキでも、中身はサイテー……。







  ◇ ◆ ◇ ◆







 ふわふわした雲の上を歩いていく。ここは建物なんかない。見たこともない花が咲いていたり、色とりどりの実のなる木がはえていたりする。ぐるぐると同じところを回っている。

 この世界は驚くくらい小さい。世界の崩壊で守るべき妖精も、わたしはパックとリドルの二人しかしらない。ああ、もう一人いるけど……。


「マナ。俺の姫。何をそんなに怒っている?」


 後ろから呼びかけられてイラっとする。


「その呼び方で呼ばないで。わたし、あなたに恋してるわけじゃないんだよ」


 わたしとノヴァは二人きりで小さい世界を歩いている。

 今日【ノヴァ】に呼ばれたのはコイツとデートするためだったんだ。ちくしょー、だまされた。


「このままでは俺のものになる可能性のほうが高いだろう? 片想いの相手にコクハクをしないんだから、俺のものになりたいんだろう」

「どーしてそうなるのよ。全然ちがうよ。自分のいいように考えないでよ」


 お姫さまの恋が叶うわけじゃないのには理由がある。

 【ノヴァ】は妖精界にお姫さまの恋の相手を生み出すのだ。

 その名はノヴァ。

 パックとリドルの説明によると、彼は『世界そのもの』。だからわたしの理想がそのまま再現されている。


「わたし、信匡くんが好きなの。あなたは顔が似てるだけの別人だもん」

「好きな男の中身を知らないくせに、よく言うな」

「……違う、知ってるよ」

「マナ。おまえが一目惚れだと自分で言ったんだぞ」

「余計なこと覚えてなくていいっ、違うの。知ってるもん。男友達と毎日サッカーの話してることとか、サッカーが上手いこととか、歌がうまいこととか――、初対面の女の子に優しいことも」



 わたしが信匡くんのことを好きになったのは、中学二年に上がってすぐのこと。

 背丈ほどもある世界地図を運んでいたわたしが、階段で躓いて転びそうになったとき。

 たまたま傍にいた信匡くんが手を引いて助けてくれたのだ。


『大丈夫? 気をつけて』


 爽やかに笑って、踊り場まで落ちてしまった世界地図を拾ってくれた。

 隣のクラスだって気づいたのは体育の時間。バスケが上手かったのに、友達からサッカー部だってことを聞いてびっくりしたなあ。

 それからはサッカー部の試合には必ず行って……。



 ん?

 あれ? わたし、ちょっとストーカー入ってるな。自分で自分の行動が気持ち悪いかも。


 てゆか、……わたしの片想いって、恋、って呼んでいいのかな。本当に……。

 恋って何なんだろう。


「愛しい姫」


 俯いて考え込んでいたわたしは、ノヴァの顔がぐっと近くにいることに気づかなかった。


「ちょっ、近っ」


 顔をあげて鼻がくっつきそうになって、思わず後ずさる。信匡くんの顔で近付かないで欲しい。

 ドキドキとうるさい心臓のあたりをぐっと掴んで耐えているわたしに、林檎に似た赤い木の実が差し出された。


「なにこれ、どうしたの。ノヴァ」


 わけがわからず、林檎モドキとノヴァの顔を見比べる。

 真剣な顔。どきどきしちゃうくらい、素敵な顔。


「俺はどうすればおまえに好かれるだろうか。プレゼントが必要だろうか。甘い言葉が必要だろうか」


 ドキリとする。

 それって、好かれるようにアピールするってことかな。

 わたしがしていないことだ。

 わたしは信匡くんを見ているばっかりで、好きになってもらえるように努力してない。

 林檎モドキはわたしへのプレゼントなのかな。妖精界の林檎、どんな味がするんだろう。甘いのかな、苦いのかな。


「……俺はおまえの世界そのものなのに、どうして好かれないのかわからない」

「え」

「おまえの理想で創られた存在だ。おまえが求めているのはあれの顔をした、俺のような性格の男なのだ」


 な、な、な、なにそれ。【ノヴァ】がわたしの世界で、ノヴァが理想の相手?


「そんなの、なんか違うよ。わたし、そんなこと求めてない。信匡くんがどんな性格でも好きだって思うよ。わたし、信匡くんが好きなんであって、ノヴァが好きなんじゃない。理想そのものだから好きになるんじゃないよね?」

「あれとおまえはふだん話すわけではないんだろう。女にはこういう話し方をする男かもしれない。おまえが知らないだけで、俺とあれの性格が似てないとも限らないだろう? 俺があれだということでいいじゃないか」

「いやいやそれは違う。絶対違うって! 嫌なところがあってもいいけど、でもそれは信匡くんのものであって、わたしはノヴァのことを恋の相手かどうかってモノサシで考えられないよ」


 混乱してきた。

 わたしが創った理想の相手とわたしが恋をするって、それって、自己完結するって、ことだよね?

 恋って、きっとそうじゃないよ。

 人と人との付き合いのことだよ。そんなに簡単な世界じゃないよ。

 【ノヴァ】は小さな世界だ。だって、わたしのための世界なんだもの。わたしが見たくないものは、ない。

 わたしは信匡くんの世界を理解したかったの。わたしの世界に連れて来て終わりにしたかったわけじゃない。


「恋って、世界を広げることだよ……。ノヴァ」


 林檎を持つノヴァの手に、そっと自分の手を添える。


「あなたはわたしだよね。信匡くんじゃないよ。わたしが創りだしたものなんだもの。わたしの一部なんだよ。わたしのなかにかえって。ね。お願い」


 ノヴァは答えない。

 信匡くんに似た爽やかな笑顔で、わたしの頬にキスをした。


「愛しい姫、忘れないで。俺は貴女が好きだ」







  ◇ ◆ ◇ ◆







「は!? どういうこと!?」

「うーん。どっから話せばいいかなあ……」


 サッカー場の木の下。信匡くんが、あははっと笑って頭を掻いた。


「えーっと、俺、君のことが好きなんだけど」


 サラリと爆弾発言。


「ある夜に妖精が来てねえ、なんか世界を救ってほしいって言うんだ。で、君が僕に言うんだ。わたしの好きなのは貴方じゃないよって。よく分からなかったんだけど、君が色んな顔してくれるから可愛くて。調子に乗っちゃったんだ。おまえは俺の愛しい姫なのになあ、ってね」

「の、の、の、ノヴァ……! 信匡くんがノヴァだったの!?」

「ノヴァは俺じゃないよ。中身に俺が入ってるけど、やっぱり君の世界の『男』なんだ」

「んん?」


 どういうこと?

 ノヴァには信匡くんが入ってたのに、わたしが創った存在?


「だって君にキスできなかった。何度も何度もしようとしたのに」

「え。さっき、キス、したよね?」

「ちがうちがう」


 信匡くんがぐっと近づいてくる。鼻と鼻がぶつかった。

 ふにっと唇に温かい感触。


「こうだよ。これがしたかったんだ。ノヴァだとこれが出来なかった。世界が繋がるから、なのかな。それとも、君のなかにこれがなかったのかな」


 ばっと唇を手で覆ってガードする。

 そのくらい知ってるよ! キスが唇でするものだってくらい知ってるよ! 小学生だって知ってるよ! したことはなかったけどっ。


「だって、ファーストキスは信匡くんとしたかったし……!」

「あそれ、嬉しいな。やっぱりノヴァだから、出来なかったんだね。俺のためにファーストキス、守っててくれてありがとう」


 信匡くんとノヴァ、やっぱり同じだっ!






 おわり





 ◇ ◆ おまけ ◇ ◆




『やー、無事恋成就おめでとー、姫さまっ』

『ノヴァもよくやった。私もパックも姫さまとノヴァの制約の儀を見られて鼻が高いよ』


 なぜか信匡くんのスポーツバッグから出てくる妖精二人。


「って、見てたのかっ!」


 起きてすぐ傍に信匡くんがいて告白を受けちゃったから忘れてたけど、そういえばいなかった。


「あははー、俺やったよ。もっと褒めろ。世界は救われたぞ」

『やったねー! おめでとー! 偉いぞー』

『ノヴァ――いや、信匡さま、姫さま。今後は我らにも頼っていただきたいものです。あなたたちのために日々精進しているのですから』


 リドルの言葉にハッとする。あれっ? 恋成就した、よね。


「えっと、ごめんね。パック、リドル。ええっと、今後、って何かな?」

『何言ってんだよ。おれらは信匡と姫さまの恋を応援するためにいるんだよー?』

『妖精界も【ノヴァ・マナ】に広がって、ますます維持に【恋の力】が必要なのです。今後も実りある恋が続くよう、我らが続けてサポート致すのです』


 なんだと!? 監視生活開始ですか?


「あははー、そっかそっか。頑張んなきゃな。なあ、愛しの姫」

「ひいぃ、それやめてぇ……!」


 耳元で囁かれるノヴァの台詞。

 うん、信匡くん、調子に乗る人なんですね。よくわかったよ。


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