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驚愕と絶望

「姫様、具合はどうですか?」


「いや、別に大丈夫だけど。」

それよりも、あんたがあの兎のぬいぐるみだってことにビックリだわ。


「ねぇ、あんたどうしてぬいぐるみになったり、人間になったりしてんの?」


「あぁ、それはですね、姫様の世界とこちらとを行き来するためですよ。」

「は?」


はたまたクエスチョンマークが頭に推定百個くらいならぶ。

おいおい、意味分かんねー事ばかりだな。

どうやら、私の理解力はこの世界に来てから急速に衰えたらしい。


「えっと・・・、もっと詳しく説明してくれないかしら?」

こめかみを揉みながらそう聞くと、不意に『白兎』が


パチン、と指を鳴らした。


その瞬間、何もなかった目の前に突如と大きなホワイトボードが現れる。


「何これ!! どうやったの!?」


「魔法の一種ですよ。この世界は、いわば魔法で成り立っていますから。

この手の魔法は、『二―ディア』と言って、必要なものを頭で思い浮かべるだけでそれが出るんです。

だせるものには、魔力によって個人差がありますがね。」


なんとまぁ、どうしよう、本当に漫画の世界に来てしまったようだ。

「ねぇ、あなたなんて言うの?」

ふと、大事なことを思い出して聞くと、『白兎』はまたまた楽しそうに笑った。


ホントよく笑うなぁ・・・

こうしてみると、どこかの国の王子様見たいだ。


その王子様が、私に向かって恭しく膝を折って胸に手をあげてこうべを垂れているんだから不思議だ。




「はは、いまさらですね姫様。では、改めまして僕の名はチェイス・ハヒルトンと申します。

以後、アリス姫様に執事として使えさせて頂きます。お見知りおきを。」


「いや、もう知ってるから。

じゃぁ、チェイス。もう一回聞くけど、なんであんたは色々変身したりしてんの?」


「はい、それを説明しようと思いまして、これを用意したんですよ。」


そう言って、チェイスがまた指をパチンとならすと、ホワイトボードの上に二つの丸と文字が次々と描かれていく。ホント、まじで便利だと思う。


どうりで、マーカーペンがないわけだわね・・・

食い入るようにボードの画面を見つめる私をみて、チェイスがおかしそうに喉をクツクツと鳴らして笑う。なんだか馬鹿にされた気分だけど、仕方がない。実際私は何も知らないのだ。


「まず、こちらが姫様の世界、この対するのが私たちの世界とします。」


ボードに描かれている、右の丸、左の丸を順に指さしてチェイスが言う。

そして、次にその間にある一本線をさして続ける。


「そして、この間にあるのが、『ゲート』。いわゆる、両界を分かつ扉兼フィルターのようなものです。

私たちがこの『ゲート』を通るには、向こうの世界に行くのにふさわしい姿に自らの形を変えなければなりません。まぁ、僕の場合、それが兎のぬいぐるみだったってことです。もちろん、なかには姫様のような例外もいますが、相当の魔力のあるものだけです。」


「え?じゃぁ、もしチェイスとかがそのままゲートを通ろうとしたらどうなるの?」


「あぁ、それは肉体もろとも吹っ飛びますよ。もしくはそのままどこか別の世界に飛ばされて彷徨うことになります。どの道危険ですね。」


「そ、そう・・・大変なのね。」

ぐ、グロい・・・・。


肉体吹っ飛ぶとかどんだけだよ・・・・。


って、あれ?

疑問が一つ。

「ねぇ、じゃぁ、そんなに危険なゲートなら、なんで私はそのまま通っても大丈夫なわけ?

あんた、さっき私は例外って言ってたわよね。」


「それは、姫様だからですよ。今はまだ自覚されていませんが、もともと姫様は膨大な魔力の持ち主なんです。ためしに何か魔法を使ってみますか?」


魔力?魔法?

向こうの世界では、絶対に聞かないような単語が頭をぐるぐると巡る。

ていうか、答えになっていない。

これじゃぁ、象をさして「なんで大きいの?」と聞いたときに「象だから」と答えられたようなもんだ。


それでも、『魔法』を使う、という言葉には少し胸が躍る。


「ほんとに?私でも使えるの?」


「えぇ、コツさえつかめれば。それにこの世界に置いて魔法を使えないということは命取りになりますからね。基本的なものはむしろ覚えておいた方がいいでしょう。」


「へぇ~。・・・ねぇ、じゃぁその魔法とやらを覚えたらあっちの世界にも帰れる?」

口に出した途端にチェイスの表情が曇る。

しかしそれを隠すように、儚げに笑う。


今までのの笑顔とは全然違う『微笑み』。


「えぇ、帰れることには帰れるんですが・・・・、今の姫様には多分無理かと思います。空間を移動する魔法は相当な魔力を要するので、僕でも一年に一回使えるかどうかですから。」


「それって、もしかして・・・・。」


言葉は続かず、そのままチェイスが一番聞きたくないことを言う。





「はい・・・。姫様は、当分いや、下手すれば一生もとの世界には帰れません。」









絶望の淵、私を突き落としたのは









優しく儚げな笑みをたたえたあなたでした。























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