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寝ぼけたアリスと目覚めの兎

カチ、コチ


カチ、コチ


カチ、コチ


時計の音が、頭の中で壊れたラジオのように繰り返される。

カチ、コチ


カチ、コチ


ほんとに・・・うるさい。

なんて、耳障りな音。


それと同時に、ある記憶ビジョンがよみがえる。


金色の時計が、前にぶら下げられていてゆっくりと、ゆっくりと左右に揺れる。

それを持っているのは・・・誰だったけ?

そうだ・・・白いうさぎのぬいぐるみ。


ああ!!

そこまで思いだした途端いままでの記憶が全部頭に流れて

わたしはガばっと目を覚まして跳び起きた。


そしてまた頭をひねることになる。

視界に入ってきたのは、なんとも広くて高級そうな部屋の姿。


ちょ、ここどこ?


ざっと見渡した感じ、ちょっとしたパーティー会場にも使えそうだ。

ブラウン調で揃えられた、クローゼット、イス、化粧台、テーブル。

それらが部屋の左右の壁に寄せられるように、バランス良く配置されていて

囲まれるように真ん中にはどでかい、ゆうに十人はすわれそうな白いソファーが

幾何学模様の綺麗な絨毯の上にドドンと構えている。


まじで、ここどこ?

頭をひねってもひねってもその答えは出ない。


もしかして、私いきなりお嬢様になったとか。

・・・・いや、ありえない。

そんな漫画のような話あってたまるか。


でも、もしそうでなかったら

私はなんでこんな凄い部屋にいるんだろう。


よく見てみれば、私のいまいるベットの上にある、私の脚を包んでいる布団や毛布も

かなりの品物だ。


とっても手触りがいいし、なによりふわふわしている。

ホントになんでこんなところにいるんだろう。


本日三回目となる疑問が頭を駆け巡る。

顔をしかめて、困った顔をしていると

ふいにベットの右側の、これまたシックな木彫の扉が


トン、トン


と小さく音を立てた。



「姫様。入ってもよろしいですか?」

扉に阻まれくぐもっているけど、聞き間違いようのない

あの声。


「・・・どうぞ。」

かすれた声で告げると


きぃー

という不気味な音を立てて、扉が開いた。


・・・・・だれ?



現れたのは、すらっと長身の白いタキシードを着た美青年。


透き通る白い肌に、緋色の切れ長の瞳。

形のよい唇は、緩く弧を描いていて、優しい笑みをたたえている。

それらを包むように、肩から流れる白銀の髪。


あのウサギのぬいぐるみとは似ても似つかないちゃんとした人間だ。

どうしよう・・ついに五感がおかしくなってしまった。


そのせいか次に見えたのは、その美青年の頭の上から生えている

うさぎの・・・耳、だった。


なぜに、うさぎの耳?

かなり要らない要素だと思うんですけど。


漫画やアニメにしか出てこないほどのイケメンに兎の耳って

かなりバランスの崩壊した組み合わせだ。


つーか、兎の耳をつけてるってことは

この人、もしかして変態じゃないか?


どうやら五感おかしくなったのにつれて私の頭もおかしくなってしまったらしい。

変な妄想の嵐が頭を駆け巡る。


「あの・・・姫様?大丈夫ですか?」


気遣うような優しい声ではっと我に返る。

いつの間にか、兎耳の美青年は部屋に入って

私の乗っているベットの前でしゃがんでいた。


私の顔をのぞく、心配そうに眉が寄せられた顔を見て

思わず謝罪の言葉が口をついて出る。


「えっと・・・スイマセン?」

なんだろ

語尾が疑問形になってしまった。

って・・・なんで私謝ってんだろう。


狐につままれたようなわけのわからない気持ちになっていると

それが、表情にに出たのか、さっきまで心配そうに曇っていた目の前の顔が

「・・・ぷっ」

と笑いで噴き出す音とともに、心底楽しそうに破顔した。


「姫様は・・・まだ夢から醒めていらっしゃらないようですね。」


「いや、一応起きてるけど。」

悪戯っぽく、立ち上がりながら向けられたからかいの言葉に

頭の隅で百万ドルの笑顔ってこのことじゃないのかしら

と考えながら反論する。


「そうですか。では改めまして、おはようございますアリス姫様。」


「あぁ、おはよ・・・うん?」


言葉を返そうとして感じた

違和感。


あれ・・・?なんんだろう?

何かがつっかかる。


あ、そうだ。

この人、いま私のことを『アリス姫様』って呼んだ。


てことは・・・

「あなた、もしかしてあの兎のぬいぐるみ?」


「さすが、姫様。そうですよ。私があのぬいぐるみです。」







私はこのとき思った。






神様。

世の中には不思議な事があるものなんですね。











感想、誤字脱字報告待っていますヽ(^o^)丿

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