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時計の音につられて・・・・

『本の世界行けますよ?』


ふいに響いてきたどこか聞き覚えのある声に、はっとして足元を見ると、机の影からその声の主が現れた。


黒いシルクハット。赤いポンチョ。

もうそれだけで、あの白兎だと分かる。


あたしは夢を見ているのかしら?

そう思って頬を右手で思いっきりひっぱてみたら痛かった。


『アリス姫様、本の中の世界行きたいですか?』

嘘よ!?嘘よ!?嘘よね!!

なんでこいつがここにいるわけ?


「な、なんであなたがここにいるわけ!?私ってばまだ寝てたの?」


『はは、御冗談はよしてください。姫様はちゃんと起きてますよ。』


いや、こっちは至って本気だ。

これは幻影なのか?

快活そうに笑う兎のぬいぐるみを見て、私はめまいがした。


「なんか・・・、色々倒れそう・・・・」

思わずそう呟くと、ぬいぐるみの顔が途端に曇った。


『それは大変です!!姫様ご無理をなさってはいけませんよ。』

いや、あんたのせいだから。


「はぁ・・・もう大丈夫だから。それより、さっきも聞いたけど、なんであなたがここにいるの?」


ため息交じりに聞くと、今度はすっごい真剣な顔に変わった。

ぬいぐるみのくせに、表情豊かなのね・・・。

ホントに、不思議なくらいくるくる変わる。

きっと、人間でもここまではっきり、しかも早く、色々違う顔に変わる人はなかなかいないと思う。


『はい、僕は童話の国から姫様を迎えにまいりました。』


「は?童話の国?つーか、思ったんだけど、私姫じゃないわよ?」


『いえ?姫様は姫様ですよ?まぁ、私たちの国のほうはきて見れば分かると思いますので

 姫様、眠ってください。』

「え?」


何か言う暇もなくぬいぐるみは自分のポンチョのポケットの中からあの金色の懐中時計を持ちだして

その金色の鎖を短く持ち、時計の部分を私に向けてゆっくりと横に揺らし始めた。


そんな古風な・・・


カチ、コチ



カチ、コチ


でも、なぜか小さいはずの時計の針が動く音がとても大きく聞こえる。


カチ、コチ。


あれ?

なんでか

頭がぼーっとする。


カチ、コチ


ぼやける視界の中で白兎を見ると、うっすらと小さく笑っていた。

あんたって・・・、ほんと性格悪いわね・・・


そう思ったが最後、目の前が黒く塗りつぶされた。













――――おばあちゃん、もしかして性悪白兎って、あのぬいぐるみのことですか?





見知らぬ部屋で目覚めるのはまだしばし後のこと・・・・・



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