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始まりは兎の人形から

拝啓 おばあちゃん


おばあちゃんはどうしていますか?私は元気でやっています。


最近、おばあちゃんの残して行った荷物を整理していたら、小さいころにおばあちゃんが私に読んでくれた、童話の絵本が沢山見つかりました。


どれも懐かしいものですが、一番好きだった笑う猫とか、時計を持って走るウサギが出てくる絵本がなくてちょっとさみしくなりました。


確か、その絵本の主人公の女の子は私と同じ名前をしてたんですよね。

おばあちゃんが私に『アリス』という名前を付けた理由がわかる気がします。


前におばあちゃんもそのお話が大好きだと言っていましたものね。


でも私の毎日は相変わらず部活の練習に追われていて

物語の中の『アリス』のようには刺激のあることがなく、ちょっと退屈です。


それが原因なのか、その物語の主人公になれたら、なんてことを思うようになり

最近はおばあちゃんとした約束を破ってしまいそうで怖いです。


おばあちゃんはなんで私にあんな約束をさせたんでしょうか?

おばあちゃんはもしかして物語の中の世界に入ったことがあるんでしょうか?


・・・そんなことあるはずないですよね。馬鹿なことを書きました。

どうかお元気で。


あなたの孫、アリスより





              ◇◆◇◆◇◆◇







なんだか甘いにおいがする。

お菓子?花?

ともかく、どっちにしろ、とても気持ちのいいにおいだ。


それにつられてとろとろ瞼を開けると、桜の花びらのような薄いピンク色が目の前に広がっていた。

壁でもない、空でもない、ただただ、綺麗なピンク。

体も変な浮遊感に包まれていて、またまた眠くなってくる。


再び目をつむって夢の中に逃げようとした、そのとき。


『姫様。』


凛とした、鈴の鳴るような可愛らしい声が耳をうった。


―――――だれ?・・・でもきっと人間違えだ。

だって、私は姫じゃない。

そんな御大層な人間ではない、ただの女子高生。


一瞬だけ意識を覚醒させたその声を心の中で否定して、また夢の中に逃げようとする。

それでも、そんなことはお構いなしに声はしつこく続く。


『姫様、姫様、私たちの姫様。起きてください。』


・・・うるさいなぁ、だから違うってば・・・。


『姫様。起きてください。』


しつこい・・・・







『アリス姫様。』


え?


『アリス姫様、起きてください。』

私の名前・・・・

なぜだろう。なぜ私の名前を知っているのだろう?

なぜ私のことを姫様と呼ぶのだろう?


疑念はみるみるうちに胸の中で大きくなっていき、ついには完全に私の朦朧としていた意識を覚醒させた。


「だれ?」

そう呟きながら目を開けると、起き上がる間もなく上から何か物が落ちてきた。

それは、ポフッ、と音を立てて私の顔に当たる。


別に痛くはなかったが、何かと思って、手で持ち上げ、起き上がりながら見てみると

それは精巧な作りの白いウサギのぬいぐるみだった。


上にはちょこんと黒いフェルトでできたシルクハットをかぶり

同じくフェルトでできた赤いポンチョを着ており、そのポケットには小さな懐中時計が入っている。


「きれい・・・。」

時計をポケットから取り出して、手に乗っけて眺めて見ると、金色のふちが光を反射してまるで朝日のように、明るくきらきらと輝く。

ついつい、その美しさに見とれていると、すぐ近くでさっきの涼やかな声がした。


『アリス姫様。それ、ぼくの時計です。返してください。』

・・・・ぬ、ぬいぐるみがしゃべっている。


およそ信じられないことに、声のした方へ顔を向けると

先ほど自分の顔に落ちて来たあのウサギのぬいぐるみが、ぽんぽんときているポンチョを手で払いながら立ち上がり、嫌そうに顔をしかめて言葉を発したのだ。


・・・・ぬいぐるみにも表情ってあるのね。

びっくりしすぎて変なことに気づてしまったじゃないの。


「あ、あなた・・・ぬいぐるみよね?」


『いかにも。まぁ、この世界ではの話ですが。それより、時計を返してください。』


「え?あぁ、そうね。ごめんなさい。・・・はい、どうぞ。」


ちょこんと差し出された、布の兎の可愛らしい手に、小さな時計をそっと置いてあげると

器用につかんでポンチョのポケットにするんとそれを滑り込ませた。

いったい、あんな指も付いていない布の手でどうやったらこんな難しい動作ができるんだろう、と思わず頭に疑問が浮かぶ。


しかし、それは兎が次に発した言葉ですぐに別の疑問にすり替わる。


『すいません。この時計はとても大事なもので・・・・

 姫様でも触れさせるわけにはいかないのです。』


「あのさ、ちょっと聞いてもいい?」


『はい、なんでしょう?』


「なんで、私が姫様なの?それに、あなた、なんで私の名前を知っているの?」



・・・・もちろん、聞きたいことはほかに山ほどある。

なぜ、ぬいぐるみがしゃべっているのか。

なぜ、自分はこんなおかしな場所にいるのか。


でも、一番聞きたいのは、自分のことを姫様と呼ぶ理由。自分の名前を知っている理由だ。

さっきからそれが一番気になっていた。


『・・・・・』

「ねぇ、お願い教えて。」


沈黙がじれったくなって、思わず兎に答えをせかすと


ふっと、ふいに兎が皮肉げな笑みを顔に浮かべた。


『答えは、すぐに嫌でも分かります。

いま暫し、姫様は自分の世界におもどりください。』



愉しげな、それでいて静かな声があたりの空気に響いた瞬間、目の前の世界が兎もろとも、ぐわん、と歪む。



ぐちゃぐちゃに混ざり合った景色の中、手を伸ばすと


くすくす


気持ちの悪い笑い声が耳に届き、それと同時に一気に意識が闇に沈んだ。
















―――――アリス、本の中の世界に行きたいと思ってはいけないよ

 でなけりゃ、性悪な白兎に変な世界へ連れ込まれてしまうんだ。




















はい、始まりました新連載。

受験勉強終わったので、前から進めていた小説を連載してみました。

まだ高校がありますが、がんばるのでよろしくお願いします。

まだまだ分かんないとこもあるかもしれませんが、これから色々とあかしていきたいと思います。


感想も宜しくお願いします。

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