新聞がない世界で、天気予報で村を救う(2)
※畝とは
畝とは、基本的な農作業の一部で、畑の土を細長く盛り上げて作る列状の土の山のことです。
水捌けがよくなるので大事な作業です。
やれやれ、ひどい目にあった。
3日降り続いた雨が止んだと思ったら、今度は畝を直すってんで1日村の連中と穴掘りだ。
正直体がもたん。
いかに今までの生活が甘やかされたもんだったかを痛感する。農家さんいつもありがとう。
さて、今日は3日ぶりに例のジジイのところへ配達だ。
死んでないだろうな。
「おーい!フミヤ!」
「どうした、アルバート。」
村の若者が話しかけてくる。
珍しいな。
「これ、分けてやるよ。」
そういって差し出してきたのは
「これは・・・種?」
「特別だ。畝、一緒にやってくれたろ?」
「うわー!小麦だ!良かったねぇ、フミヤ。」
小麦の種と言えば、これ1粒で飯一回分くらいの価値じゃなかったか?
めちゃくちゃ貴重では。
「受けとれん。お前らの大事なものだろうが。」
「俺達はその『お前ら』の中にお前もいると思ってるってことだ。それ、他のより育てやすいからよ。ただ、雨には注意すんだぞ。」
そういうと手をパタパタと振りながらアルバートは去っていった。
これから種まきが始まるらしい。
「・・・」
少しの間、種を眺めていた。
「これが・・・ダム?」
「そうだよ。かなり昔に治水のためにつくった・・・って、聞いたことがあるんだけど。」
ヨハンナに無理言って連れてきてはもらったが、
それは、見た目にはダムというより土盛り。
苔や草が繁って、ただの小さい山にも見える。
水は確かにその上で止まっており、そこから村の河川の下流へチョロチョロと繋がっている。
触ってみて、戦慄する。
「(なんか、柔らかくないか?)」
壁が、水を含んでぶよぶよとしている。
スポンジみたいだ。
・・・いい予感がしない。
「もういいのかい?って、ちょっと待ってよフミヤ!」
急いで、ジジイのところに行かなきゃ。
「おいジジイ!生きてるか!?」
「そんな大声出さんでも聞こえとるわい!!」
「おじいさん、久しぶりですね。」
毎日食料の配達をしてるから、2,3日は問題無いのかもしれない。
「雨降ったろ!?あんまりよくねぇ!村の連中には知らせたか!?」
「畝掘りでそれどころじゃなかったんだ。」
「あまり猶予ないぞ。急いだ方がええ!」
「そうなんですか?」
ヨハンナはマイペースな奴だ。
「種植え時期だろう?浸かったら終わるぞ。」
そこでふと、さっきのことを思いだす。
「・・・なぁ、ジジイ。天気のことなんだが、どれぐらい先までわかるんだ?」
「お天気のことなんて、神様しかわからないよ。」
ヨハンナは笑う。
「お前、ジジイの言うこと全く聞いてないだろ。今までのこと思い出してみろ。」
「今まで・・・?うーん・・・まぁ、確かに?」
駄目だ、よく分かってない。
「遠くなればなるほど当たらんくなるが、大体1ヶ月だな!!」
「1ヶ月・・・」
気象衛星かよ!
だが、ジジイの読みは今まで結構な精度を保っている。
信じてみるのも悪くねぇかもな。
「おいジジイ、今日から村に水が来るっていう日までの天気、全部詳しく教えろ!」
ジジイの顔が、急に若返ったように見える。
「よしよし!きちんと記録取んだぞ!!」
この世界は、紙ですら結構貴重だ。
その紙いっぱいに気象情報を書き連ねる。
終わる頃には暗くなっていた。
ヨハンナは台車で眠りこくっている。
俺も疲れてはいたはずだが、不思議とその感覚はなかった。
村に戻り、家(借りてる小屋)で整理する。
まず、3日間の大雨。
これと今日は過ぎたからいいとして、問題は明日からだ。
ジジイの予想によれば、しばらくは安定して晴れるようだが、崩れたら一気に来る。
一気に来たら鉄砲水まで猶予は無さそうだ。
まさに、嵐の前の静けさ。
生憎、気象予報は門外漢だ。
気象予報デスクの奴、なんて言ってたっけか?
確か・・・えーと、そうだ。
『防災』だ。
情報は正しく、早く、そして、『危険かどうか』だ。
村の連中にわかるように、そうだな、文字よりかは見た目だ。お天気マーク。これを全面だ。
文字は最小限でいい。
雨降りで、山が、水持ってる。いい状況じゃ、ない、と。
いや、もっとだな。もっと少なくていい文字は。
文字が読める奴が多くないんだった。
やっぱりお天気マークを主体にしよう。
晴れ、晴れ、晴れ後曇り、曇りのち雨、雨、ここで赤マーク。
よし、まずはこれでいいだろう。
明日、これを配る。
どうなるかは、それこそヨハンナがいう通り『神のみぞ知る』って、やつだ。




