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お父さんと一緒  作者: 熊沢五月


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16/22

私だって出来る

しばらく歩くと横に長い塀が見えた。

よく見ると塀は左右に分かれていて、真ん中は開いている。その開いた隙間の向こうに門がある。塀と門はかなり離れていて門と塀の高さは同じように見えるけど、実際は奥に大きな門があった。

やっともうすぐ到着する。まだ距離があるので走ればすぐというわけではないが、やっぱり今まで目標にしていた場所が見えると気分が上がる。


そうだとは思うけど、私はムウに聞いてみる。


「ねえ、あそこに向かっているんだよね」

「はい」

ワクワクしながら答えを待ったけれど、結局いつもの無表情のムウだった。

ムウの答えに反応したのはケンだけだった。

「そっかぁ、やっと着くんだぁ」

ケンは小声でボソリと言った。

気のせいかお父さんはいつも通りの笑顔だけど、どこか無理をしているような、寂しいような目をしていた。

足を止め門を見る。それぞれ思うことがあるんだろうか。


後方から風が吹いてきて髪が揺れる。顔にかかる髪が鬱陶しくて、手で髪を押さえながら後ろを見た。

風が砂を巻き上げ、その風が小さな渦になりだしていた。ゆっくりと渦が広く高くなっている。周囲の砂や岩を巻き込みながらグルグルと巻き上がっていく。

「竜巻だよ!」

私が思わず叫ぶ。

「急ぎましょう」

ムウの言葉を合図に走り出す。三人の速度に付いていけない私の手をお父さんが掴む。

砂地に足を取られながら走るのでみんな速く走れない。それでもお父さんは私を連れている。

私は足手まといにならない、と決めたんだった。そしてお父さんの手を振り解いた。お父さんはビックリした顔をして私を見る。

「大丈夫だから!」

お父さんは少し寂しそうな顔で笑った。

「そっか。うん。頑張れ」

私は一人で走り出す。ただでさえ走るのが遅くて、砂地で走りにくいけどそれでも自分で走る。

後ろからゴゴゴと竜巻が迫ってくる音がする。とにかく私は走った。


どれくらい走っただろうか。かなり走った気がするけど、あまり進んでいない気もする。

風で砂が舞い上がって目を開けていられない。薄目で足元を見てなんとか狭い視界を確保して進む。

見える範囲にはお父さんも、ムウも、ケンも見えない。それでも最初に向かっていた方向に進む。

なんとなく風が弱くなってきたと感じた時、何かにぶつかった。

顔を上げるとお父さんがいた。

「よく頑張ったなぁ」

お父さんが頭をワシワシ撫でる。湧き上がってきた安心感に涙がこみ上げてくる。


「ごめん、ごめん。髪が絡まっちゃうんだっけ」

「こんな強い風だもん、もう絡まってるし」

「そうか。じゃあ後はお父さんに任せろ」

お父さんは頭をポンポンと軽く叩いた。

一体何を任せるっていうんだろう。竜巻なんて自然のものだからどうしようもないだろうに。

「よし。ケン行くか」

「そうっすね」

「ムウ、ハルカを頼むな」

「はい。お任せ下さい」

お父さんは私をムウの方へ押し出した。

ムウに肩を抱かれ、来た方向を見る。風はかなり弱くなっていたけれど後方にはまだ竜巻が見える。

間近に迫った竜巻は少しずつ勢いが弱くなり、中から砂と岩で出来た人型が出てきていた。

一つが人型になると後方にまた新たな竜巻が発生している。それが順番に近づいてきて、お父さんの3倍はあるような人型になってゆっくりと、それでも確実にこちらに向かってくる。

お父さんとケンは雄叫びを上げて向かって行く。


「ハルカ様。念のためアレを」

そういえばムウがくれた黒い棒。杖みたいに使ってたけどムウは武器だって言ってた。何の変哲もないような黒い棒だけど、重さを感じなくて頑丈そうだ。ムウがグーにした両手を前に出し、広げる仕草をしたんで棒を横に構えて左右に引くと伸びた。棒を自分の身長より少し短めに設定して右手で握りしめた。


お父さんは刀を鞘に入れたまま振り上げて人型の砂になっている部分を狙って切っていく。ケンはお腹のあたりを狙って体当たりをしていく。人型はバラバラと崩れて砂と岩になる。

お父さんとケンは片っ端から崩しているけど、なんせ数が多い。

ハラハラしてお父さん達を見ていると、ムウが前に飛び出した。

お父さん達が最初に崩した人型がゆっくりと集まり再生し始めている。それをムウが叩き潰した。

それならきっと私も出来る。黒い棒を両手でしっかりと握り、集まり始めた砂と岩を叩く。思いきり力を込めて岩を叩くほど、手に振動が伝わってくる。でも岩だから叩き潰すことに罪悪感が生まれない。


段々と風が弱くなり後方の竜巻も発生しなくなった。

お父さんとケンも最初程の勢いはもうないけれど、それでも岩と砂で出来た人型を崩していく。

私とムウは再生しないように叩き潰す。みんな時間が経つにつれて疲労の色が強くなる。

お父さんとケンは肩で息をしている。

ふと見るとお父さんの後ろにあった岩と砂が盛り上がり始めていた。

もっと早く気付かなければならなかった。私はお父さんのところへ走る。ただでさえ走るのは遅いし、砂地だし、かなり疲れていたけどそれでも全力で走る。辿り着いたときにはもう1メートルくらいに盛り上がっていた。

「お父さん!避けて」

全力で棒を叩きつける。

岩と砂は粉々になり、私は勢いをつけてダイブしたようになりそのまま砂に倒れ込んだ。






ハルカ少し成長しました。

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