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お父さんと一緒  作者: 熊沢五月


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楽しそうですね

お父さんとケン、私、ムウの順に歩く。

脇には草木が生えていて、所々に岩がある。その岩が道を進むにつれ大きなものになっているような気がする。そして道は少しずつ上り坂になっているようだ。

なんとなく嫌な予感がして自分の周囲だけを見るようにして歩く。

道の脇から何かが飛び出してきているようだけど、片っ端からお父さんとケンがやっつけているようだ。

私はひたすら見ないようにして歩く。


見るつもりはなかったけど、前の二人が急にとまったのでふと前をみると山。デデンと岩山があった。

まさか今度はロッククライミングなんてことないよね。

お父さんもケンも同じことを考えたようで足が止まった。


「何してるんですか。行きますよ」

ムウが最後尾から先頭に立ち、ズンズンと進みだす。

その後ろを私達は付いて行く。

そしてとうとう岩山の下に到着してしまった。

やっぱり今度はこの岩山をよじ登るのか、とゲンナリしてしまった。

ムウは周囲を見回すと

「こちらです」

と岩山の下、左側に向かい10メートルほど進むと止まった。そこには人一人通れる程の大きさの穴があった。

「ここを抜けて行きましょう」

ロッククライミングの回避にホッとして、小さなトンネルの中にムウ、私、お父さん、ケンの順で入って行く。

上から、下から、横から何か出てくるのか。何か仕掛けがあるのかドキドキしながらムウに付いて行く。


予想外に結局何もなかった。

トンネルも狭いけれど長くもなくすぐに外に出た。

「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」なんて有名な一節があったけど、雪なんかなかった。


「砂漠?」

一面の砂。所々岩はある。でも草木はない。ただ正面には門が見えた。かなり距離はあるようだけど、しっかり見える。

「ねえ、あれって...」

「あそこを目指しているんです」

ムウがニッコリ笑って言った。

後ろからお父さんとケンの雄叫びのような声が聞こえる。ゴールが見えたことで少しホッとする。

けれど今までのことを思い返してみると絶対に安心しちゃいけない気がする。

それに私はもうお父さんやムウに守られてばかりじゃいけないってわかってはいる。

せめて足手まといにだけはならないようにしなきゃ。

拳を握り気合を入れる。


砂地。決まったルートを外れたら危険。ムウの歩いたところを付いて行く。

砂の中から何か出てくるかもしれないし、アリジゴクみたいに落ちたら出られなくなる場所もあるかもしれない。緊張はしている。それでもムウの歩いたルートを確認しながら歩く。

私の人生の中で一番緊張しているかもしれないのに、何故か後ろは楽しそうだ。


「いやぁ、オレ砂漠なんて初めてだよ」

「オレもっすよ」

「蜃気楼とか見えたりするのかなぁ」

「オアシスってあるんですかね」

「つかさ、ケン。会ったばかりの頃と大分言葉がかわったよね」

「ダメっすか?見た目そんなに変わんないっすよね」

「実はさ、オレ16の体にしてもらったんだけど、本当は53なんだよね。娘と同じ歳にしてもらったんだ」

「マジっすか。ああ、だからハルカさんはお父さんって呼んでるんですね」

「そうそう。ところでケンはいくつ?」

「オレっすか?オレ22です」

「なんだオレより年上だ。ははは...」

(お父さん。体は16だけど実年齢53だって言ったばっかじゃん)

お父さん楽しそうだな。まあ、お父さんは元々出来る限り楽しもうって人だからいいんだけど、あまりの危機感の無さにイライラしてきた。


そんなことを考えていると私はどうやらルートを外したらしい。視界が急に下がり出し、体が少しずつ滑り出す。ズルズルと砂を滑り落ちていく。

ムウは私の状況に気付いて何かを出そうとしている。

何かで見た気がする。こんな時暴れれば暴れるほど砂にめり込んでいくこと。でも何もしなくても結局ズルズル砂に沈んでいくんじゃないだろうか。どうしたらいいのか最適解は出ない。

私の状況に気付いたケンが網を投げて捕獲してくれた。その網をお父さんと二人で引っ張り上げてくれて、私はもとのルートに戻ることが出来た。


「ハルカ。大丈夫か?」

「うん」

何をやってるんだ私。イライラしてルートを外して、助けてもらって、足手まといにならないって自分で決めたばかりなのに。


「ごめんなさい」

「いいんだ。ハルカが無事なら」

「間に合ってよかったよ」


お父さんとケンが笑う。

ムウがは無表情で二人を見ている。


「ハルカ様。これを」

ムウが長くて黒い棒を差し出した。

木刀、なのか?

「武器?」

「はい」

後ろから「かわいい」と小さな声が聞こえる。

(ケン。お前さっき振られてなかったっけ)と心の中で毒づいておく。


「武器ならナイフがあるよ」

「ハルカ様は接近戦が苦手なようなので、こちらもあったほうがいいかと」

確かに、ナイフで突き刺した時の手の感触はそう何度も味わいたくない。回数を熟せば気にならなくなるかもしれないけど、かと言ってそれに慣れるのも何か違う気がする。

私はムウの好意?を無下にするのも気が引けるし、その黒い棒を黙って受け取った。





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