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お父さんと一緒  作者: 熊沢五月


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10/12

村長とご対面

ケンの家は確かに村から離れていた。

家を出ると100メートルくらい先に石造りで、ケンの家の2倍か3倍はありそうな平屋の家が並んでいた。

家が並ぶエリアの手前で私達は一旦止まる。


「じゃあ、急いで行ってくるからここで待ってて」

ケンは村の中へ走っていった。

ケンは背が高いだけあって、足も長い。多分本人は軽く走っているだけなんだろうけど速い。


「ご主人。この村に滞在をご希望ですか?」

「うーん、宿屋も無いらしいし、滞在は無理じゃないかな。でももうちょっとケンといろんな話をしてみたいかな」

「承知しました。どうすればいいか後で相談しましょう」

お父さんとムウが話をしている。

特にすることのない私は村の中を見ている。人通りがない。村から出てくる人もいない。

活気っていうものがない。田舎の村ってこんなものなんだろうか?

私はぼんやりしていた。


「お待たせ」

ケンが戻ってきた。ケンの後ろには黒スーツ姿のおじさん?おじいさん?がいた。

青みがかった白い髪を後ろで一括りにしている。白い手袋をしてまさに執事。走っているわけでもないのにケンの速度に就いてきている。息も切らしていない。

凄いなぁ、と思って見ていると目が合った。執事さんは一瞬目を大きく見開いた気がした。


「コウイチ様ですね?お迎えに上がりました。村長は滞在は一度お話をしてからと言っておりますので、一緒に来ていただいてもよろしいでしょうか?」

ムウが執事さんとお父さんの間に立つ。

「それは私達全員でしょうか?」

「もちろんです」

執事さんはニッコリ笑って答える。

私達は執事さんの後を付いて行くことにする。


村の中心と言われる方向へ執事さんを先頭に歩く。その後ろをケン、私の順になり、私の隣にはお父さんがいる。私の後ろはムウだ。


歩いていると何人が通り過ぎるた。みんな一様に私達を通り過ぎると振り返る。男女、年齢問わずこちらを見つめる。私がそちらを見ると何事もなかったかのように視線を戻す。

何か変なものでも付けているのかも、と思い頭や服を見てみるが特に付いていない。

隣にはお父さんがいるし、って見るとそうだジャージに甲冑だった。そりゃ振り返るよね、と納得。


そう長く歩かずに村長の家に着いた。

村長の家はケンの家から横道に逸れることなく真っ直ぐだった。これなら道に迷うこともないだろう、きっとお父さんでも大丈夫。村長の家は村の中心にある広場の隣。広場の周りを囲むようにいろいろなお店が並んでいる。屋台のようにオープンで店頭に品物を並べているところもあれば、ただの家のようだけど玄関の上に看板がある店もある。きっと村長の家は村の一等地なんだろう。

村長の家は二階建てでその辺の家では一番大きくってケンの家の5、6倍はありそうだ。

執事さんが玄関ドアを叩くと中からドアが開けられた。

外開きのドアを執事さんが押さえて立つ。

「どうぞお入り下さい」

まさに執事のような行動に恐縮してみんなで入る。中にはさっきドアを開けてくれたであろうメイド服のお姉さんが立っていた。

「お部屋へご案内します」

執事さんがまた先頭に立ち階段を上る。階段を上りきってすぐのドアを執事さんがノックする。


「お連れしました」

「ああ、入ってもらいなさい」


部屋の奥には大きな窓があり、その前には机があり体格のいいオジサンが座っていた。

「どうもいらっしゃい」

オジサンはそう言って立ち上がった。

机の手前にあるソファー座った。

「ケン君案内ありがとう。もう帰ってもらって構わないよ」

「いや、オレの客人なので一緒にお話を聞いてもいいですか?」

「もちろんですよ」

笑顔でそう言いながら小さく舌打ちしたのを見てしまった。ムウも気付いたようで、その瞬間から目付きが鋭くなった。お父さんとケンは...全く気付いていないようだ。


「コウイチさんといったかな。よく来たね。同行されている方々を紹介してもらえないだろうか」

「はい。私の案内人のムウです。そして娘のハルカです」

「そう、娘さんなんですかぁ。羨ましいなぁ、私は息子しかいなくてねぇ。

そうだ、息子を紹介させて下さい。おい!アレを呼んで来い!」


オジサンは執事さんに命令する。執事さんは頭を下げてから部屋を急いて出た。

オジサンはソファーに座ってゆったりしているし、髪は金色だけど大分薄いし、お腹はメタボなお父さんより大分大きくて弛んでいるし、なんせ執事さんへの態度が気に食わない。私のオジサンへの好感度は0度からガンガン急降下中。そこへ来たのは金髪碧眼のイケメンお兄ちゃん。


私は面食いではない。いわゆるイケメンと言われる部類の男子達が女子の品評会みたいな話をしていて引いたことがある。なんでそんなことを知っているかというと、彼らには私の存在自体なかったんだろう。だから私はイケメンと言われる部類の男子は苦手だ。だからなのか執事さんのようにこんな私にも優しくしてくれると無条件でいい人認定してしまう。そんな執事さんに冷たい態度を取るオジサンは氷漬レベル。


イケメンはオジサンさんに近寄ると何か耳打ちされた。そして満面の笑みで私に近寄ってきた。

「初めまして」

イケメンがキラキラ笑顔を私に集中砲火してくる。

多分イケメン好きなら失神レベル。けれど残念なことに私は面食いではないし、そんなキラキラ笑顔はトラウマを刺激して吐き気がするレベル。私はお父さんの後ろに隠れた。

「あれぇ、恥ずかしがりやさんなのかなぁ」

イケメンがお父さんの後ろを覗き込もうとするけど、お父さんがガードしてくれる。

「それで許可はいかがでしょうか」

お父さんとイケメンの間にムウが入り込み村長に聞いた。イケメンは小さくため息を吐いて村長の後ろに立った。


「許可をしましょう。しばらくこの村に滞在するのかい?」

村長はニコニコ笑顔で答える。

「いや、オレ達は..」

お父さんが言いかけるとムウが遮るように答えた。

「ありがとうございます。少し見学をしたらまた出ようと思います」

「そうか、それは残念だ。ケン君のようにこのままずっと居てくれていいのになぁ」

村長はガハガハと笑う。

「それでは御前を失礼いたします」

ムウが頭を下げたのを合図にケン、お父さんと私、ムウの順で部屋を出た。

ムウがドアを閉めようとした時、村長が言った。

「そうだ。明日、歓迎の宴をしましょう。ケン君も村の一員になったことですし、皆さん是非参加してくださいね」

ドアが閉まる直前にチラリと見えた村長の顔は、なんだか笑顔なのに気持ち悪かった。








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