モブの自覚(佐藤)ハーレム主人公編
1話目?を読んで頂きありがとう御座います
この世は意外にも、多種多様なラブコメで溢れている。
そして、その数だけ──いや、その倍以上のモブキャラも溢れかえっている。
要は──俺は気づいてしまったのだ。
自分がラブコメ最序盤に登場し、物語が進むにつれてフェードアウトしていく、特に本筋に特に関わることもない、ただの“モブ親友キャラ”であることに。
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「ねぇねぇ勇気〜! お昼ご飯、一緒に食べよっ!」
「やぁ勇気くん。まさか僕たちと食べるのが嫌だなんて言わないよね?」
「ゆずは、お腹すいたよ〜!!!」
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数々の魅力的なヒロインたちとフラグが立つわけでもなく、主人公の背中を押す役割もない。
強烈なネタキャラでも、特に何か伏線を張るわけでもない。
ラノベにおいてヒロインの次──いや、何なら主人公の次に登場してるのにもかかわらず、挿絵はおろかキャラ絵すら描かれない不遇の存在である“モブ親友キャラ”、縮めて“モブ友”は今の俺の置かれた状況にあまりにも相応しい。
せめてもの情けに誰かTwitterで俺を描いてくれないか?
ふと、俺は教室の何やら煌びやかな一角を眺める。そこには、ずっと仲が良かったはずの元親友が、六人の個性豊かな美少女に囲まれて、イチャイチャしている光景が映し出されていた。
「勇気! 別にアンタの為に作ってきた訳じゃないんだからね!」
「え〜なになに? わぁ、みよりんどうしたのこの弁当! すっごい可愛いじゃん!」
「えへへ、そうかな? ……って違う!」
誰がどれを喋っているのかはっきりとはわからないが、彼がヒロインズの会話を、まぁまぁとなだめている勇気の様子は、実にハーレム主人公らしい。
なんなんだこの複雑な気持ちは。
まるでNTR漫画を読み終わったあの独特の後味……のような感覚になる。隠キャ君みってる〜!!!への理解度がまた一つ深まったな。
元親友──もとい主人公くんは、彼女たちと関係を深めるのに比例するように、クラスにも馴染んでいった。
文化祭、体育祭。いわゆるラブコメのメインストーリーってやつを順調にクリアし、ヒロインズとの関係を深めていく。
そして文化祭を経て、頑張りが陽キャ男子たちにも認められ……。
──大きくなったんだな。
俺は、頬をツーと流れる涙を拭くと、弁当を持って教室を後にした。NTRじゃない。この感情はきっと親心だ。
もうあいつの隣は親である俺の居場所ではなく、独り立ちした先のパートナーのものなのだ。
……さぁ、どこの便所で飯を食おうかなああああ!
「「「いっただっきまーーす!!!」」」
や、やめろぉぉぉぉぉ!
廊下にまで幸せの音色を響かせるなぁ!
はぁ。今にも闇落ちしてやるからな!
にしてもお前と教室の端で飯を食ってた頃が懐かしいよ。
女の子を引き連れてるのが羨ましいが、それ以上にお前が遠くに行ってしまったような、一人大事な友人を失ったような気がしてこっちはちょっとセンチなメンタルだ。
色々と気に食わないが、それはあいつらの邪魔をしても良い理由にはならない。
俺が気を利かせて、せっかく関わらないようにしてるのに。
思い出したように一緒に帰る時があるのが、一応まだ忘れていないからなって感じがして、惨めになるからやめてほしいが……。
俺は面倒くさい彼女か!いたことないからしらんけど……。
それでも。
最近密かに「女の敵」とか言われるようになったお前を、陰ながら応援しているからな。背後に気をつけろ、刺されるなよ。
そう心の中で元親友に対して檄を飛ばしながら俺は人気のない一階多目的トイレへと向かったのであった。(完)
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