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4年生編(3)

 4年生の初秋。すっかり寒くなり、冬の訪れを近くに感じる。乾いた冷たい風が弘前市を包み込む。この間まで半袖で過ごしていた人々も、さすがに上着を手放せなくなっていた。


 和樹の小学校に植えられている銀杏の木は、鮮やかな黄色で着飾り、独特の匂いを放つ。銀杏の葉が地面に落ち、子供たちの黄色い絨毯となる。子供達は銀杏の独特な匂いに戸惑いながらも、鮮やかな黄色に感動するのであった。


 和樹たちが部活に所属して半年。夏の炎天下での走り込みや筋トレなど、きつい練習を乗り越えた和樹たち。新人は体力をまず付ける必要があるという監督の考えの元、体力づくりの練習ばかりさせられた。泥臭く、地味な練習は和樹と正樹にとって、ひたすら退屈であった。


(「野球をするのに、こんなに体力を使うのかなぁ?」)


 と、素朴な疑問が和樹の中に現れる。退屈な練習なんか辞めて、投球練習やバッティング練習をしたくて、仕方がなかった。それは正樹も同じであった。


 どうしても技術的な練習をしたかった2人。休みの日に河川敷で自主練習をすることにした。河川敷はとても広く、野球場こそないものの練習をするにはもってこいの場所であった。2人は見よう見まね、無我夢中で練習をし始めた。しかし、暴投をしてしまったり、思った方向にバッティングができなかったりした。


 苦虫を噛み潰したような表情をする二人。挫折よりも先に、自分たちがうまくプレーできないことに悔しさを覚えた。そして、その悔しさは向上心とやる気に変換される。


 2人は四六時中野球のことを考えていた。登校中、授業中、もちろん練習中も。休みの日は欠かさず練習をし、余力がある時は練習後も自首練習を行なった。彼らの流れる汗は努力の結晶であり、手にできたマメは向上心の権化であった。


 とうとう迎えた、秋の新人戦の選手発表の日。肌寒さを感じながら、円陣を組む野球部員たち。新人戦の選手発表ということもあり、部員たちの表情は硬く、一切音を立てる事なく監督の発表を待っていた。和樹と正樹もじっと監督の発表を待つ。風が止み、自然も音を立てない。まるで、自然も緊張しているかのように。


 (「もしかしたら自分たちも選ばれるかもしれない」)


 そんな淡い期待が、彼らの中に芽生える。自分たちの努力が実って欲しいと、切に願う2人。

 監督が静かに選手を発表し始めた。

「それでは、これから新人戦に出場する選手20人を発表する。みんな心して聞くように。」

 部員たちの表情がさらに硬くなる。

「まずは1番、工藤。」

「はい!」

 6年生のエースが大きな声で返事をする。


 その後、18番まで選手が発表されたが、和樹と正樹の名前は呼ばれなかった。18番までの発表が終わり、周りには緊張感がなくなる。喜びの表情をするものもいれば、下を俯いたまま動かないものもいる。そんな中、和樹と正樹の緊張はまだ解けない。まだ、背番号をもらえるという希望が残っていたからだ。監督の発表を待っている彼らのこめかみには、寒さを無視するかのように、汗が滲み出ていた。

 監督が次の選手を発表し始める。


「19番、和樹。」

「はい!」

「最後に20番、正樹。」

「は、はい!」


 日頃の練習の成果が実った瞬間であった。返事をし、背番号を受け取った2人であったが、あまりの衝撃に呆然と立ち尽くしてしまった。脳は空っぽになり、足に根が生えているかの如く動けなくなった。


 しばらくして、我に帰った二人。すぐに、喜びを分かち合うのであった。

「和樹、やったね!」

「正樹と一生懸命練習したおかげだよ。本当にありがとう!」


 努力がもたらした成果を感じ、お互いの頑張りを褒め合う。次はレギュラーを獲得するために一生懸命練習することを誓うのであった。



 年が明け、5年生になった和樹。

 なんの変哲もない生活が待ち受けている……はずだった。

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