第四話 ソダリタの時間
―ソダリタ―
ソダリタ、フォーリア王国の首都を囲む3大都市の1つ。魔法道具の生産とそれの貿易で名が知られていて、観光客も多く賑やかな街、そしてソダリタで作られた魔法道具の品質は王国の中でもトップを誇ると言われている。
「すっごーい!賑やか!」
「そうでしょう、時間あるし少し散策してみるか?」
「もちろん、面白いものがいっぱいありそうだ」
そうして、ソダリタを少し散策することになった。
ここの建物は日本とは全く違う、どちらかと言うと洋風な建築が多い。まるでイギリスにいるみたいな感覚だ。だが、不思議なことに所々日本ぽい要素がある建築もある。
「その建物気になるよね」
「うん、何だか日本ぽい」
「正解、それは日本から来た吉田さんと言う人が設計した建築だと聞いた」
「吉田さん…」
バイクの次は建築か…日本人たちかなり好き勝手やってんな。それとやけに日本人多くないか?
『そういう事は無いですよ。現在、この世界にいる日本人はマスター含めて、たったの10人です』
10人⁈ま?
私と生駒とバイクを作った何かさんと吉田さんを除いたら残り6人しかいないの?その割には活躍が過ぎるだろ!
『日本人の中に現代の知識を持つ方がいるからと推測です』
そうだな、魔法がとは言え、現代人にしては足りてないと感じる人もいるだろう。
『ウォシュレットを作った人もいたようです』
一家に一つはあると言われるからな、欲しい気持ちは分かる。
「この前が商店街だ、入ってみるか?」
「行こう!どんな物が売ってるか気になってしょうがない!」
商店街は噴水広場を中心にして作られいて、屋台も店舗も豊富である。
売り物も色々あり。化粧品から洋服、魔法道具や武器、見たこともないぷよぷよした果物、香りが漂うパン、お握りまで、思いつかないだけで無いものは無い。
街の中にはお茶飲みながら世間話をする婦人や値切りする人、客を寄せる店員さんなど、賑やかで元気な空間になっている。
平和で賑やかだ〜戦争とかは無縁そうな街。
たしかこの前生駒が"街は魔導ギルドを映す鏡"って言ってたから、それが確実なら彼が属する魔導ギルドはよほど良い所なんだろう。
いや〜大きい商店街だな〜現代のショッピングモールってとこか。噴水広場だ、さっきの地図を見る限り商店街の中心かな?
次はどっちから散策しようかなぁ…
そして、ゆっくり歩いてた2人は突然屋台の人から声をかけられる。
確実には生駒が…
「あら!生駒ちゃん、お仕事から帰ってきたの?お腹空いたでしょ、ほら、このお握りを持っていきなさい」
「いいよデールおばさん、商品でしょタダでは貰えないよ」
「おお!生駒じゃぁないか、帰って来たんか!今日のリンゴは甘いぞ、持ってきな!」
「ダメだよゴーデンのおっさん!」
「遠慮すんなって、俺らもいつもお前らに助けてもらってんから」
「そうよ、遠慮しないで生駒ちゃん」
「そうよ生駒!うちのクッキーとパンも持って行きな、ギルドのみんなと分けてくれ」
「シナさんまで…」
すっご〜近所のおばさんに可愛がれる子供みたい。
ギルドと街の人は仲良いんだな、生駒にギルドにと、どんどん手の上のものが増えていく。
街の人に愛され、いい関係性を築けている証拠だろう。ますますどんな魔導ギルドが気になってきた。
そして数秒後、生駒と話してたおばさんがその背後に立っていたタラッサに気づく。
「あら!生駒ちゃんこの子彼女ちゃん?」
「おお!生駒お前彼女できたんか!いつできたんだ、もっと早く言ってくればいいのに!」
「あらまぁ!とんでもない美人さんだね!生駒と付き合ってるのかい?」
えっ?どういう展開?なんでそうなる?
「あ、え?いえ、付き合っていません」
「はいはい、変な事言わない。ただソダリタに来たいって言ってたから案内してあげただけ、彼女ではないよ」
「そうなの?残念ね、生駒ちゃんがやっと彼女作ったと思ったのに、この子なかなか彼女作らないからおばちゃん男の子が好きなんじゃないか心配で…」
「変な心配しないでくださいデールおばさん…」
「まぁそんな事はさておき、お嬢ちゃんお名前は?」
「タラッサです」
「タラッサちゃんね、ようこそソダリタへ。私はここのお握り屋さんを経営してるデールよ、そのままデールおばさんて呼んでくれたら嬉しいわ」
最初に話しかけたのはデールおばさん。おばさんと呼んでって言ってるわりにはすごく若く見える、喋り方がすごく優しい、綺麗な女性。
「俺はゴーデンだ、見た通り果物屋をやってる!」
次はゴーデンさん。元気な人でとにかく声が大きく商店街の隅々まで届きそう。
「パン屋のシナよ、困った事があったらいつでもうちにきな、あなたみたいなかわいい子は大歓迎よ!」
最後はシナさん。明るく熱心なのがわかる、ザ・近所のおばさんみたいな婦人。
なんか突然自己紹介が始まった…一応私ももう一回しようか。
「タラッサです、改めてよろしくお願いします」
そして、なぜか近所のおばさんに可愛がれる子供が私になった。
・・・・・・
その後いろんな話を聞かれてかれこれ10分がち、話が終わって離れる時には私の手にも大量のお土産(?を持っていた。近所さんずの熱情には勝てないと身をもって体験した。
はあ〜
やっぱ人間との会話は疲れる…
疲れるけど…嬉しい。
「疲れたでしょ、いつもこんな感じなんだあの人達。うるさいと思うかもしれないがみんないい人だ」
「確かにみんなおしゃべりだね、私気に入ったかも」
「ふん〜物好きだねタラッサちゃん〜」
ゾワッ…
「アンタも嬉しそうに見えたが?生駒ちゃん」
ゾワワッ…
「キッモ、俺の負け。足の裏からゾッときた」
「その言葉そのままお返しします」
「で?この後はどうするんだタラッサ、街まで案内したのはいいが、この後何をするか決めた?」
「今決まった」
「今?」
「うん、できればこの街の魔導ギルドに入りたい。まだ入ってきたばっかりなんだけど、私この街のこと気に入った、少なくとも一瞬この街に住みたいっと思った」
「一瞬だけ?」
「うん、まだ半日も経ってないからね」
「まぁね、だけどそう言うと思った、とりあえず行こうか」
そして再度生駒の後ろを歩き、商店街をでてある方向に進む。
辿り着いた先は大きな大蛇の像が立つ大広場、周りはキレイに装飾されており、くつろげるようにベンチも設置されてある、公園とも言える空間。
「大きい蛇の像だね…」
大きな蛇目が青く光ってる、なんの石なんだろう…それとも空の反射かな?
「俺のギルド、青の大蛇へようこそ」
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「え?」
いやこいつまだ寝ぼけてるのか?
ギルドって、ただの蛇の像が立つ公園のこと?何言ってんだこいつ、叩き起こしてやろうか?
「ここのどこにギルドがあると言うんだ?」
「?目の前だけど」
目の前マ?
「蛇の像しか見えないが?」
・・・・・。
「あっ、ごめんそこじゃちょうど見えないかも」
「…無料の空の旅でも行かせようか」
「結構です、うちのギルドは像の真後ろにあるから像の後ろに行こうか」
何で最初からそうしなかった…
そう思いながら像の背面まできた。
「では、今度は絶対に見えると保証する…」
青の大蛇へ、ようこそ。




