第二話 始まりの時間
ふわぁ〜
よく寝た。この世界の夜は、温度も湿度も非常に快適だ。
『おはようございます、マスター!』
おはよう、ナロ。
さて、新しい生活の始まりと行こうか!
ナロ、いろいろやってるついでに、昨日言ってたのこの世界の話を続けてくれ。昨日は元のタラッサのせいで中断されたからな。この世界の知識と文化をもっと知らないと、今後の生活に支障が出る、なるべく早めにこの世界についての知識を持たないと。
『了解ですマスター、ではまず昨日話したマスターの4つの所有魔法に関して説明しましょう!』
おっ、それそれ〜
昨日は蜘蛛の糸を覚えて使ってたけど、それ単体でもかなりいい感じだった、使い方によっていろんなことができるからな。他に何の魔法が使えるか気になってたところだ。
『コッホン~ではこのオペレーター76ことナロがご説明いたしましょう!まずは、この体が元から所有している魔法、《クロノス》から説明します!』
元のタラッサが持ってた魔法か。
『マスターは現在、この魔法から2つのスキルを所有しています。《クロノス》から所有している2つのスキル、それは《ロストクロノス》と《リターン》です。
《ロストクロノス》:その場所の過去、もしくは相手の記憶を見える。
付属効果:亡くなりし者が見える。
《リターン》:物の時間戻す。但し生命体は対象外。
以上2つがマスターが現在から所有している2つのスキルです。』
付属効果が亡くなりし者が見えるか…だから昨日元のタラッサを見えたのか。
『そうですね』
だけど、あの子は私たちの会話を聞こえてたぞ。心で話してるつもりなのに。
『それはおそらく彼女がこの体に、まだ少し繋がりがあったからでしょう。マスターが彼女の体に入った時は、彼女も死にたてホヤホヤだったので』
その死にたてホヤホヤやめろ…ぶっ飛ばすぞ。
だけどそうだよね、もともとこの体は彼女の体だったし。
にしてもだ、亡霊を見えるとはかなり厄介な能力だな。
『安心してください、魔法はすべてコントロールできるものです。なので、マスターが見ようとしない限り見えないはずです、元のタラッサはあるい唯一の例外でしょう』
そうだな。
『そして、あと一つ』
?
『この《クロノス》にはどうやら私には知らない秘密があるようです』
秘密?どういうことだ?
『わかりません、ただしこの世界にある他の魔法とは少し違う感じがします』
違う感じ?かなり曖昧に言うね…
まぁ、これからいっぱい時間はある、そのうち知るだろう。その、知らない秘密の正体が。
答えがない問題はさておき。本題に戻ろう。
次の魔法はどういうものだ?
『次からは補助システムがくれた魔法ですね、1つ目が《蜘蛛の糸》です、こちらに関してはご説明しますか?』
いや、これは大丈夫だ、概ね使い方はわかってる。文字どうり蜘蛛の糸を出す魔法、使い方によって色んなものにできるのが便利だ、出した糸は消えないことも今確信した。
『了解です!では、そのまま次に進みます。次は《毒薬》です。
《毒薬》:一度口にした薬性をもつ植物、もしくは毒薬を体にメモリーし、欲しい効果の毒薬を体内で合成。
体のいかなる場所からミスト状で放出できる。
また、口からは液状で精製可能。
付属効果:毒無効化。
以上が二つ目の魔法《毒薬》です』
かなり使いやすそう…じゃねぇわ!
口から液状で精製可能って何た!ただのよだれじゃねーか!ふざけてんのか?!あぁん?
『でもこれは…システムが設定したのが…こういうもので…』
・
・
・
はぁ…
まぁいい、使いやすそうな魔法だし、許す。
つまりこの魔法は、いろんな植物を食べれば食べるほど、使える毒が多くなることか。
『そう言う事ですね』
だけどどんな植物にどんな効果があるか分からないからな…
まぁ気にせず、まずはこの森の中の植物を目に入った物から、片っ端全部食べてみようか、どうせ毒無効化あるし。
で、最後の一つは何だ?
『最後の魔法は《領域》ですこれは3つのスキルがありますね。
《領域》:視界以内の物を瞬間移動。
《瞬間移動》:視界以内の場所へ自身を瞬間移動。
《異空間》:時間概念が存在しない異空間、物を保存できる、但し生命体は対象外。
以上が最後の魔法《領域》です!』
おーまたもかなり使いやすそうな魔法だな…って
この異空間もっと早く教えろ!この大量の植物を持って歩くの疲れんだぞ!しかも時間概念無いなら尚更だ!見ろよこのエンジェルフラワー!取ってまだ一日経たないのにもう元気なくしてんだぞ!(エンジェルフラワー:T^T)
『マスターが聞いてなかったので…』
はぁ…これでもサポートか?
『そう言わないで下さい!ナロ傷つきます…(シクシク)』
…チッ
『心で舌打ちましたね!』
何だよ、分かるのかよ
『分かりますぅ!』
まったくだ 。
先ずは異空間がわかったことだし、物を全て中にぶち込んどこう、そして…まずは色んな植物を集めようか。
集めてるうちに…
ナロ、他にこの世界の情報は有るか?
『はい!次はこの世界の魔法使いに関して説明しますね!』
魔法使いか、今後はこれで食ってけるか知りたいところだ。
『ご存知の通り、この世界は"魔素"と言う物があります、そして"魔法使い"つまりマスターみたいに魔法が使える人はごく少数です。』
意外だな、異世界だからてっきりみんな使えると思ってた。
『いいえ、魔法はそれ相応の魔素の"器"が無いと使えません。その器をもち、魔法を駆使できる者しか"魔法使い"になれません』
その言い方だと"器"があっても魔法を使えない人がいるのか?
『はい、器があるか否かは先天条件ですが、それがあっても大きさによって魔力が大きく違います』
器があるけど、それがもしコップ程度だったら足りないってことか。
『はい、こう言う人は生活用の火起こし程度しか魔力が無いので"魔法使い"とは呼びません』
なるほど、器を大きくする事はできないのか?
『出来ますが…至難のことで時間が必要なのです』
修行みたいなもんか。
『そして!ここからが大事なところです!』
ほう、何だ。
『その魔法使いを束ねる場所です!』
漫画にある冒険者協会みたいな?
『NO.NO.NO.』
また出た、ノーノーノー
『似たようなものですが、全然違います。ここでは、魔法使いしか入れない"魔導ギルド"があるのです!』
ギルドか。
『はい!民間では魔法ギルドとも呼ばれてるらしいです』
詳しいなぁナロ。
『それはそれは、オペレーターですから〜フッフッ、当然なことですよ〜』
ドヤるな。
『その魔導ギルドに属する魔法使いがギルド魔導士と呼ばれるのです!魔法使いに関しては以上です!これ以上の詳しい内容は、マスターの目で見てくるのはどうでしょうか?』
そうだな、自分で見て聞くのも大切なことだし。じゃあ私はまず街を目指して、ギルド魔導士を目標にしよう。ギルドには大体想像がつく…
ふふっ、ますます楽しみになってきた。
と思ったけど…先は……
「ハァ…ハァ…」
この体をどうにかしないと!!
何だこの体は!さっきから10分しか動いてないぞ!流石に貧弱すぎる!さっきから枝に引っかかるわ、躓くわ、全く思い通りに動いてくれない!前世体力しか取り柄が無い私には使いこなせないわ、逆に!
「ハァ…ハァ…」
まず体の栄養を補足するとこからだな、流石にいまの状態じゃ18歳とは考えられない、身長も普通ならもっとあっただろう。
どうしよう…
そうだな…2ヶ月。2ヶ月で私が満足できる状態まで鍛えよう、せめて体力を上げないと話にならない。
こんなひょろひょろな自分は初めてだ…
そして私はそのまま森の中で2ヶ月の特殊訓練を始めた。
訓練は得意だ、殺し屋を始めたての頃毎日訓練してた。起きたら8時間のトレーニング、終わったら武器の練習。
毎日欠かさず、自分を磨いてた。ハードルが高いミッションを取って、もっと金を稼ぐために。
だが…この身体はそう上手くいかない。何故なら、基礎が全く無いのはともかく、長い時間栄養が足りていなかったためとても貧弱で、10分走ることすら困難だ。
その為全く新しメニューを作った。(ナロを時計代わりにして)
メニュー
〜
8am.起床
9am.ストレッチ
10am.-4pm.トレーニング、狩
5pm.-8pm.魔法特訓
9pm.ストレッチ
10pm.就寝
このように一ヶ月がたった。
身体の限界まだ追い詰めて、休みを頻繁にとって、いっぱい食べて、子供のように10時間睡眠をとって。
健康だと思ったことを片っ端試してみた。
結果、若干身長が伸び、身体に筋肉と共に体力がついてきた。
この森はいろんな魔獣がいるから食料には困らないし、魔獣狩りも一種の訓練になる。まさに一石二鳥。
『マスターはこの1ヵ月で
身長:155.3cm→158.6cm 計3.3センチ
体重:39.2kg→46.8kg 計7.6キロ
以上の変化を果たしました』
うんうん、順調だ。
これでやっと少し18歳の女の子らしくなってきた。
にしても、この子もかなり遺伝子がいいな…ガリガリの時でも綺麗だとわかっていたが。健康になって、肉がついたらさらに綺麗なのが分かる。
顔が小さくて鼻も高い、何より瞳が海のように神秘的でとても綺麗。肉もいいとこにつく…
前世モブ顔で、一生まな板の私にはわかる…この子は生まれつきの美人だ!そして、今その美人の中にいるのは私!なんて素晴らしい!
『…マスター、これ以上湖に反射する自分を見てよだれ垂らすのやめてください…』
垂らして無いし。じゅるっ
と言うことで特訓は順調に進んで2ヶ月目に入った。
1ヶ月目でかなり体力が出来たため、2ヶ月目のメニューのハードルを少し上げた。せめて…魔法なしで魔獣を倒せるぐらいの力は欲しい。
メニュー
〜
8am.起床
9am.ストレッチ
10am.トレーニング
1pm.魔獣狩り(魔法禁止)
3pm.水中トレーニング
6pm.魔法特訓
9pm.ストレッチ
10pm.就寝
そして早くももう1ヶ月がたった。
トレーニングや魔獣狩りの時に植物もたくさん集めて、休憩中にそれをもしゃもしゃ食べて。
他にも、領域で石を削ったり、異空間で水を溜めて領域で無限テレポートさせて魔獣を溺死させたり、蜘蛛の糸でスパイダーXのように森の中を飛び回ったり。
とりあえず、訓練以外も思い浮かべられた事、全てをやってみた。
そして、身体も確実に変化を遂げた。
ナロ、この1ヶ月の成果を教えてくれ。
『了解です、マスターはこの1ヶ月で
身長:158.6cm→166.3cm 計7.7センチ
体重:46.8kg→52.8kg 計6キロ
以上の変化を果たしました』
7.7センチ⁈聞いた事ないぞ一ヶ月で7センチ伸びるの!
『確かに、非常に稀な事でしょう。だけどマスターはこのニヶ月、森から一歩も出ていませんでした』
うん、確かに一歩も出ていないけど。
『それが原因です。この二ヶ月マスターはこの森で生活した。この森は魔素が満ち溢れています、だから普通の動物ではなく、凶暴な魔獣がいるのです。そしてマスターはこの森で特訓をして、この森で育った果物や魔獣の肉を2ヶ月食べました』
そうか、魔素は栄養剤!
『正解です!』
まさか人体にまで影響が及ぶとは思わなかったよ。だけどおかげで予想より良い結果になった。
『そうですね、この2ヶ月の間でマスターの器もかなり成長しました。魔素量が元の二倍ぐらいですよ!』
特訓の成果だな、努力は裏切らない。
『そうですね。でも、次からは素手で魔獣に挑むのはやめてください』
余裕だったよ?
『ヨユウダッタヨ?ではないです!魔法がある世界だと言え、魔獣を素手でぶっ飛ばす人間はそう居ません!』
わかったわかった、次からは魔法を使うよ。そっちの方が楽だしな。
『その言葉覚えてくださいね』
はいはい。
いや〜
にしても本当にタラッサは恵まれてるなぁ〜このボディーライン、この顔。アイドルになるべきだよあ・た・し☆
『マスター、アイドルより不審者に見えます』
グサッ
…しょうがないじゃん、前世の私には夢でも叶わない見た目なのよ!少しぐらい自分に見惚れてもいいじゃん!
ってことで。
体力も見た目も良くなったことだし、そろそろ街に向かおうか。
やる事も無くなったし、いつまでもこの森に住んでる訳にもいかないからな。
さてっ、そう決めたのはいいが…
街はどっちお進んだら良いんだ?
えっと…
えっと……
ガサガサ…
⁈
魔獣か?
「なぁ、そこの君」
人間⁈
「そうだよ。君、君、君しかいないたろ?どこ見てる?上だ上」
「なぁ、まさか君聞こえないっか?」
喋りかけてきた!
どうしよう、2ヶ月ぶりの人間だ!




