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第14話 死にたくなってくるぜ

 



「あ~あ、結局ブタ箱に逆戻りかよ」


 ついてねぇ~よなぁ、本当についてねぇよ。

 ナナに買ってもらったハイブランドのこの服もボロボロでダメになっちまったし、俺がまた就活するようにって買ってくれたスーツ一式もお兄ちゃんに踏んづけられてどっかいっちまったしよぉ。


 終いには少女誘拐の容疑だぜ?

 どうすんだよ……もし有罪判決にでもなったら俺は晴れて前科者だ。お先真っ暗どころか、人生終わったろこれ。


 捨てる神あれば拾う神ありっていうけどよ、ナナにケツ叩かれてもう一度やり直そうって立ち上がろうとした矢先に、こんな酷ぇ仕打ちはねぇよな~。


「はっ、所詮俺はどこまでいってもクズってことか……」


 たった一人の女の子を守ることさえできなかったクズだ。

 いや……守るどころか逆に守られちまったしな。情けね~ったらありゃしねえよ。


 あ~あ、なんだかな~。


「死にたくなってくるぜ」


「おい、バカなこと考えんじゃねぇぞ」


「刑事さん……」


 情けない自分自身に怒りを抱いていると、不意に田中刑事が声をかけてくる。刑事さんは牢屋の外から俺を見下ろすと、ガシガシと頭を掻きながらため息を吐いた。


「随分とまぁ酷ぇ有様だな」


「見ての通りさ。アンタも暇だね、実は俺を口実にしてサボってんじゃないっすか?」


「バ~カ、そんなんじゃねぇよ。それより話は聞かせてもらったが、少女誘拐ってのは事実なのか?」


「家出中のJKにお願いされたから一晩泊めてやって、一生のお願いだからデートしてよって頼まれたから仕方なく付き合ったけど、それが誘拐になっちまうんならそうなんじゃねえのか」


「相手が未成年ならアウトだな」


「だよなぁ……」


 がっくしと項垂れる。

 未成年を親の承諾なしで泊めるのは、例え本人の合意があってもアウトになる。それ自体は俺も分かっていた。


 でも助けを求めてくるナナをあの場に一人放っておくのもできなかったし、バレなきゃ平気だろうという安易な考えで泊めちまったんだ。


 まあ結局バレてこうなっちまってんだからざまぁねえわな。


「お前さんも災難だったな、西園寺家の人間と関わっちまうなんてよ」


「あの家のこと知ってんのか?」


「何言ってんだお前、西園寺グループっていったら財閥に次ぐ有名企業だろうが」


「ふ~ん」


 十年間異世界に居たからその辺の情報は疎いんだよ。

 言われてみれば就活の時にそんな名前あった気がしなくもないが、数年前のことだからもう忘れちまった。


「西園寺グループねぇ……」


 百万の札束をポンと出せるお兄ちゃんといい、ハイブランドの店にツケで支払えるナナといい、よっぽどの金持ちだとは思っていたがそんなに凄い家だったのか。


 無職の俺とは生きてる世界が違うぜ。


「だがまぁ、あそこは色々ときな臭ぇんだよな」


「ふ~ん、どこら辺が?」


「政治家との癒着とか裏金とか、刑事ドラマで出てくるようなありきたりなもんだよ。警察こっちでも色々と動いて証拠も掴んでるんだが、上が中々首を縦に振らねぇ」


「おかしくねぇか? そこまで悪どいことやってんのがわかってんのに、どうして捕まえらんねぇんだよ」


「末端の俺が知るかよ。けど何となくだが、上は西園寺家を恐れてやがる」


「恐れてる? 何に?」


「さぁな……それが西園寺なのか、西園寺の“背後バックに”なのかはわからねぇ」


 バックねぇ……そら多分あの白髪頭のガキんちょのことだろうな。

 あのガキは絶対に普通じゃねぇよ。めちゃくちゃ強ぇし、人間なのかも怪しいところだぜ。


 化物を盾に好き放題やってるってことか。絵に描いたような悪党だねぇ。

 まぁあんな化物が背後にいちゃ、天下の警察もお手上げって感じか。


ブタ箱(こんなところ)にいる俺が考えたって詮無しことなんだけどな」


「腐るなよ。まだ有罪と決まった訳じゃねえんだから」


「ど~だかねぇ」


 刑事さんなりに励ましてくれるが、この先上手くいかないことぐらい理解してる。

 俺みたいなクズが頑張ろうったって、結局今みたいに全部悪い方にいっちまうんだ。


 もう疲れたよ、パトラッ〇ュ。

 燃え尽きたぜ、真っ白によ。


「お疲れ様です、少しよろしいでしょうか」


「おう、どうした」


 看守が来たと思ったら、ガチャガチャと鍵を開ける。

 さらにドアまで開けて、俺にこう言ってきた。


「出ろ、津積比呂。釈放だ」


「「……?」」


 突然の釈放に、俺と刑事さんは意味がわからず顔を見合わせた。


 何がどうなってんだ?



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