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異変3

 ※※※

「じゃあ何?あのアパートのバケモノは私だって言いたいわけ?」

「だから違いますって〜」

 お化けアパートもとい善人達の住居アパートに進む道すがら、善人と竜司は原に絡まれまくっていた。

 子ども達に聞き取り調査を終えた後、善人は子ども達を竜司とリアティオスに任せ、約束した「お化けに子ども達を呪わないようにお願いしに行く」と実行すべく、商店街祭の運営委員に事情を説明しに行った。

「え〜!そうなんだ。でも見間違いでしょ?気のせいだって言っておけば大丈夫だったんじゃないの〜?」

「いや、でも、すごく怯えていたんです。もし誰かをお化けを見間違えていたんだったらその方にお詫びも必要だと思いますので、申し訳ありませんが抜けさせてもらえないでしょうか?」

「いや〜」と渋っていた運営委員だったが、そこにパトロール中だった運営委員の一人、本屋の店主が現れた。

「何、どうしたの?困りごと?」

「いやぁ、それがね」

 そういってかくかくしかじかとあらましを説明を聞いた本屋の店主は、その場にいた全員の予想に反して善人の味方をした。

「それって大変じゃない!?お化けなんてそんな今すぐ確認しに行った方がいいでしょう!」

 それに慌てたのはもう一人の運営委員だ。てっきり自分と一緒に反対してくれると思ったのにまさかの善人の肩を持ったのだ。慌てて止めに入った。

「え、ちょっとちょっと!そんな、今抜けられると困るよ〜。後片付けもあるのに」

「それは私が手伝うわよ!あ、原さんも一緒に行った方がいいわよね?だってアパートに住んでるんですもの。お化けなんて原さんも確認する必要があるわ。私、原さん呼んでくるわね!」

 言うが早いか観客席にいた原を呼びに走っていった。

 残された善人と運営委員は思わず顔を見合わせた。

「なんか……ちょっと変じゃなかった?」

 本屋の店主の様子がおかしかった理由は、連れてこられた原の様子を見てすぐに判明した。

「なに〜バケモノだってぇ?ぶっとばしてやるよこのやろう」

「バケモノじゃなくてお化けだってば、原さん!」

 見事に酔っ払っていた。

「てめえあんないしなこのやろう〜」

 呂律どころか足元すらもおぼつかない状態で随分と威勢のいいことを言う。

「え、どれだけ飲んだんですか原さん!?」

「それがねえ」と本屋の店主は頬に手をあてて言った。

「缶ビール一杯だけしか飲んでないらしいのよ」

「缶ビール一杯……」

 こんなにお酒に弱いとは思わなかったわ、とため息まじりに言った本屋の店主だったが、原の背を押して善人にそのまま押し付けた。

「ちょ、ちょっと!」

「お願いよお。お隣さんなんだし、送っていってあげて!ついでにお化けの正体も確認できるでしょ?今日はこのまま帰っちゃっていいから、ほら!」

 どうやら泥酔状態の原の介護とこの後の片付けを天秤にかけて、酔っ払いの介護の方が面倒くさいと判断したようだ。善人に酔っ払いを押し付けると、「じゃあ私パトロールに戻るから!後は頼んだわよぉ〜!」と口を挟む隙を与えずに立ち去った。見事な逃げ足だ。

「じゃあ、そう言うことだから、気をつけて帰ってね。こっちのことは気にしなくていいから!」

 先ほどまであんなに渋っていた運営委員も、先ほどとは打って変わって協力的な発言とサムズアップを見せた後、「あー忙しい忙しい」と言いながらどこかに去っていった。

 仕方がないので泥酔状態の原を連れてテントに戻ると、子ども達はリアティオスを撫で回してキャッキャと笑っていた。どうやら完全にパニック状態からは抜けたようだ。それに安堵していると、竜司が善人に気づいた。

「おーおかえり、どうやった……え、原さん?」

 善人は隣の原を見た。目がすわっている。

「バケモノがいたんだってねえ?ぶっとばしてやるよ!案内しな!」

 善人は頭を抱えたくなった。竜司も子ども達も、そしてリアティオスも口を半開きにしてポカンとしている。

「おばさん、もしかしてレーバイシなの?」

 一番幼い子どもが聞く。

「おばさんじゃなくて原さんだよ!レーバイシぃ?そんなんじゃねえよ!あたしゃただのババアだよ!だけどねえ、子ども泣かすやつは誰だって許さねえ!あたしに任せな!そのバケモノ退治してきてやるよ!」

 おばさんを否定したくせに自らババアと名乗り、力加減できないまま自らの胸を叩いた。力が強すぎてよろけている彼女を介抱していると、

「かっけえ……」

「え?」

 子ども達がキラキラとした表情で原を見ていた。リアティオスが善人に近づき、小声で言う。

「このままだと原さんの名誉に関わる気がしたので先ほどと同じ魔法を使いました」

「あ、ありがとう……」

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