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異変2

 声の主はリアティオスだ。自信満々のようだが、人が大勢いるため話しかけられない。それを知ってか知らずか得意気に話し始めた。

「私は精神魔法と炎の魔法が得意なんです!

 ですからこのようにパニックになっている方たちにピッタリの魔法も知っているのですよ」

 そう言うやいなや、リアティオスは四肢を踏ん張って力を溜め始めた。善人と竜司が黙って見守っていると、周りがざわつき始めた。

「え、なにやってるんだこのタヌキ?」

「なんか……気張ってない?」

 収集がつくのか……と不安に駆られ始めた時、リアティオスが叫んだ。

「ふぬぬぬぬ……ハァー!!!」

 その直後だった。先ほどまで感じていた不安や緊張が解けていくのを善人は感じた。

 自分の気持ちが何故落ち着いたのか理由がわからない。思わず竜司の顔を見ると、彼も善人を見ていた。

「なんか……めっちゃリラックスしてきたんやけど、なんやこれ」

 周囲の人々も同様だった。先ほどまでリアティオスに脱糞疑惑をかけていたのが嘘のように、一転して和やかな雰囲気が漂っている。

 泣いたり顔色の悪かった子ども達も惚けたように宙を見ていた。

「さあさあ、今のうちに皆さんを解散させましょう。その方がこの子達に話を聞きやすいですよね?」

 リアティオスの言葉にハッとした善人達は、「もう大丈夫です〜。こちらで対応しますので、皆さんありがとうございました〜」と言って回った。あまりにも白々しい台詞だったのにも関わらず、誰も疑うことなく、「大丈夫なら良かった〜」と言って解散していった。

 途端にテントには善人達と子どものみになる。

「え、何をしたん?」

 竜司がしゃがんでリアティオスに小声で問うと、リアティオスは首を振った。

「この魔法はあまり長く効きません。説明は後でしますので、今のうちに子ども達から事情を聞いてください」

「お、おう、そうか」

「あ、竜司さんは人相が悪いので善人さんが聞き取りをされた方がよろしいかと」

「てめえ……」

 リアティオスの言葉に苦虫を噛み潰したような顔をした竜司だったが、自分の顔が子どもに受けが悪いのを自覚していたので、リアティオスの助言通り聞き取りを善人に任せた。

「善人、任せた」

 任された善人は、子ども達の前にかがみ込む。相変わらず惚けた顔をしていた子ばかりで、大丈夫かとリアティオスを振り返ると力強く頷かれた。

「何があったのか言える?」

 すると年長者の子どもがとろんとした表情のまま口を開いた。

「お化け……」

「え?」

「お化けみた……」

「お化け?」

 思わず聞き返したが、子どもは「うん」と言った。

「皆で肝試ししに行ったらお化け見た」

「どこに肝試しに行ったの?」

 しかしその質問には首を横に振った。

「行ったら怒られるから言わない」

 無理に聞き出すのはやめた方が良いだろう。そう判断した善人は質問を変えることにした。

「そうなんだ、どんなお化け見たかは言えるかな?」

「最初は人だと思ったんだけど、人じゃなかった。……グニャグニャしてた」

「グニャグニャしてたんだ。それは怖かったね」

「僕たち、死なない?」

 リアティオスの魔法の効果が切れてきたのか、その筆問には怯えが混じっている。善人は安心させるように微笑んだ。

「大丈夫だよ。お兄さん達が見てくるね。お化けがいたらそんな酷いことさせないように言ってくるよ」

「ほんと?」

「うん、本当だよ。だからどこでお化け見たか教えてくれるかな?」

 その質問に答えたのは先ほどまで泣きじゃくっていた一番幼い子だった。

「お化けアパート」

 善人が黙った。リアティオスが善人の顔を見ると、厳しい表情をしていた。

「お化けアパートって……どこですか?」

 自身の近くにしゃがんで様子を見ていた竜司に顔を見上げると、彼も眉間に皺を寄せていた。

 小声で竜司に聞くと、リアティオスを見ずに言った。

「お前らの住んどるアパートや」

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