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演出も演技も、レベルの高さにびっくり。
ランスロットの剣から魔法が飛び出すと、滝が二つに割れ、洞窟が現れた。
演出も様々で、カラフルな水晶球や、魔法の杖など小道具も見事なファンタジーの世界をサポートしている。
「どうだった?」
アランに感想を訊かれた。
そこには、王女役の劇団員がいた。
「レスカ王女を担当するパティー」
「パティー、よろしく」
「エミリア」
パティーも感想を訊きたそうなので。
「どう恋愛を絡めていくのか。楽しみ」
と、私の感想。
「レスカとランスロットのロマンスシーンを期待してほしい」
と、パティーのかわいらしい唇の動き。
「小道具も本格的」
私は、照明で七色に輝く宝石にも注目した。
「杖や剣、魔法の水晶まで、劇団員の手作りなんだ」
「凄い、あの光輝く水晶も?」
「うん、水晶や魔法の杖は、お世話になっている工房で」
「工房?」
「行ってみる?」
「喜んで」
ラマス工房は、ガラスや樹脂で、様々な製品を製作していた。
溶鉱炉で溶けていく鉄の塊。作業員も多く働いている。
炎の中で形作られていくガラス細工。
工房のイワナさんを紹介してもらった。
「ゆっくり見学していくといい」
「見て、これ舞台でも使っている魔法の杖」
パティーが手にしたのは、先端にカラフルな球をつけた杖。
本格的、ファンタジーに登場する道具そのもの。
「実際に体験してみたら?」
アランの指導で、私も挑戦してみた。
「こうすんだ」
アランが手袋をして、作業の見本を見せてくれた。
金属の棒に熱したガラスの原材料をつけて、炎であぶる。
棒はストローのようになっていて、口で空気を送ると先端のガラスが風船のように膨らんだ。
炎にかざしながら回転させるとガラスは丸くなる。
「やってみて」
と、言われたれど、そこはアランが口をつけた。
「時間が命、はやく」
私は棒から空気を送り込んだ。
アランと間接キス!!
さらに、アランと私の手がふれあい、棒を回転させる。
ガラスがさらに大きな円となる。
夢中で、工作した。
炎の近くで熱い?
いえ、アランとの距離の近さが、私の体を熱くした。
形が綺麗の整えられると、水で冷やす。
金属から切り離すと宝石の球ができあがった。
なんか、この体験自体にファンタジーを感じる。
「それ、舞台で使えるんじゃないか?」
イワナさんも褒めてくれた。
「そうですね。ランスロットが探し当てる財宝の一つにどうかな?」
「いいかも」
アランとパティーも喜んでくれた。
舞台の本番が楽しみになった。
家に帰った。
マグリットさんという若い女性店主が営む1階のパン屋さんに寄ってみた。
クリームを練り込んだ一口サイズのクロワッサン。おやつに買ってみる。
マグリットさんと立ち話。大学の演劇舞台のことで盛り上がってしまった。
ファンタジーの先の見えない展開に、恋愛もからまって見ごたえありの舞台。宣伝してしまった。嘘ではない、本当に何度も観劇したくなるストーリー。
マグリットさんにもチケットを渡す約束をした。
マドレーヌをサービスしてもらって部屋に上がった。
窓を開けると、風がさわやか。外の音を聴きながら考えてみる。
アランとの時間、まだ、事前にテーマモデルになってもらう話はしていなくて。
ここまでは、ファンタジーの舞台が引き合わせた二人、この先おとぎ話のような展開にどう動くのか?
フェアリーテーリングを完成させるミッションで、スタンプ1個。
なんとしてでも2つ目のスタンプをゲットしたい。
キャンパスにいたらアランが、パンフレットを持ってきてくれた。
表紙も最高、全面ファンタジーの世界がデザインされている。
な、なんとリハーサルに呼ばれた。
客席で鑑賞。公演前なのに、なんと贅沢な。
眠れる王女レスカがランスロットのキスで目覚める。
宝鳥・ビリアントックの卵を手に入れ、虹色に光るレスミンの泉に浸した瞬間、
願いの叶う宝石に変わる。
プロジェクターの演出も迫力があって……
幕が下りると、思わず、拍手をしてしまった。