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カズホマー教授に褒められた。よい体験をしたことを話して、サインをもらうことができた。
スタンプブックを企画課に持ち込むと、一つスタンプをゲット。
サミーはスタンプもらったのかな?
廊下を歩いていると、
あれ?
「それじゃあまたな」
って、サミー。
テリウスに挨拶して走っていったけど。
またなって……? 知り合いだったの?
テリウスの背後から近寄り、鞄で頭を叩いた。
「イテェ」
なんだよ!!
「なんだよじゃないわよ。なんでサミーと知り合いなのよ」
「そ、それは……」
テリウスは困った顔。
「私と出会わせるために仕組んだわね」
「それで、スタンプ一個、もらえたんだから」
「余計なお世話、誰も頼んでないから」
「元々知らない者同士、不正にはならないから安心して」
「そういう問題じゃない」
怒り爆発で歩き出した私。
「サミーがラリーに参加していることは嘘じゃないから」
聞こえないふり。
テリウスの友達だったなんて……。
本気で好きになりかけたのに……。
一気に冷めた。
いつまでも心乱されていては、この企画でも敗北を味わうことに。
絶対スタンプ10個集めたい。
二つ目のスタンプを目指さないと。
レティ―教授の講座に参加した。
教室に受講生が集まっている。
スタンプラリーに参加している学生って結構いるんだ。
黒板に書いたキャッチコピーは、フェアリーテーリング。
始まりは物語から。
その後の恋は、おとぎ話のようであり、舞台芸術の模倣のようでもある。
そんな人と心に響く出会いがあったら、まずアプローチ。
最後に教授の言葉。
恋愛は、自分を信じて成り立つもの。
たとえ失敗しても……
そこから経験が生まれ、次の恋にもつながる。
スタンプ取得のためのミッションは、物語から始まる出会いから、二人だけのおとぎ話を作ること。
フェアリーテーリングがテーマ。
講義が終わり、受講生は動き出した。
私も……
突然の出会いなんてないよね。
廊下を歩いていた。
各種交流の案内掲示板。音楽からスポーツ、芸術に関するポスターが貼られていた。
大学だから盛んだよね。どれも交流関係を深めて恋愛に結び付ける意図を感じる。やっぱり、ここは恋愛を学ぶ大学。
未来が見えないな。
と、ぼんやりポスターに目を通す。
「ちょっといい?」
ん?
「ポスターを貼りたいんだ」
男子だ。なんか若手俳優みたい。
それもそのはず、貼ったポスターは、劇団の舞台案内。
鮮やかな色彩。異次元のデザイン。
ファンタジー要素たっぷりの作品みたい。
「気になる?」
近い。距離が近すぎ!!
「舞台?」
「うん、今回主役のランスロットをやるアラン、アラン・マクドール」
主役……舞台俳優の卵だ!!
「わ、わたし……エ、エ、エミリア」
言葉がぎこちない。
これって、トキメキでは?
ちょっと胸が高鳴る。
「ど、どんなストーリーなの?」
「興味があるなら、稽古場に来てみて」
稽古場を見にいった。
本格的な演劇舞台があったんだ。普通の劇場と同じ客席と舞台装置。
大学には、二つの舞台があって、もう一つはミュージカルを専門に公演しているらしい。
さすが、大陸最大の都市、ブリュワーズ王国・サマリリアの名門大学。
恋愛をテーマにした作品を多く演出しているとか。
学生の劇団員だけど、稽古は本物だった。
監督の座っている客席、ずっと後ろの席で見学させてもらった。
作品の概要を写真付きの本でいただき、読ませていただいた。
魔法と冒険の世界。
主人公・ランスロットは魔法剣の使い手、他にも魔女の子供や獣神が登場し、伝説の宝鳥・ビリアントックの卵を探して旅をするというストーリー。
背景にプロジェクターの映像が映る。こんな時代に、このような発明があったなんて驚き。同じ系列大学のアスティラ工業大学で開発されたとか。
これが、中世から産業革命、そして一部近代文明が交差する異世界。